男性不妊と精索静脈瘤
私は泌尿器科医で男性不妊を専門にしています。
大学病院で働きながら、クリニック(東京など)でも治療を行い年間、約100例、精索静脈瘤に対する顕微鏡下低位結紮術を行っています。
全国的にみてもかなりの数です。
精索静脈瘤とはなにか?
精索=精巣につながる結果を含む束
の静脈にできた瘤=コブです。
心臓→動脈→内臓(精巣)→静脈→心臓 と血液は流れます。
静脈の機能が落ちると静脈に逆流が生じて、
心臓側→静脈(精巣)→内臓側 と本来とは逆の方向に血が流れます。
結果として、静脈が瘤状に拡張します。
精巣は精子の工場
体からぶら下がって、腸とかがあるお腹の空間より2-3度低温。
それで本来の機能を発揮します。
血液の逆流があると、流れが滞ることで
・精巣の温度が上昇
・老廃物がたまって酸化ストレスがかかる(活性酸素による)
結果として精巣が精子を作る機能が弱くなってしまいます。
・精液検査の所見が悪くなる(運動率、濃度)
・精子のDNA損傷率が高まる
→妊娠率低下、流産率上昇
これは、自然妊娠を狙うときだけでなく、人工授精や体外受精を行う場合にも成績が悪くなります。
精索静脈瘤は進行性の病気です。
おばあちゃん、のふくらはぎの血管のボコボコを見たことはありませんか?
これは下肢静脈瘤です。
精索静脈瘤の足バージョン。
若いときはないけど、年を重ねるごとにでてきます。
精索静脈瘤も多くの場合、思春期ぐらいにでき始めて、だんだん大きくなってきます。
薬での治癒は望めず、年を重なるごとに精巣へ悪影響を及ぼし妊娠しにくくなります。二人目不妊の78%に精索静脈瘤があるほどです。
薬での治療や様子をみても改善することはないので、手術による治療が必要です。
手術といっても、局所麻酔で1時間程度、日帰り手術が可能な体への負担が小さい手術です。
精索静脈瘤に対する顕微鏡下低位結紮術について、別記事で解説します。