危機契約#2 リターニア 薄明の迷い路 前衛470点が生まれるまで〜バカガチャに挑んだドクターたち〜

 初めて書く記事がこれでいいのか

 初めまして。アークナイツというソーシャルネットワーキングゲームでドクターやってるすいせー(HN)です。今回はアークナイツ縛りプレイの中で新たに生まれた世界記録の話をします

〜目次〜

 前段:アークナイツと危機契約
 ステージの簡単な特徴
 既存記録を塗り替えるまで:攻略初日(9/26 16:00)〜2日目(9/27 7:30)

 ぶち当たった困難:攻略2日目(9/27 7:30)〜3日目(9/28 0:00)
 鍵はへドリー:攻略3日目(9/28 2:24)
 一筋の光明:攻略3日目(9/28 21:00)〜4日目(9/29 4:50)
 最適化を模索:攻略4日目(9/29 5:00)〜5日目(9/30 20:42)
 そして伝説へ:攻略5日目(9/30 20:42)〜6日目(10/1 0:34)
 まとめ

前段:アークナイツと危機契約

 アークナイツというゲームにはソシャゲらしく定期的にでっかい高難易度イベントがあります。
 ゲーム内では「危機契約」と表記されたシリーズでステージの難易度を変えられる条件(契約)を自分で選びカスタマイズしながらクリアするというものになっています。契約ごとにその難易度に応じた重み付けの点数が割り振られていて、契約を盛れば盛るほど点数が上がるわけですね。
 この時期はアークナイツのゲーム性に魅入られたゲーマーが、できる限り条件を高く盛り、高い点数・使用キャラ数の少ない状態でステージをクリアするために徹夜でゲームをしております。

 この危機契約(以後ききけーと表記)。2024年10月時点ですと、契約数と解放期間が長いステージ一つに順次開放される契約数の少ないステージが四つついているわけです。そのうちのステージの一つ、「薄明の迷い路」(9/26 16:00~)が今回の話題の舞台になります。

ステージの簡単な特徴

 「敵の数は控えめだけど、時折くる雑魚を処理しつつ、ゴツいボスをステージギミックでうまく対処しろよ」。2行くらいでまとめるとこんなステージです。
 もうちょっと詳しく書くなら、「コストを制限する敵や蓄音機を一撃で奪う高速移動のシャーマンを処理しつつ、マドロック、マドロックの巨像などのボス敵がゴールするまでに蓄音機を奪取しろ」みたいなステージになります。

 キーワードは「1ルート」、「蓄音機」、「強ボス」
 敵が通るルートは一つだけで順路も一緒なので、簡単な攻略としては、ゴール前に布陣して蓄音機を奪い続けて全ての敵を倒し切ることです。

既存記録を塗り替えるまで:前衛攻略初日(9/26 16:00)〜2日目(9/27 7:30)

 このステージの最高得点は480点になります。
 しかし、先行している中国版で見る限り前衛のみを使用した攻略で最高得点は450点、前衛8人の攻略までしかない。(ついでに先鋒が混じってる)

(引用:先行している中国版の攻略動画)

 これを知ったフォロワーが奮起しました。
 前衛攻略はアークナイツでもメジャーレギュレーションの一つ*である縛りプレイです
 前衛攻略においては、やはり最高得点を取るのが目標。果たして本当にこの攻略はここが限界だったのか。前衛攻略勢は薄明の迷い路に向かいました。

*アークナイツはプレイ人口に応じて攻略が多様化しており、「この属性を持つキャラだけ選出してクリアしよーぜ」とかいう数寄人が生まれている。その中で「前衛」という職業だけで攻略するのは割と間口が広い

縛りプレイを嗜む1プレイヤーの偏見

(写真)


 カスです。390点すら崩壊する。なにこのゲーム。
 ギミックの比重が大きいため、ステージ理解度がもろに出ます。そのため、意味が分からん失敗を積み重ねることになります。

 そんな苦しんでいる中、挑んでる一人が「450点あったしとりあえず人数減らすか、、、」と言い出しました

 出た。
 時雨さんは前衛攻略やってる中でも指折りのとんでもねープレイヤーなので早急に圧人を出してくれました。その高い実力ゆえに複数のステージで考えうる最適な攻略を出しており、僕もよく無茶振りをします。

1時間も経たないうちにガンガン減ってる。


とか言ってたら

 次の日には点数上がりましたね(まだ上がるんだ)

