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高等魔術の秘儀参入のヴィジョン(マルクト→イエソド)

少し前の投稿で、魔術には、目的別で、「秘儀参入」に関わるものと、「願望実現」に関わるものがあると書きました。
本投稿は、魔術師の「秘儀参入」の体験が、どのようなものであるのかを、大体のイメージとして理解していただくためのものです。

魔術で言う「秘儀参入」とは、霊的・神的な世界を体験することで、人格を成長させることです。

本稿では、「秘儀参入」の方法である、「パス・ワーキング」の初歩段階のヴィジョンの旅を紹介します。

「パス・ワーキング」は、象徴によって精密にコントロールされ、ある種の客観性を持った「夢見」のような体験です。

ただし、私は瞑想や夢見の研究家ではあっても、実践的な魔術師ではありませんので、本投稿で紹介するヴィジョンは、ドロレス・アシュクロフト=ノーウィッキの『輝ける小径 パスワーキングの実践』で紹介されているもの、自分なりに短くまとめたものです。

最初に、「パス・ワーキング」の概要について書き、各象徴と入門儀礼を簡単に見てから、ヴィジョンを紹介します。

1万字近い長い文章になりましたが、分けずに一投稿にします。
最後まで読む人、いるんでしょうか?



パス・ワーキングとは


西洋初の本格的魔術結社だった「ゴールデン・ドーン」では、ユダヤ神秘主義のカバラの「生命の樹」の象徴体系に基づいて、教義や儀式、位階を体系化していました。

「生命の樹」の象徴体系は、10の「セフィロート(光球、単数形はセフィラ)」と、それらをつなぐ22の「小径」で構成されます。
両者を合わせた32を、「径(パス)」とも呼びます。

「ゴールデン・ドーン」の位階は「セフィロート」に対応しています。
(ただし、第1~3セフィラに対応する位階のメンバーは架空の存在で、4~5は設立メンバーのみの名誉職的位階で、実際に昇格したメンバーが存在したのは、第6位階まででした。)

位階を上昇するためには、「セフィロート」の世界を低い方から順に身につけていく必要があります。
具体的には、それぞれに対応する知識の勉強と、それらに対する瞑想、そして、入門儀礼(通過儀礼)と、「パス・ワーキング(道行き)」と呼ばれるヴィジョンの旅を通してです。


「ゴールデン・ドーン」では、霊的世界の霊視(ヴィジョン)体験を、映画のスクリーンを見るように体験する「スクライング」と、その立体の世界に入り込む「アストラル・プロジェクション」があるとしています。

そして、順次、階層的な象徴体系に基づいて「次元を上昇するヴィジョンの旅」を、別に分けています。
「パス・ワーキング」は、これに当たり、一般に、「アストラル・プロジェクション」によって行います。

「パス・ワーキング」は、狭義では、22の「小径」を歩む旅なのですが、広義には、「セフィロート」を含めて、32の「径」を歩む旅です。


「パス・ワーキング」は、一面では、ユンクが言う、「能動的想像」によって、「集合的無意識」の「元型」と対面しながら、「個性化の過程」を歩むことに近いものです。

また、イスラム哲学やアンリ・コルバン風に言えば、「創造的想像力」によって、「中間世界」の「秘儀伝授」の旅を行う、となるでしょう。

これが単なる夢見と異なって「秘儀伝授」と表現されるのは、宗教的なヌミノーゼを伴う強烈な体験であり、人格の変容を促すものであるからです。
少なくとも、そのような体験となることが期待されます。


パス・ワーキングの方法


「パス・ワーキング」は、各「セフィロート」や「小径」に対応する象徴の世界を、覚醒夢や、白昼夢に完全に入り込むような意識状態で、体験する方法です。

ですから、視覚化(観想)のように、完全に意識的にその世界を形成するのではなく、多くを無意識に形成させます。
ですが、単なる夢見と違うのは、伝統的な象徴体系の規範に従った、客観性が必要であるという点です。

ですから、「パス・ワーキング」を行う前提として、象徴の勉強と、それらに対する瞑想が必要です。
これによって、象徴の回路を無意識の中にある程度、構築しておくのです。

