前半: 最近聴いてるアルバムやアーティスト/後半: 約10年ぶりにクラブに行った話
1年くらいちゃんと聴いてるアルバムなど紹介できなかったので、ごく僅かな私の記事を楽しみにしている読者向けに、久しぶりにアーティストや音源紹介をしたいと思います。
Dark Lo
Pennsylvania州、North Philadelphia(Philly)地区出身。最近の中高生リスナーの馴染みとなるのは、Lil Uzi Vertや Meek Mill、30代ではFreewayにCassidy、アメリカのコメディやエンターテイメントを見る人にとってはKevin Hartが出身。人口の9割を有色人種が占めるとされている地区。時々「アメリカ、無法地帯と化す」や「最新のアメリカがヤバすぎる」みたいなタイトルで紹介されるドラッグ依存症がふらふらと歩いたり、ぼーっとしてる動画でよく出てくるKengsigton通りもここに該当。
要するに、治安はよろしくない。*2024年7月現在、だいぶ改善されたらしい。
(誤解しないで欲しいのは、Philadelphiaはアメリカ合衆国独立の地として、とても美しい街景観を誇る一面もあります)
同郷のAR-AbとOBH (Original Block Hustlaz)なるグループを結成。NYCはHarlemのV-DonとコラボレーションEPを発表しここ数年でUS Underground Hip Hop界隈では人気となっている人物(どうやらかなり長い間刑務所にいたらしい)。
下のリンクの数曲聴いてもらえれば分かるが「うわぁ、YAが好きそう」という"暗め"満載。リリックはそういう地区出身なんでストリートをテーマとしている内容だらけで好みは分かれそう。お世辞にもポジティブな内容のラップではありません。
Westside Gunn
もはや説明不要。Griselda筆頭のWestside Gunn。YAが去年最も聴いたアルバムは彼がリリースしたスタジオアルバム5枚目にして彼の引退作(らしい)の『And Then You Pray For Me』。
*Hip Hopにおける"retire/引退"ほどあてにならないものはないのであまり気にしなくていい。事実、それからThe AlchemistとBenny the Butherとミックステープを出してる。
このアルバムはとにかくリリース当初USリスナーからの批判が凄かったのです。「もっとBoom Bapな曲調のものを聴きたかった」や「Trapだらけじゃねぇか!」などなど。
Trapはものによるけど大好物なのでその辺りは個人的に気にならず。
3曲目からいきなりBenny The ButherとConway The Machineとのマイクリレー。しかもProducerは今US Mainstreamで最も注目されているであろうTay Keith。アルバムは前半でクライマックスを迎える。
ミックステープで共演したDJ DramaやTrap-A-Holicsのタグもしっかり付け、今後のMainstreamを牽引するであろうStove God CooksやRome Streetz、UK出身のGiggsも登場。Trapを全世界に広めた功労者の1人であるJeezyやしMiamiの自称BossであるRick Rossも参加。Griselda(Recordとしての)集大成ではなくWestside Gunnがやりたいことをとことんバチバチに詰め込んだアルバム。実際レーベルのArmani Ceaserとか入っていないしね。聴き終えた後の「体力ゼロ」感は尋常ではない(だが、それがいい)。
Dave East
NYCはHarlemの未来を託されているDave EastがLAベースで活躍するMike & Keysというプロデューサーデュオとコラボしたアルバムをここで紹介。
LAのプロデューサーとのコラボということで、過去に聴いたことがある西海岸の"それっぽさ"のビートを取り入れつつ、リリックは一貫してぶれない。ストリートの実体験を元にDave Eastが影響を受けてきたアーティストへの敬意を入れ、リスナーにポジティブなメッセージを送っています。
彼のリリックはとにかく固有名詞(彼の境遇を知らないと誰のことかさっぱり分からない人物)が登場しまくるので全てを理解するのは正直難しい。というか無理。なのでリリック解読記事に上げることが出来ないのがちょっとムズムズする。
Crimeapple
南アメリカはColombiaにルーツを持つラッパー。NJ州Hackensack出身のCrimeapple。今回は謎多き(というか素顔が分からない)Big Ghost Ltdとのコラボ作品を紹介。ちょくちょくスペイン語を混ぜてくるのはColombia(はスペイン語が第一言語)への敬意か。Statik SelektahやDJ Muggusに注目され、Hanckensackという場所がNY州に近いということもありその界隈のラッパー達とのコラボレーションでコツコツと実績を積んできた人物です。US Underground Hip Hop界で有名なRoc MarcianoやGriseldaが拠点を置くBuffaloとアメリカでは割と有名な大学、Syracuse大学(メディア系の超名門)があるSyracuseに挟まれたRochester出身のEtoなどとの交流もあり。アメリカ東海岸のUndergroundシーンを引っ張る存在となっています。
Saint Jame$
NYCはBrooklynのFlatbush出身、Jamaicaにルーツを持つCoach Bombay 3000(Rome Streetzのマネージャーでもある)がSocial Misfitなるレーベルを立ち上げ、そこからヨーロッパ初のアーティストとして発掘してきたのがこのSaint Jame$、UKはLondon出身の人物。元々はプロデューサー業を中心にしていたらしい。このSocial Misfitというレーベル、とにかく面子に癖がありすぎる。当然だがRome Streetzも在籍、また最近注目されてきたDef Souljaなどとにかく男くさい連中が集まっている。
過去、NYCはHarlem拠点のDiplomats/Dipset(Cam'ronとかJuelz SantanaやJim Jonesがいたところ)がDipset Europe/Dipset Eurogangと称して国際進出を図ったのをご存知だろうか?
