夫婦の距離感は、打って寄せる波のよう。
わたしが中学生が高校生の頃、実家に美輪明宏著「正負の法則」という本が置いてあって、たまに読んでいた。
そこに書かれていたことで印象的な言葉がいくつかあったが、
その中のひとつで、
「食事も人間関係も、腹八分目がいい」
という言葉があった。
当時は、その真意は理解できなかった。
だって、美味しいものなら腹一杯食べたいし、
恋愛もまともに経験したことのないお年頃、
めいっぱい愛され、めいっぱい愛すという経験を夢見ていた。
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あれから約20年。
結婚して8年目。
「夫婦はいつなんどきも仲睦まじく、信頼しあって、助け合って、理解し合わねばならない」
という結婚当初の思い込みが幻想だったということは、とうに気づいている。
夫婦の距離感。
それは、打っては寄せる波のようだ。
一緒の時を過ごしすぎると、その距離は離れ、離れた時間を過ごしすぎると、また近づく。
波が重力や引力といったものに司られて、引きすぎず寄せすぎずという絶妙な動きをしているのと同様に、
夫婦間の引きと寄せも、目に見えない何か、例えば、
ごくごく人間的な良心とか、相手に対する少しのリスペクトとかで、繋ぎ止められているように、私は見える。
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「食事も人間関係も、腹八分目がいい」
結婚生活を通して、ようやく身に染みています、美輪さん。
ただ、わたし流に解釈するのであれば、
恒常的に「八分目」を維持していることは、あまり現実的でないことで、
引きと寄りを波のように繰り返し、
その繰り返しの平均を取ると、だいたい「八分目」に落ち着くのが理想、
そんな風に思う。
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引いたり寄ったりするのは、正直面倒だし、体力も精神力も消耗する。
欲を言えば、まっすぐのラインをキープしていきたい。
が、引いたり寄ったりするのが自然の摂理なのであれば、
自然界の一部であるわたしたち人間も、その摂理に乗っかる方が、やはり良いのだろう。
引いたり寄ったりを繰り返すものだとという前提に立てば、
夫婦の距離が近いときも遠いときも、少しは気が楽になるのかもしれない。
今日もお読みいただき、ありがとうございます。