クラギ弾き語りマラソン(13曲目)
やっと中継所が見えてまいりました(もはや何を言ってるのかわからん)
#13 カネコアヤノ「光の方へ」
私は長いことカネコアヤノのよさを分かることができなかったのだが、あるときスピーカーやヘッドフォンではなく耳に詰めるタイプのカナル型イヤホンで彼女の曲を聴いたところ、耳に直につき刺さるような鋭い歌声にいたく感動し、以降彼女の歌がとても好きになった。それから私でも共感できる度合いが強い&クラギ映えしそうな曲を探した結果「光の方へ」を男声でカバーしてみた、というのがこの動画。
カネコアヤノのアルバムは通常版と弾き語り版の2種類がリリースされていて、これはアコギ弾きにはめちゃくちゃうれしい仕様だと思う。まぁ私はクラギ弾きなのだが広義にはアコギといっちゃってもいい気がするしそんなことは関係なしにそぎ落とした演奏、別バージョンの演奏を聴けるのは音楽好きとしてふつうに嬉しい。燦燦のネコ可愛い。
カバー演奏の振り返りとしては、カネコアヤノの表現と私の性格や歌声のイメージを照らし合わせつつ自己流の表現に落とし込む、という作業が先にきて、それが全てだったように思う。彼女の歌をそのまま真似た部分としては、①鼻腔共鳴を減らすこと、②怒りと幸せを込めること、③笑わない事 である。
①については、鼻腔共鳴が現代的な、スタイリッシュなイメージをもたらす気がしたからだ。カネコアヤノの詰まったような独特の歌声は、うまく言えないが、強さ、泥臭さ、健気さ・・・のような印象を聴き手に与えるように思う。それは彼女の鼻にかけない発声方法による部分も大きいと思っているため、デフォで鼻にかかった声を出す私もあえてそれを減らしてみた。まぁ鼻にかけるバージョンとどっちも試した結果、かけないバージョンがよかった、という単純な言い方もできるけど、いずれにせよこの曲はしっかりと根を張った草のような強さを出さなければならないような気がして、そのためにはある程度彼女の発声に寄せたほうがよさそうだ、と判断した結果、鼻腔共鳴を減らした。「視界で…」とか「茶色く…」の音色がモノマネっぽくなってしまったが、私の声での表現の落としどころとしてはこんな声かなと思う。聞き映えとして地味なのは自覚している。
②については感情論である。ルールからはみ出して靴のかかと踏むことの幸せと、「壊れそうでちっぽけなぼくらはもっと勝手になっていいじゃん」という何か大きいな存在に対する怒りの両方を、歌声の礎として据える必要があると、カネコアヤノの歌を聴いて私は感じた。この人の歌、楽曲は感受性が研ぎ澄まされすぎていてちょっと本当に参ってしまう気持ちになるのが正直なところでもあり、その感受性をもって「生活する私」を勇気づけてくれる・肯定してくれることが嬉しくもあり、腰を据えて本気で聴く必要のある歌手であるように思う。…話が逸れたが、そんなわけで、発音や語尾の処理のニュアンス、声質、そして後述する表情のなかに怒りと幸せを込める必要があると考えた。それはクラシックギターの演奏にも表れていて、ずんちゃずんちゃ・・・という一見軽快なリズムパターンをあえて無機質に平坦に延々弾き続けることで、軽やかさに足しいて抑制をきかせた。
③については、カネコアヤノのスタジオライブ映像をみたときに笑っていなかったので、これは従うべきだなと思って笑わないよう心掛けた。②と重なるが、この曲は歌詞の字面やメロディだけみると心が弾む前向きなメッセージソングに見えないこともないけど実際は鋭い目線とやわらかい目線の両方で日常を捉えた戦いの歌だと私は解釈したので、安直な表現には進まない方がいいなと判断し、笑わずに演奏することにした。
・・・反対に、本家に寄せずにオリジナリティを出した点は、「苦しいね…」の歌い方である。先陣切って引っ張っていくタイプではない甘ちゃんの私なので、まあこれが自分らしい表現だろうということでこういうオーバーな歌い方をした。そういうふうにしてこの演奏になった、というのが「光の方へ」の振り返りである。
最後に、③笑わないこと について補足しておくと、「靴のかかと踏んで歩くことが好き」という歌詞でカネコアヤノがちょっとニヤッとしているようにも見えて、日常のささやかな楽しさを感じる心も忘れてはいけない曲でもあるだろうなと思っている。
私も靴のかかと踏んで歩くの好きです。好きって言っていいのか!という目からウロコ体験でした。そんな迷いがちな私にはカネコアヤノの強い歌をカバーするのはちょっと難しかったかなぁとも思う。そもそも、あれこれ考えまくった結果めちゃくちゃ地味なカバーになってしまったということは、私には合わない曲だったということなのかもしれない。まあでも自分では気に入っている演奏になったし、色々考えて表現としてまとめることはできたので、ナイストライということで、スぺさんのカバーに引き続き頑張ったで賞。という厳しめの自己評価にしておきたい。強い女性の歌はやはり私には難しいようである。
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