それを前提にして、「パス・ワーキング」を通して、それと対面しながら、確立していきます。


一つの象徴世界は、その特徴が複数の概念や名称、称号などの言葉で表現されます。
また、多種の象徴、イメージ、色などとも対応づけられています。

対応づけられるは象徴には、12宮、7惑星、4元素、タロット・カード、ヘブライ語アルファベット、神名(神の属性)、天使、各地の神話の神々などがあります。

主要な瞑想対象は、概念類と、神格の視覚的イメージ、神名の詠唱、そして、「セフィロート」の色です。

「パス・ワーキング」で体験される世界は、それらの要素によって構成されるべきもので、そこから外れるものは許されません。


「パス・ワーキング」のヴィジョンは、一種の神話的な物語です。

物語のストーリーは、その枠を、あらかじめかなり決めておいて、それをガイドにして行う場合と、ほとんど決めずに、自由に行う場合があります。
後者は、かなり熟達した人向けの方法です。

「パス・ワーキング」は、一人で行う場合もあれば、魔術結社などの複数のメンバーで行う場合もあります。
ですから、ストーリーのガイドを使う場合は、誰かに朗読してもらうか、録音したものを流しながら行います。

先に書いたように、テーマとなる象徴世界に相応しくない者、物が登場することは許されません。
それらは、退去させ、消去する必要があります。

その方法には、退去の言葉、合図、ペンタグラムなどがありますが、あらかじめ決めておいた方法を、自分の意識、無意識に覚えさせておく必要があります。

また、相応しいかどうか一目で分からない者に対しては、問いただす必要があります。
これについても、いくつかの方法があります。
例えば、神の名において現れたのかと問い正します。

あるいは、起こり得る間違いを種類分けして、惑星やアルファベットを対応させておく方法もあります。
例えば、記憶違いが原因なら土星、タウ字、なんらかの欺瞞が原因なら木星、カフ字といった具体にです。
そして、疑わしい間違いに対応した惑星の記号や文字を描くことで、相手をテストします。

その他の問題が生じた時にも、対処法を決めて、あらかじめその方法を、訓練付けておくと便利です。

例えば、象徴世界の中で迷子になりそうな場合は、案内役を招くこともできます。
例えば、その象徴の神・天使の名において、と宣言して招きます。

あるいは、象徴世界が夢のようにぼんやりと薄い色でしか見えなければ、その象徴世界を象徴する呪文を唱えることによって、現実のように明瞭なものすることが可能です。


「パス・ワーキング」のヴィジョンの旅は、基本的に、次のような一定の道のりがあります。

現実に今いる場所
→扉→最下位のマルクトの神殿
→扉→小径
(→扉→途中のセフィラの神殿
→扉→小径)
→扉→出発点のセフィラの神殿
→扉→小径
→扉→目的のセフィラの神殿

それぞれの場所では、そこを主催する神格と出会います。

そして、基本的には、来た道のりを逆に辿って戻ります。

ちなみに、シャーマンも、天上世界や地下世界に、決まった道のりで行き来します。
「パス・ワーキング」は、それを「生命の樹」に置き換えたものです。


以下、本投稿では、「生命の樹」の第9セフィラであるイエソドまでの「パス・ワーキング」のヴィジョンについて、ごく大まかにまとめます。
具体的には、「第10セフィラのマルクト」、「第22小径(第32径)」、「第9セフィラのイエソド」のヴィジョンです。

9がイエソド、10がマルクト、その間をつなぐ32が22番目の小径。
ちなみに、この小径の場所と順番を決めたのは、
17Cフランスの学者アタナシウス・キルヒャーであり、
ユダヤ教カバラのオリジナルではありません。

一般に、「セフィラ」のヴィジョンが普遍的であるのに対して、「小径」のヴィジョンは個人的なものになるとされています。

また、前提として、各世界の「象徴」と「入門儀礼」についても簡単に触れておきます。

入門儀礼は、単なる象徴的な演劇ではありません。
参加者は、象徴体系を無意識内に構築していて、儀礼の時には、視覚化などの技術によって、変性意識状態で象徴を無意識に送ります。
それは、参加者全員に、影響を与えます。