無事、そして壮大にヨーロッパでの活動では爆死していたのをリアルタイムで見ていた自分としては少し不安であるものの、Saint Jame$自身がアルバムのexecutive producerを務め、客演もかなり豪華(Kool G Rapはなぜ今回この客演にOKを出したのか?)。
アルバムタイトル:"By Any Means" = "なんとしてでも" とアメリカへの本格進出も匂わせている。ハイライトは6曲目のCERTIFIED feat. Blody James, Pink Siifu & Hus Kingpin。Hus Kingpinは本当にこの界隈(BuffaloやBrooklynにRochesterといったHip Hopでノリに乗っているNY州の地区)のどこにでも顔を出しますね。最終曲、WHERE I'M FROMではしっかりとGriseldaのConway The Machineが登場。
まぁ、相変わらずですよ笑。そういうのが好きということでご愛嬌。
Emilio Rojas
「"成功"の定義とは?俺はトヨタじゃなくてTeslaに乗りたい」と、まぁ"そういう感じの"ラップをかましている。"Get RIch Quick" = "素早く金を手に入れる"というこの業界あるあるのタイトルでMainstreamに喧嘩を売ったEmilio Rojasをここで紹介。
南アメリカはVenezuelaの母とアメリカ人の父のもとNYはRochester郊外で生を受ける。2024年8月リリース予定のIt Always Gets Betterでは先行リリースのGet Rich Quick feat. Eto(←同郷Rochester出身)を筆頭にDave Eastも参加予定。
結構色々なビートを乗りこなします。DrillやTrapだったり、2000年代のビートを思い出すようなものだったり。自分は英語ネイティブではなく、その辺りはプロでお金貰ってる自称音楽評論家に委ねますが、すごく器用なアーティストではないでしょうか?
Juicy J
Tennessee州、Memphis出身。2000年代に一世を風靡したDirty Southムーブメントを牽引したThree 6 Mafiaの創設者メンバーであるJuicy J。彼が好きというか、今回リンクしてある音源は本当に当時のままなんですよね。現在の中高生にとっては「こんなのが流行ってたの?」と思うところがあるかもしれませんが、当時は本当にすごかったんです。
数々の音楽賞を総なめにし、全世界に「Tennessee」という、それまではグレースランド(Elvis Presleyの邸宅)とLorraine Motel(Martin Luther King Jrが暗殺されたモーテル)くらいしかアメリカ国民が知らなかった土地に、イケイケどんどんでSouthern Hip Hopムーブメントの後押しもあり頂点に到達したグループの中にいる1人です。調べると、来年で50歳になるんだとか。"Brack don't crack" = "黒人は(見た目で)歳を取らない"とは彼のことかも。
最近聴いてたアーティスト・アルバム紹介でした。
「おい、最近話題になってるDrakeとかKendrick Lamar、J. Coleは聴いてないのか?」とツッコミを喰らいそうですが、時系列がよく分からないのでちゃんと聴いてません。その辺りはHip Hopでお金貰ってる"プロ"ライターにお任せ。
それにしても、"DJ Premier 完全版"の話題が完全になくなりました。
著書に携わった人は、この件どう落とし前つけるのでしょうか。「何その話?」という方は色々調べてみてください。日本における"Hip Hopライター"、またはそれでお金を貰っている方の対応の酷さが垣間見れます。
「そんなこと気にしなくていい」であったり、「そういう面倒くさい奴がいるから日本でHip Hopが〜」という人たちがいるのは知っています。面倒くさいことには蓋をする。日本らしい。
"US Hip Hopを聴く上で、DJ Premierを避けては通れない"なんてことを時々見聞きします。個人的にそれには同意しています。自分自身も彼のビートで何億回首を揺らしたとことか。恐らく壮大なプロジェクトで始まった"完全版"と言われるそれ、Wikipediaの彼の音源情報を丸パクリし、それを完全版と言えるのか。疑問しか残りません。
以上、前半でした。
後半。
2024年のゴールデンウィーク中にクラブに行きました。それも約10年ぶり。
そもそも、自分はクラブにあまりいい思い出がなくてですね。最後にクラブ行ったのは東京の代官山か恵比寿だったか…
今でも日本でUS Hip Hopを紹介しているんだかよく分からない"ライター"と言われる女性が主催したクラブでの出来事。
突然全く知らない女性がステージに上がり、いきなりバースデイソングを歌った。身内は当然大盛り上がり、一方で自分はその人たちを知らない。クラブ帰り、Twitterで「そういうのは身内だけのホームパーティーでやれ」というツイートをしたら案の定炎上←
さらに、過去DJ Premierが日本に来日・ライブ公演をした時、隣にいた外国人男性が自分の目の前にいた女性を触り、その女性になぜか自分が睨まれたトラウマもある。
しかし、今回だけは行きたいと思った。
今回の前半で何回も出ているRome Streetzが日本に来日。
クラブがオープンした始めは人数がまばらだったが、午前4時ごろには会場が満杯になっていた。
神戸出身のラッパー、神門(ごうど)さんが"6月11日"でラップした「Hip Hop好きがこんなにいるんだ。それは夢のような眺めだった」を彷彿とさせる、Rome Streetzを見たい人がこんなにいたんだと。
非常に満足な深夜でした。
後日、今回のライブを主催してくださった"build 467"という横浜のアパレルショップに赴き、裏話というか大変さを教えてくれました。また別のアーティストを呼ぶ予定があるとのこと。印象的だったのが、「本物というか、お客さんがいい音楽の時しか首を振らないっていいですよね」と。
次回を楽しみに待っていると同時に、たまにはクラブに行って思いっきり首がもげるほど音楽聞こうかなと思った時間でした。
私に生きる希望をください。