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防火管理責任者って何するの?前編

講習二日目。
開始一時間。
受講者約140名。
その内すでに20名近くが睡魔に連れ去られた。
昨日に引き続き講師の呪術は恐ろしい破壊力だ。

しかし、本講義の目的は
『防火管理の必要な知識を学び実践すること』

2日間を無駄にしたくない。

要するに

防火管理責任者って、何するの?

である。

そこで、呪術に負けないようにメモをテキスト化していこう。

①防火管理の重要性と制度の概要

【防火管理の重要性】

これまでたくさんの人命を奪った歴史的火災がいくつも発生している。
しかし、そのほとんどが防火管理のずさんさであったり、防火設備が正常に動かなかったり、初期消火で沈火できたはずだったりという<防げた火災>である。

つまり、
・火災が起きる可能性を極限まで無くすこと。
・火災が起きた際にどう対応するのかを事前に計画しておくこと。
・防火設備に不備や異常がないか定期的に点検し、万が一の時に計画通り行動できるようにしておくこと。
・防火の知識をしっかりスタッフと共有し、チームで意識を高めること。
・パニックによる群衆心理に陥らず、冷静に的確に通報、及び初期対応すること。
・消防隊が到着するまでの間、被害を最小限に食い止め、状況を把握し、速やかに連携をとること。

が、防火管理責任者としての使命である。

《防火を管理する=火災のリスクマネジメント》だ。

【防火管理制度の概要】

1.防火対象物
=建物、車両、船、山など火災予防の対象となるもの

そのうち防火管理が義務づけられているものは
「多数の者が出入りし、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるもの」である。例外として各市町村の条例で該当するものも含まれる。

2.収容人数の算定方法 
 建物の避難施設等の能力を無視して過剰な人員を収容すると、危険です。
(とある飲食店の例)
従業員 6人
固定式のイス席4席 4人
その他のテーブル席30㎡ 30㎡÷3㎡=10人
算定:収容人員 20人
この人員を超えてしまうことは防火管理の不徹底となってしまう。火災時避難困難。

3.防火管理の実施単位
テナントビルのように管理権限者(防火対象物の所有者や貸借人)が複数いる場合、それぞれに防火管理責任者をおく。自社ビルのように管理権限者が一人の場合は一括管理。

4.管理権限者の責務

消防法第8条第1項
「一定規模以上の防火対象物の管理について権限を有する者は、防火管理者を定め、防火管理上必要な業務を行わせなければならない」 

つまり
「燃える可能性があるやつ持ったら、燃えないように見張るやつつけとけ」

防火管理の基本原則
「自分のところは自分で守る」

消防法第8条第2項
「防火管理者を選任した場合は、遅滞なくその旨を所轄の消防長又は消防所長に届け出ること」

つまり
「見張り選んだら消防署に教えとけ」

5.消防法令違反に対する行政処分
 消防機関の立入検査を端緒として責務を果たしていない場合、消防法令違反を自発的に是正するよう行政指導が入る。しかし、状態によっては使用停止命令などが即時発せられることもあります。
 是正されない場合、消防法に基づく措置命令や認定取り消し処分、強制執行を受けたり、告発により消防法に定める罰則が課せられるケースもあります。
 また、防火管理を怠ったために火災が発生し、重大な被害が生じた場合などは告発の有無に関わらず「業務上過失致死傷罪」などの刑法上の罰則を問われた例も少なくありません。
 責務を果たしていない施設は広報や消防機関のホームページに公開されます。

つまり
燃えないようにちゃんとしとけ。もし燃えても対処できるようにちゃんとしとけ。ちゃんとしてなきゃバツを与えるからそのつもりでいろよ。

【防火管理業務】

消防法第8条第1項で定める防火管理業務

①防火管理に係る消防計画の作成
②消防計画に基づく次に掲げる防火管理上必要な業務
 a.消火、通報及び避難の訓練の実施
 b.消防の用に供する設備、消防用水または消火活動上必要な施設の点検及び整備
 c.火気の使用または取り扱いに関する監督
 d.避難または防火上必要な構造及び設備の維持管理
 e.収容人員の管理
③その他、防火管理上必要な業務

責任重大です。
火災はすべてを奪い去ります。
200億かけた物流倉庫も、
大切な従業員やお客様の平凡な日常や命も、
社会的信用も。

②火気取り扱いの基本知識と出火防止対策

・火災の基礎知識

・燃焼
「燃焼」とは熱と光を伴う酸化反応
燃焼が起こるためには可燃物、酸素、熱源の三要素が必要で、このうちのどれかでも欠ければ燃焼は起きず、その継続も不可能です。