マルクトの象徴


マルクトの象徴は下記の通りです。

・名称:王国
・「知恵の32の秘密のパス」による特徴:眩い知性
・神名:アドナイ・マレク(国の主なる神)
・大天使:サンダルフォン、ウリエル、メタトロン
・天使:アシム(火の魂たち)
・天体:月下の元素界
・元素:4元素、特に「地」
・タロット・カード:10、(プリンス)
・4世界の色
 >アツィルト(元型界):黄色
 >ブリアー(創造界):レモン色、オリーブ色、あずき色、黒
 >イエツラー(形成界):レモン色、オリーブ色、あずき色、金色の斑点
 >アッシャー(現実界):黄色の光を放射する黒
・魔法のイメージ:大地の色が混ざった衣服を身に着け、髪は束ねず、裸足の若い女性で、粗雑な作りの黒い石の玉座に座っている
・体験:聖なる守護天使の霊視
・否定的な力:リリス(夜の女性)

大まかに言えば、マルクトは、形の世界、4大元素と物質の世界、今我々がいる場所、肉体、です。
対応する神格は、パン、デルメルなどです。


マルクトの入門儀礼


「マルクト」の位階の「ジェレーター(熱意ある者)儀式」の入門儀礼においては、地の精霊の召喚が行われます。

そして、志願者は、白黒二柱の間に置かれ、まず、「悪の小径」を象徴する黒柱の斜め前に進むと、悪魔サマエルに追い返されます。
次に「善の小径」象徴する白柱の斜め前に進むと、大天使メタトロンに追い返されます。
最後に、「均衡の小径」を象徴するまっすぐ前方に進んで祭壇に導かれ、大天使サンダルフォンに迎えられます。

祭壇の上には、白い三角の中に置かれた赤い十字があります。
白い三角は、「マルクト」から上位のセフィロートにつながる3つの「小径」を表し、赤い十字は、隠された知識を表します。

志願者は、司祭にヘルメス十字(卍)を渡します。
これは志願者が外界の闇を抜け出したことを表します。


マルクトのパス・ワーキングのヴィジョン


現実世界からトンネルを抜けて、その先の道を進むと、マルクトの神殿の扉が現れました。

扉を開いて、神殿の中に入ると、神殿の床面は方形で白黒のタイル貼りになっていました。

北面のステンドグラスには黄金色の小麦と朱赤のヒナゲシを背景に翼のある牛が描かれています。
背後の西面には、鮮烈な青空の中、鷹が太陽へ飛翔していく姿が描かれています。
南面には、翼のある獅子が炎に取り囲まれている姿が描かれています。
前方の東面には、扉が3つあり、その手前には二本の柱が天井まで伸びています。
左の柱は黒、右の柱は銀色です。

神殿の中央にある祭壇は、黒い二重の立方体の形をしていて、祭壇の上には小麦の穂が撒き散らされています。
また、祭壇の上にはボウルがあり、その中に灯がともっています。

そして、祭壇の向こうには、マルクトの大天使、サンダルフォンが立っています。
彼は、黒い巻き毛にぶどうの房と葉を編み込んでいる青年の姿をしています。
その瞳には、叡智と悲哀を宿しています。
そして、赤茶と黄金、アップルグリーンの色が混在したロープをまとっています。


神殿は、空気の薄い高山の頂上にいるような印象でした。
サンダルフォンに代わって、祭壇の前には、黒と黄色のロープをまとう、長身の大天使、ウリエルが現れました。
彼は、4大元素に取り巻かれた大地の体験を教えるために現れました。
彼は悲嘆にくれているような表情をこちらに向けています。

いきなり、空間を落下して、風が強く吹く高原に落ちました。
ウリエルが指差す先を見ると、風の精霊(元素霊)のシルフたちが飛んできました。
その先頭には、銀白色のマントをまとった王パラルダがいて、彼の言葉で何かを語りかけてきました。
ウリエルが指で私達の額に触れると、パラルダの言葉が理解できるようになり、返答することもできるようになりました。