 箒星さんは実力のあるプレイヤーで、「理論値できた!」と思ったところを横から「まだ最適化できますよ」と横から殴って指導してくださるプレイヤーです。

 というわけで人数を減らすのみならず10点の点数が上昇したわけです。初日にこのスピード。早すぎる。
 それと同時に「ここから点数を上げることは無理だろう」と思われました。

前衛がぶち当たった困難:前衛攻略2日目(9/27 7:30)〜3日目(9/28 14:00)

 前衛がぶち当たった困難とはなんだったのか。

 それは「孤軍奮闘」契約です

 契約には「孤軍奮闘」というものがありました。これは、コストの回復速度を減衰させる契約で、ランクⅡでは−50。ランクⅢでは-75になるとんでもない契約です。その難易度に比例して、孤軍奮闘のランクを上げることで点数を20点増やすことができます。ステージの上限は480点なのでこれを選べるかどうかがこのステージで460点より先に進むためのチェックポイントでした。

 前衛は物理攻撃職でありながら敵へのデバフ、体力の回復、高台への配置、スタン、バインドなどの搦手を使用することすら可能な万能職業ですが、唯一「コストを稼ぐ」ことだけは現在まで可能になっていません。そして、前衛に限らずアークナイツは性能がいいオぺレーターはコストが重い傾向にある。前衛にとって孤軍奮闘Ⅲは永遠の宿敵であり、不倶戴天の相手なのです。

 このステージはギミック「蓄音機」をマドロックと奪い合う壮絶な陣地合戦。蓄音機はHPの回復と敵への攻撃の両方を担う重要な戦術拠点であり、キャラクターの配置タイミングはその蓄音機の奪取のタイミングへと直結しました。キャラクターの配置順、配置できるタイミングは攻略に大きく影響します。
 このステージでコスト減衰契約が意味するところは「強いキャラの戦力で自陣を整える」のを遅らせるのと同時に「強いギミックで自陣を整える」の両方を妨害するということになります
 ついでに、このステージ中盤で登場するエリート敵は攻撃のたびにこちらのコストを減らしてきます。さらになんと、孤軍Ⅲの状態ではコストが自然回復する速度と敵が減らしてくる速度が変わらない。コストが増えない=誰も配置できない図式です。

 そのため、孤軍奮闘Ⅲを取った初期の攻略では450点にすら届かないという苦戦をしておりました。

孤軍奮闘Ⅲの秘訣は速攻にある:

 孤軍奮闘Ⅱでの攻略では、「奪われる自陣近くの蓄音機を奪い返しつつ、ステージ中盤までに布陣を整え、中央のレーンでマドロックを一気に迎え撃つ」という戦術が取られていました。
 これは、
1.契約によりマドロックの初期位置周辺は蓄音機が敵側に設定されており、キャラを配置しても数秒で撤退させられる
2.敵側の蓄音機付近ではHP回復手段がなければ20秒で撤退させられてしまうこと。
3.複数の蓄音機を奪われた場合、敵の膨大なHPを割合で回復されるため、ゴールを守るためには自陣近くの蓄音機は味方側で維持しなくてはいけない

 という複数の制約を下に考えられた攻略でした。
 つまるところ、マドロックというボスを倒そうと思ったら、ボス近くの蓄音機は味方側のものである必要があるわけですね。
 孤軍Ⅲでは孤軍Ⅱでできた「敵に奪われた蓄音機を奪い返すための配置」が全然間に合いません。
 そのため、孤軍Ⅲの戦術は
1. 契約条件を緩和し、序盤に中立の蓄音機の数を増やすのと同時に、取られる蓄音機を敵陣側に寄せることで序盤にマドロックに取られても問題ない蓄音機を必要数用意する。
2. こちら側のキルゾーンかつ、敵を回復する蓄音機がなくなる一番最初のタイミングでマドロックを倒しきる
 所謂「速攻」と呼ばれる戦術が模索されていました。

 マドロックが最初のキルゾーンに入るまでに敵陣に奪われる蓄音機は4基。それまでに出てくる敵は、ムリナール、マウンテン、キャッスルといった低コストの前衛でもギリギリ捌ききることが叶うことまでは確認できていました。
 「残りのコスト23くらいで配置できるもう一人のキャラとムリナールでマドロックが蓄音機を奪ってくるまでに倒しきれれば勝てる」というところまでは来ていました。なお、マドロックはキルゾーンに入って5秒くらいで最寄りの蓄音機を奪ってくるため、勝ち目はめちゃくちゃ薄かったです。
なので、「孤軍奮闘Ⅲを取った上でどこまで点数伸ばせるか知りたいな」という少数のドクターのまあちょっとした好奇心をモチベーションに戦いが続いていたわけです。
 (ちなみに他のプレイヤーが460点を出してる頃、僕は400点に届かなくてステージ初回クリア報酬すらゲットしてませんでした。ふて寝)

