『フィジカル』と『配信』どちらがアーティストにとって良いのでしょう?
先日、アーティスト活動する方の
「配信では儲けられないからCDを作って売っている」
というツイートを見かけました。
アーティストが音楽制作が出来てリリースする事がなければ、レーベルもお店もやっていけませんよね。
アーティストはどういう形でリリースするのが一番良いのでしょう?
今回は「収益」をメインで比べてみます。
more recordsのレーベルでも配信している作品もありますので、
「ストリーミング」と「CD販売」の利益をリアルに比較してみます。
配信の一つでもある『ダウンロード販売」は平均還元率40%。
しかし、ストリーミングが主要な今はダウンロード販売はかなり難しいのでここでは除外します。
(ダウンロード販売はBandcampを使って世界に向けた方が可能性があるかもですが)
レーベルがリリースする場合は、制作費や契約費、原盤権など複雑なので、こちらも今回は除外します。
純粋に、アーティストの完全自主制作(ストリーミングなども個人で登録)した場合です。
『CD販売』
CD販売の場合、売価を¥2,000とします。
制作費をざくっと¥50,000で設定。
CDプレス代金(300枚)にかかる費用(ここはアーティストによって大きく異なります)を、ざくっと¥100,000 。
細かい計算は省いて、分かりやすいように最初にかかる制作費が合計¥150,000とします。
<流通を通して販売>
¥2,000のCDが一枚売れると
流通費 ¥1,000
アーティスト ¥1,000
流通する事で全国のお店に並ぶ"可能性"はあります。
<流通を通さずアーティストが直接お店に持ち込み>
¥2,000のCDが一枚売れると
ショップ ¥800
アーティスト ¥1,200
よく「お店が取りすぎだ!」という声もありますが、お店をやっていくには家賃や人件費などお金がかかりますので。。
<自主制作でライブで手売りの場合>
¥2,000のCDが一枚売れると
アーティスト ¥2,000
場所によって販売手数料などもありますが、分かりやすいように販売手数料無しで考えます。
こう比べると、アーティストが一番売上が高いのが圧倒的に「手売り」です。
「手売り」なら、単純計算で¥2,000の作品を75枚売ることで制作費をペイ出来る計算になります。
「直接お店に持ち込み」の場合は、125枚。
「流通を通して販売」の場合は、150枚。
制作費をペイ出来れば、その以降の収益はプラスです。
この数字をみなさん、どう見ますか?
意外に現実的?
それでは、次にストリーミングで考えます。
『ストリーミングサービス』
まず、CD製作費が要りません。なので音源制作費が¥50,000。
ストリーミング登録料が年間¥5,000くらい。
初期費用がトータルで¥55,000。
「やっぱり、ストリーミングの方が最初のお金が掛からなくてアーティストにとっても良いんじゃん!」
と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。
計算してみましょう。
Spotifyは一再生あたり ¥0.4
Apple Musicは一再生あたり ¥0.8
YouTube Music、Amazon Music、LINE MUSIC、AWAなど、他のストリーミングサービスの一再生あたりの平均が ¥0.7
全てのストリーミングサービスサービスの平均が
一再生あたり ¥0.78
(ちなみに、一再生は30秒以上再生が評価基準となっています)
この数字は実際に登録した結果きら算出したリアルな数字です。
音源制作費¥55,000分をストリーミングの売上で回収するには、
「一再生あたり¥0.78」で計算すると
55,000 ÷ 0.78=70,513回
7万回以上再生されなければ音源製作費の¥55,000をペイ出来ません。
この数字って。。皆さんどう思います?
ちょっと難易度高くないですか?
世界規模で聴かれるメジャーアーティストでさえ、その収益分配方法に対して異議申し立てをしています。
確かに「定額で何でも聴ける」のは、聴く側には素晴らしい仕組みなのかもしれませんが、アーティストにとってはそれで収益を得るのが困難です。
ストリーミングの収益構造は詳しく分かりませんが、
月1000円ほどの会費で、登録している全アーティストに収益を分配するという時点ですでに難しそう。
登録アーティストが増えれば増えるほど、
今後はその分配を減らすか、月の会費を上げるか、もしくは広告を増やすかというところが一つの壁になりそう。
今回、あくまでザクっとした計算ですが収益の仕組はそれぞれこのような感じではないでしょうか?
一先ず利益だけで考えれば、
「手売りで75枚」と「ストリーミングで7万回以上」
この2つを比べた結果でアーティストは
「配信では儲けられないからCDを作って売っている」
となっているのでは?と思います。
会場物販はCD以外にもグッズなども同様です。
計算が複雑になるので、今回は除外したレーベルリリースの場合も
基本は同じです。
アーティスト直販が一番良いのか。。
「じゃあ、仲介するお店の役割無くない?」
ということだけではありませんよ!w
アーティストのファンは直接アーティストから買う方が利益が出ますが、それ以上にその作品を多くの方に知って貰えるよう努力するのがお店の役割。
素晴らしい作品をより多くの方に知ってもらう事ってとても大事です。
今まで名前も知らないアーティストを知ってもらえれば、アーティストにとってはもちろん、お客さんにとっても、それでフィジカルが売れればお店にとっても良い!となります。
しかし現状は、お店にも行きにくいご時世になりお店側も仕入れを抑え始めます。
ライブが出来ない、CDを作っても置く場所が無い、ストリーミングも収益的に難しいとなれば、アーティストが活動していくのは困難です。
その才能に心打たれる「音楽」と、出会えること自体が減っていくかも知れないのです。
音楽業界はアーティストもレーベルも、お店も連動しています。
どこかが下がれば、もちろん一緒に下がります。
どこかが無くなれば、もちろん全て無くなります。
最後に、それぞれ良い点と悪い点をまとめると。
『ストリーミング』
良い点
・ストリーミング会員なら誰でもすぐに聴ける。
悪い点
・アーティスト名を知らないと探せない。
・利益が薄い。
『CD販売』
良い点
・販売利益が大きい。
悪い点
・初期費用がかかる。
・売る場所が無ければ売れない。
比べると、どちらにも良い点、悪い点がそれぞれあります。
どちらが良い!という答えはありませんが、アーティストが音楽を制作出来て発表する環境を無くさないことが重要です。
こういう時代にお店が出来ることは、
前にもnoteに書きましたが、「フィジカルの選択肢を無くさない」ということ。
これをしっかり考えなければなりません。
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