次に、私は、深い渓谷に運ばれました。
私は、シルフの姿になっていて、急降下したり飛び込んだりして遊びました。

パラルダは、彼らが気象や人の呼吸も司っていることを教えてくれました。
ですが、自分たちが、大気汚染によって弱っていることも。

ウリエルのところに戻ると、彼は、パラルダとの会話で何を学んだかを聞かれました。

次に、ウリエルと海へと降下して海面に立つと、海底から水の精霊(元素霊)のウンディーネたちが海面へと上がってきました。
その王のニクサは緑がかった皮膚の色、髪は海藻の色をしていて、白い泡で縁取られた深緑色のマントを纏っています。

先と同じようにして、ニクサの言葉が分かるようになると、ウンディーネたちに海底に連れて行かれました。
そして、海底の各所で、海の生き物たちと遊びました。

ニクサは、人間の廃棄物で海やウンディーネたちが汚染されていることを教えてくれました。
また、水が人間の体で果たす役割についても。

ウリエルのところに戻ると、次は、マグマが吹き出ている火口の縁に連れてこられました。
マグマの中から、火の精霊(元素霊)サラマンダーの王ジンが現れました。
彼は、炎に包まれ、赤と黄色の装いをしています。

ジンは、私を、マグマの中に飛び込ませ、地球の核にまで連れていきました。
そして、この地球の核や、人間の核である心臓の必要性について語りました。
また、人間の原子力が世界に及ぼしている悪影響についても語りました。

次は、ウリエルに、採掘場に連れて行かれました。
洞窟から、地の精霊(元素霊)ノームの王ゴーブが現れました。
彼はとても苦しそうで絶望しているような表情をしています。

ゴーブは私を、洞窟の中に連れて行きました。
そこには光る鉱脈がありました。

その後、地上に登って森に出ました。
そこでは、人間によって木が切り倒され、動物が罠で捕まえられていました。

次に、再度、地底を通ってから、不毛の地に出ました。
それは、無理な農耕や牧畜によって、傷められた大地でした。

最後に、ゴーブは、一握りの土をとって、人間の肉体に必要なミネラル類について教えてくれました。

その後、マルクトの神殿に戻ると、ウリエルと4人の王たちは、地球の隠された力について、人間が理解できるようになることを願っていると語りました。

私が、それに対する自分の思いを語ると、ウリエルは、4人の王の名が刻まれたギリシャ十字の首飾りを祭壇からとって、プレゼントしてくれました。

そのプレゼントを持って、マルクトの神殿から現実世界に戻りました。


22番目の小径の象徴


22番目の小径(マルクト→イエソド)の象徴は次の通りです。

・ヘブライのアルファベット:タウ
・その象徴的意味:悲哀と修練を通して得られる理解
・「知恵の32の秘密のパス」による特徴:星々の巡りを司る管理的知性
・神名:テトラグラマトン・エロヒム
・天体:土星
・タロット・カード:大アルカナの21番「世界(宇宙)」
・その秘密の称号:時の夜の偉大なる者
・4世界の色
 >アツィルト(元型界):藍色
 >ブリアー(創造界):黒色
 >イエツラー(形成界):濃い藍色
 >アッシャー(現実界):青い光線を放つ黒
・魔法のイメージ:深い藍色のアーチに白色のタウ字、扉には21のカードの絵
・存在者:怪物、死者の幻影、敷居の監視人
・神話的物語:地下世界への降下

22番目の小径の基本的なテーマは、冥界降りによる、地上的な人格の死と、霊的な人格としての再生です。


イエソドの入門儀礼


「イエソド」の位階の「セオリカス(傍観者)儀式」の入門儀礼では、祭壇の上に21番の大アルカナ・カードが置かれていて、この入門儀礼が22番目の小径(32番目の小径と称されるおともある)を通過することを象徴します。

まず、空気の精霊が召喚されます。

志願者は、4大元素を司る4人(オシリス、獅子、鷹、牛の仮面とつけた者)に次々と行く手を阻まれますが、4人の名と性質を言うことで、二柱を通り、祭壇の前に行きます。
祭壇上には、四大元素の象徴品が置かれていて、この入門儀礼は、4大元素の浄化を象徴します。

