バックステージ「ALONE」
「B'z一日一曲」に薫陶をうけた身としてバックステージスタイルも継承していきたい。この曲が主題歌としてあてがわれたドラマ「ホテルウーマン」は、不倫相手が自殺したのちにホテルウーマンを目指すが、その不倫相手の妻もまたホテルウーマンで・・・というドロドロしてそうな内容らしい。私が生まれる前に放送されたドラマなので実際はわからないが、
私たちはどこまでいっても一人きりなのだから、いっそ不倫しちゃってもいいじゃない!
なんてメッセージを込めた選曲だったのだろうか? ドラマの主題歌としてどんな聴こえ方をしたのかちょっと想像がつかない。
なおこのドラマは主題歌の「ALONE」のほかにもT-BOLAN や WANDS 、大黒摩季という錚々たるアーティストによって挿入歌が提供されている。Being全盛期のプロモーション力、テレビ業界と音楽業界の結託に驚かされると同時に、ドラマ1作品にこんなに歌があてがわれていたことにジェネレーションギャップを感じる。
テレビで流せば流しただけ音楽が売れる、景気のいい時代だったのかもしれない。不況が叫ばれる時代に育った1994年生まれに言わせれば、もはや浮世離れしているとしか思えない。しかしそんな時代に稲葉さんが書いた夕焼けの中で佇む男の心象は、私の胸にも違和感なく沁みるのだった。
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あと、楽曲に注目すると小節構造がおもしろい曲だと思う。メロディ8小節目にオケがバーンと重なってきたり、そうかと思えば最初のサビのあとで感想がなくてすぐ2番に入ったり。曲が美しい。そして歌声。年月を経て変化する稲葉さんの歌唱を楽しめる曲の一つだと思う。なかでも格別なのが、記事本編で最後にあげた、
"Naked eyes in the sky"
の、
"sky"
の部分。開いた母音が稲葉さんの声で発音されたとたんにもうただの英単語にすぎなかったskyがもうただのskyではなくなってしまう。先般行われた5 ERASの歌声はとくによかった。sky が聴きたくて何度も再生してしまった。なんでもない日常の言葉が芸術となる瞬間の快楽。これは歌という営為そのものがもつ機能についての話へと発展しそうだが、そんな抽象度が高すぎる話について私が何かいえることは何もなさそうなので、稲葉さんの歌声をほめそやすにとどめたいと思う。このアカウントが迷惑なB'zファンブログになる未来が見えてきた。せめて『推し、燃ゆ。』あたりを読んで人を魅了する文体のなんたるかくらいは学んでおきたい今日このごろである。
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