 やがて、1番初めに孤軍奮闘Ⅲをやり始め、マドロックを倒せないかと30時間速攻チャートを練っていたドクターが突然言い出しました。

「へドリー*でずっとスタン引けばいいんですよドクター、やりません」

*ヘドリー:イケメン傭兵。プレイアブル。重戦士とかいう星6だけが強い職分の星6。スキル3で運が良ければ70〜75秒敵をスタンさせる。僕は持ってない

偏見(以下略)

鍵はへドリーのスタン:前衛攻略3日目(9/28 2:24)

 ヘドリーはスキル3で「攻撃時25%で5秒間スタン」を持っています。

 マドロックが最初にこちらのキルゾーンへと到達し、蓄音機を奪うまでにへドリーが2回攻撃を入れる隙がありました。

 そしてマドロックの蓄音機の奪取モーションはスタンによりキャンセルできませんが、奪取モーションの前からスタンをかけ続ければ発動を踏み倒すことができました。

 つまり、

1.味方の戦力をできる限り前に出し、キルゾーンを下のレーンに設定
2.マドロックがこちらのキルゾーンにはいる最初のタイミングで、へドリーに2回攻撃させ、25%のスタンを引く
3.マドロックがスタンから解放されると蓄音機を奪われるため、スタンさせ続けることで蓄音機を奪われることを踏み倒す
4. スタンして動かない間にキャラと蓄音機のダメージでそのまま倒し切ってしまう

 このような作戦が成立してしまうわけです。
 これにより、孤軍奮闘Ⅲで考えられていた「蓄音機を奪い返す」ための配置から解放され、最小限の配置キャラでシャーマンと雑魚敵を処理しつつ、ボスを倒しきることが可能になりました。ちなみにこれ以外の作戦は、総当たりで全キャラ試したけどマドロックの残り2割程度のHPが残るということで不可能ということが証明されていました。
 どうして思いついてしまったんですか

一筋の光明:前衛攻略3日目(9/28 21:00)〜4日目(9/29 4:50)

 そして始まるバカガチャ攻略*。作戦の3に書きましたがマドロックの蓄音機奪取は、実はモーションが開始するとスタンによるキャンセルはできません。なので、短い時間のスタンではスタンが切れた瞬間に蓄音機を奪い返されます。ついでに、15秒以上経過してスタンが切れた場合、すぐに蓄音機は奪ってこないですが、今度はシールドにより自身の耐久値をバカ上げしてくるので、スタンが外れる度に必要なダメージ量が増え、後半に必要なスタンの数が爆発的に増えます。

*バカガチャ攻略は「(あまりにも低い確率を通さなきゃクリアできない)バカ(にならないと耐えられない)ガチャ(をともなった)攻略」の略称です。諸説あります。挑戦者はバカガチャ部に入部したと言われるようになります。

「いやーこんなんやってらんねえよな! そんな乱数ゲームないに用意されてないって」なんて言いながら、ディスコードで他のプレイヤーと検証していたわけです。久しぶりにワイワイやれて楽しいななんてやってたわけです。


 私がいけてしまった(挑戦回数2回)(この後の操作考えてなくて敗北した)(お前が戦犯だ)

 こうして攻略は通ることが判明し「行動を最適化した後、ひたすら祈る」という戦略が完成しました。攻略を練る代わりに、祈る時間が増えた。

 やがて操作が全て倍速でよくなり、攻撃の効果音だけ聞いて操作のタイミングを把握し、攻略中に目を離しておやつを食べる隙を見つけるほどに熟達した頃

 孤軍Ⅲ 460点突破(9/29 4:50)(突破までの敗北数:3桁。そのうちボスを倒し切った後の操作ミスによる敗北:2回)

 これにより、現状の記録と並ぶことに成功したわけです。ここまで3日ってマジ...?