・燃焼範囲
 可燃性ガスと空気が適当な割合で混合された場合に起こります。可燃性ガスが濃すぎても薄すぎても燃焼しません。この燃焼の起こる濃度の範囲を「燃焼範囲」「爆発範囲」といいます。

・引火と発火
 引火…可燃物に近づけた熱源によって燃え始める現象。その最低温度を引火点と呼ぶ。
 発火…可燃物を加熱した時、自ら炎を発して燃え始める現象。その最低温度を発火点と呼ぶ。

・爆発
 物質が物理的または科学的に反応して急激に膨張することにより起こる圧力の上昇を伴う現象で周囲のものを破壊します。
 ガス爆発…可燃ガス
 粉塵爆発…砂糖、小麦粉、石炭の粉など
 混合爆発…2種類以上の混合による化学反応

・消火

燃焼の要素のどれか一つあるいは複数を取り除くことで可能。
 

・火災

火災とは
「人の意図に反して発生し、若しくは拡大し、または放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設またはこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするものまたは人の意図に反して発生し、若しくは拡大した爆発現象」
つまり
「意図せず燃えたり爆発したりしてるやばい状態」

・煙の危険性

炎と同じくらいにやばいのが煙。
どれくらいヤバイのか知っておこう。

煙の移動速度
 横に流れる時→0.3~0.8m/s
 縦にのぼる時→3~5m/s
 (人が階段のぼる早さ 0.5m/s アウト!)

煙の毒性
 一酸化炭素
 酸素の200~300倍の早さで血中ヘモグロビンと結合。体内の酸素供給を遮断。瞬く間に酸欠状態を引き起こし、昏倒。そして死亡。

・火災時の心理と行動

なぜ、災害時に人は正常な判断ができなくなるのか?
ここでは、群集心理を知っておく。

『群集心理の特徴』
 共通した関心(不安・恐怖)によって偶然的、一時的に人が集まる。
 個人には任務分担がない。
 感情的な雰囲気に支配されやすい。
 暗示にかかりやすい。  
 集団化する傾向がある。
こうしたことからパニックになり不適切な情報などで正常な判断ができなくなってしまいます。

『火災時の行動特性』
 1)日常導線志向性
 2)帰巣性
 3)向光性
 4)危険回避性
 5)追従性
 6)その他:硬直

・火気使用設備器具の維持管理

設備周囲の安全環境を維持
破損箇所などないか点検する
適正な燃料を使う
燃料漏れがないか確認する
常に整理清掃する
電気設備については
 電灯、抵抗器が可燃物を加熱してないか
 漏電の可能性はないか
 タコ足配線してないか
などを管理点検する。
 

・火気取り扱いの監督

火災を防止するため、防火管理者の重要な業務の一つに「火気取り扱いの監督」があります。

一般留意事項要約
 火を使う場所を明確にし、責任者を置く。
 安全対策をする。(正しく、安全に)
 火気使用者が未熟な場合、教育する。
 火から離れない。
 しっかり後始末する。

喫煙管理

劇場、百貨店等における喫煙等の制限

焚き火の制限

キャンパ-には特につきものなので書き留めとこう

ア)焚き火を行う場合の制限
 ①可燃性の物品その他の可燃性の近くにおいては、焚き火をしてはならない
 ②焚き火をする場合においては、消火準備その他火災予防上必要な措置を講じなければならない。なお、火災と紛らわしい煙や炎を発する場合は、あらかじめ消防長に届けなければならない。

イ)平常気象時の遵守事項
 ①風向き、風速等の気象条件を考慮し、周囲の可燃物との距離を十分に保つ。
 ②突風等によって予想以上に火炎が延びたり、火の粉が飛ぶことがあるので、常に監視を怠らない。
 ③水バケツ、消火器等を準備し、残り火の始末を完全に行う
 ④火の粉や火のついたものが飛ばないように、なるべく金属缶などの容器を用いて行う。

ウ)火災警報発令時の規制
 湿度が低下し風が強い場合、市町村長は火災に関する警報を発令することができ、その際火の使用が制限されます。
①山林、原野において火入れをしない
②煙火(花火)を使用しない
③屋外において火遊び、又は焚き火をしない
④屋外においては引火性または爆発性の物品その他の可燃物の付近、また山林、原野で喫煙しない
⑤残火(たばこの吸殻)、火の粉を始末する
⑥屋内において裸火を使用するときは窓、出入口等を閉じて行う。

野外で大規模なバーベキュー等を行う場合は防火担当者の選任、火災予防計画の作成が義務づけられています。


ふー。

前編はこのへんで終わりにしとこう。

後編へ続く。

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