21番の大アルカナの中央に描かれているのが、イシスでありサンダルフォンであることが語られます。


22番目の小径のパス・ワーキングのヴィジョン


出発点となるマルクトの神殿に来ました。

マルクトの大天使サンダルフォンが、扉に向かって五芒星形を描くと、タロットの大アルカナの「世界」を描いた帳が扉を覆い、小径への戸口となりました。

扉を通ってその先に出ると、花咲く牧草地でした。

右側から女たちの泣き声が聞こえてきました。
先頭を歩くのは、豊満な胸の成熟した女性の姿をした女神デルメルです。
彼女はやつれた顔をしています。
彼女は冥王ハデスにさらわれた娘のペルセポネを探していました。
彼女が探し回る間に、自然は枯れて、死んでいきます。

牧草地の先には崖の麓があり、そこに滝壺がありました。
そして、その滝の後ろには洞窟の入口があります。

その中を進むと、ローブをまとった冥界の女神ヘカテが現れ、洞窟に来た目的を問いました。
ペルセポネの王国を探していると答えると、ヘカテは狭い地下道への入口へと導いてくれました。

その細い道を降りていくと、広大な地下洞窟に辿り着きました。
さらに進むと、暗く深いステュクスの川が流れています。
川岸には舟があり、渡し守の男カロンがいたので、銀貨を渡して、川を渡してもらいました。

さらに進むと、大きな門が現れ、そこにはヘブライ文字の「タウ」が描かれています。
開いた門をくぐって大広間に入りました。

そこには両側に玉座があり、一方には、黒玉の王冠を被ったハデスが座っていました。
その前には3つの頭を持つ番犬ケルベロスがいて、彼を守っています。
もう一方には、ベールの下に王冠を被り、銀の三日月鎌を手にしたペルセポネが座っていました。

ハデスの前に進むと、ペルセポネの前へと案内してくれました。
ペルセポネがベールを上げると、花の冠を被った少女の笑顔がありました。

次に、ハデスは脇の壁にかけられた「真実の鏡」の前へと案内してくれました。
その鏡を覗くと、完全なる本来の自分の、若々しい姿が映っていました。


そうしているうちに、ハデスとペルセポネはいなくなり、ケルベロスが、入ってきた時と別の扉へと案内してくれました。

その扉を抜けると、そこは、星々が輝いている夜の海岸でした。
水平線から月が上がってくると、海岸まで伸びる光の道ができました。
その道は、沈むことなく進むことができました。

前方の月からは、霞んだ黒と銀のローブを纏った月の母が歩み出てきました。
彼女は、私を両腕で包んで、胸に抱きしめ、口から命を吹き込んでくれました。
そして、月へと帰っていきました。

私は、ケルベロスとハデスに導かれて、帰路につくことになりました。
広間を抜けて、再度、カロンに川を渡してもらいます。

その先の牧草地では、デルメルがペルセポネと楽しそうに笑い合っていました。
ペルセポネは、デルメルのもとに戻ることができたのです。

マルクトの神殿の扉にまで戻ると、サンダルフォンが扉を封印しました。
彼に感謝を捧げようと祭壇の前に立つと、サンダルフォンは微笑んで、黒い柱のもとに置かれている鉢を指差しました。
そこには銀貨が入っていました。
これはサンダルフォンからのプレゼントです。

これを持って、現実世界に戻りました。


イエソドの象徴


イエソドの象徴は下記の通りです。

・名称:基礎
・「知恵の32の秘密の径(パス)」のよる特徴:純粋な知性
・神名:シャダイ・エル・カイ(全能なる生ける神)
・大天使:ガブリエル
・天使:ケルビム
・天体:月
・元素:空気
・タロット・カード:9
・4世界の色
 >アツィルト(元型界):藍色
 >ブリアー(創造界):すみれ色
 >イエツラー(形成界):暗い紫
 >アッシャー(現実界):レモン色の地に空色の斑点
・魔法のイメージ:立方体の石の上に立っている美しく強靭な裸の男で、腕を持ち上げて天を支えるアトラスの姿勢を取っている。
・体験:宇宙の機構の霊視
・否定的な力:ガマリエル(淫らな者)