最適化しようぜ:4日目(9/29 5:00)〜5日目(9/30 20:42)

「あと10点盛れるんじゃないorもう1人くらい減るんじゃないですか?」

過去の自分を〆てやりたい

 さて突破後。
 テンション爆上がりし、脳内麻薬ドバドバの状態で適当なことを言い出しました。まあ攻略にキャラクターおいてない瞬間あるし、マドロック突破後とかめちゃくちゃ操作に余裕があるしいけるだろ。当時の私はそう言い始めたわけです。

 まあもちろん甘い目論みなので、思いつく配置を5パターンほど試しましたが失敗に終わりました。ダメージが足りない、敵が抜ける、配置ができない、味方がやられる等など「あちらを立てればこちらが立たず」みたいな状況になってしまいました。

 とはいえです。
 結構無駄な動きもあったことを踏まえ、「あと一人は人数減らせないかな」と模索することを始めました。ここまで来たら完全勝利を狙いたい。

 同志の前衛プレイヤーも「星6じゃなく星5を使って編成キャラのレアリティを下げることはできる」という発言をし、僕は僕で「どっかで人数へらせないかな」と言い始め、スキルのタイミングと配置をひたすら無限に調整し始めました。この時は、「2回目のムリナールのスキルを早めに撃つことで2体目のシャーマンにスキルを間に合わせる。その代わり、マドロックに対して足りない火力はへドリーのスタンの回数を増やす」というものでした。
 攻略を模索する中で、ステルス状態で出てきた敵をブロックして倒すために下レーンに配置していたへドリーが中央レーンのムリナールの横になりました。つまり、マドロックをブロックしないでひたすらスタンを引く。たった一人を削るために突破時より過酷なガチャに挑むことになったのです。何か前世で業でも積んだんですか?

そして伝説へ:前衛攻略5日目(9/30 20:42)〜6日目(10/1 0:34)

 1チャレンジ5分くらいで回せるようになるくらい無限にやってた。そして気づいた。

「へドリーを中央のレーンに配置するなら、蓄音機一個くらい奪い返せるんでは?(あと10点盛れるんじゃ?)」

 460点までは「最初に配置したキャッスルを撤退」していました。しかし、へドリーの配置が間に合うのでコスト的にはぶっちゃけ撤退する意味はあんまりない。
 蓄音機の契約を後10点盛った際には、中央レーンの真ん中の蓄音機が奪われますが、それを最速で奪い返すための配置はぎりぎり間に合いそうでした。そして奪われた蓄音機のダメージをメインで受けるムリナールの近くには1基だけ味方側の蓄音機があり、スキルが終わるまではギリギリHPが持ちそうでした

 恐ろしいことに気づいてしまった。僕はすぐさま優秀なドクターにこの可能性を告げ、「いけるんじゃね?」と彼らのやる気を焚きつけました。
 そしてこの思い付きが本当に可能なのかを確かめるため、2つの課題に対してのチェックを行いました。

 1つ目が「蓄音機を奪い返すのは間に合うのか?」
 460点の攻略まで、画面中央の蓄音機はずっと味方のものでした。そのおかげで、マドロックを倒した後にゴールの右3マスに登場するステルスの敵を味方がブロックせずに突破することができていました。中央の蓄音機を奪われた場合、こいつがゴールするまでに倒すのが間に合うのか(それまでに蓄音機を奪い返せるのか)が一つ目の課題でした。
 2つ目が「2体目のシャーマンを倒すコストは足りるのか?」
 1にある通り蓄音機を奪われることでステルスの敵を倒すまでに時間が余計にかかることが考えられます。その分、敵のスキルにより味方のコストは減少することが予想されていました。その結果、流れてくるシャーマンを倒すためのキャラの配置が本当に間に合うのか。それが二つ目の課題でした。

 検証と460の動画を見返し、どうやらマドロックの撃破さえ叶えばさらに点数を上げることができる。その発見後、余裕があった前衛プレイヤーは再度のバカガチャへと招待されたのです。

 そして深夜。

 気づいてから突破可能の証明に3時間。突破まで5時間。6日間に及ぶ激闘はここに終わりをつげました。

 こうして、前衛は孤軍奮闘Ⅲの契約に勝利し、新たな地平線を望むことができたのです。


まとめ

攻略にチェシャ、箒星、時雨、すいせー
考察にすくらん

 5人の前衛のドクターが力(と運)を結集することで、リターニアのステージは450点から470点まで点数を伸ばすことができました。
 この20点は小さく見える20点ですが、その中身には戦術の改変、総当たりによる可能性の排除と突破を模索する努力が凝縮されたことによる積み重ねが確かに存在していました。
 ステージ開始から6日間、不断の挑戦が、470点という前人未踏を成し遂げたのです。どのプレイヤーも欠かせない役割を果たしていました。
 一見これ以上の活路が見えないステージでも、可能性を試し、一つずつ積み重ねていくこと。仲間と協力することがこのステージを突破できた最大の要因でしょう。
 再び前衛の可能性を感じることがあれば、その時もきっとその時のプレイヤーがステージへと果敢に挑戦することを祈っています。




 でも、もう二度とヘドリーのガチャはやらない。
 その強い気持ちを僕は大事にしていきたい。

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