大まかに言えば、イエソドは、形と生命を与える世界、エーテルの世界、潜在意識、月的なもの、イメージの宝庫、です。
対応する神格は、ダイアナ、ヘカテなどです。


イエソドのパス・ワーキングのヴィジョン


出発点であるマルクトの神殿に来ました。
大天使サンダルフォンが、印を描いて、中央の扉を開きました。

扉の先は、すみれ色の霧の小径でした。
小径を進むと、銀の扉が現れました。
それは、イエソドの月神殿の扉です。

扉を開いて、神殿の中に入りました。

神殿の中は円形の空間で、壁は銀、床は深い青のタイルがはめ込まれていました。
そして、床の四方には、三日月、半月、満月、新月が描かれています。

白い大理石で作られた祭壇の上には銀の皿が置かれ、そこには火が灯っています。
そして、紺色の天井からは、9つの銀のランプが吊り下がっています。

祭壇の後ろにはすみれ色の幕があり、それが開くと、大天使バブリエルがいました。
彼は、緑色の艶やかは瞳、すみれ色と銀色の翼を持ち、優雅な姿をしています。


ガブリエルの案内で、扉を開くと、その先には池がありました。
そして、池の向こうには、天使ケルビムが待っていました。
彼は、全身が薄く香油を塗ったように光っている裸の若い男性の姿で、たたんだ翼を持っていました。

ケルビムは、橋を渡ってこちらに来て、私を池の水面に横たえてくれました。
私は、水面にしばらく浮いた状態で、天井に描かれた銀の星を見ていました。

その後、紫色の水底に向かって沈んでいきました。
その途中で、水中の水の流れにまかせて漂っていると、若い頃の知人たちが、次から次へと、漂って通り過ぎていくのを見ました。

彼らの中には、私が嫌いだったり、彼らに対して何らかの後悔をいだいたりする人物もいました。
今は、それらの人間関係や感情に向かい合って、精算するべき時なのだと感じました。

その次には、かつて自分がいだいていた、様々な思いが思い出され、それらが形を持って眼の前に現れました。
これらに関しても同じです。

やがて、月の水の流れは、洞穴の入口を通って、闇の中へと私を運んでいきました。
そこで、私は、海の母の懐に抱かれたように、永遠の中を漂いました。

どれくらいの時が経ったのか分かりませんが、いつのまにか、外海に出たようです。
その海では、たくさんの星々が、生まれては、死んでいく光景を見ました。
私たちもその一部になっています。

私は、宇宙の仕組みを見ているのでした。
イエソドの天使は、太陽からウィルスまで、あらゆるものを形作っているのです。

やがて、体が引っ張られて、星の海を出て行きましたが、その時に、星の一片を自分の額につけておきました。
私は、闇の中核を持つ光球に向かって引かれていました。

引っ張られて頭を出したその先は、イエソドの神殿の池でした。
ケルビムが、私を池から引き上げてくれました。
そして、彼が私の額の星の一片に触れると、それは私の体の中に入っていきました。

ケルビムは、神殿の扉に案内しました。
その床には銀のサンダルが置いてありました。
そのサンダルを履くと、2つの世界を安全に歩いて行き来することができるのです。

私は、そのサンダルを履き、ケルビムに感謝をして、帰路に着きました。
霧の小径を抜け、マルクトの神殿に着くと、サンダルフォンに迎えられました。
そして、マルクト神殿を離れ、現実世界に戻りました。


*参考書

「輝ける小径 パスワーキングの実践」ドロレス・アシュクロフト=ノーウィッキ(国書刊行会)
「黄金の夜明け魔術全書 I、II」イスラエル・リガルディー(国書刊行会)
「神秘のカバラー」ダイアン・フォーチュン(国書刊行会)
「生命の木」ジョン・マイケル・グリア(株式会社フォーテュナ)
 

*タイトル画僧は、ゴールデン・ドーン・タロットで、左から、ペンタクルの10(マルクト対応)、大アルカナの「宇宙」(第22小径に対応)、剣の9(イエソドに対応)



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