2025年度入学東大ロー再現答案
総評
再現を翌日に出すと様々な意味であまりよくないかとも思ったが、結局i塾さんの東大ロー対策ゼミの要件として再現答案作成債務が課せられているため、その延長線上で公開しようと思った。総じてどの科目も難しかったので(私見)なんかどこかがはねて受かってくれればいいなという淡い期待をもって残りの余生を過ごしたいと思います。
あと刑事系は最初だけマス目守ってあとは詰め詰めで書きました。入らないと思ったためです。あと翌日に再現答案作るなんてどんだけ暇やねんというご指摘はいらないです、それはもう大勢の人にいただきましたから
※12/16追記
無事合格してました。ただ、民事系は商法少し外したか。採点実感をまた確認したいです。
刑事系(58.47点)
感想
刑法について、実行の着手の論点を忘れた。これはみんな書くと思うので手痛い失点である。あと、親族相盗例の錯誤は、本筋とはずれるし事実も親族としか書いてないため全然点数は入ってないかもだが加点事由ぐらいにはなるかもしれないと淡い期待を抱いている。また刑訴は個人的には難しいと思っていて、二つの規範を書くという大暴挙を犯した。これは論理矛盾であり、やばいと思う。しかし、どうしても家の捜索を適法にしてパソコンの操作を考慮しなければあかんと思って焦ったためである。パソコンについては事前に内容を確認しているので包括的差押えの論点は及ばないのでは。(私見)
第1設問1について(以下刑法は法名省略)
1Yの罪責について
(1) YがB宅に窃盗目的で立ち入ったことについて、かかる立ち入りは住居権者の意思に反する立ち入りとして住居侵入罪(130条)が成立し、後述のとおりXと共同正犯(60条)が成立する。
(2) YがB宅で棚を開けた行為に関して窃盗未遂罪の共同正犯(244条、235条)が成立するか。
アこれに関して、棚には財物がなかったのであり、同罪の実行の着手が認められないのではないか。
(1) そもそも、実行行為とは構成要件的結果発生の現実的危険を有する行為であり、行為不能の観点から、行為者及び一般人が認識した事情を基礎として、当該行為が構成要件的結果発生の現実的危険を惹起させるものといえる場合には、実行の着手が認められると解する。
(2) これを本件についてみると、まず財物は通常棚のような外部からは見えないところに置かれているといえ、行為者のYおよび一般人はB宅のキッチンの棚には何もないことを認識していなかったのである。また、X及びYはA宅についてではあるが、棚からへそくりを窃取しようとしていたのであるから、かかる事情も基礎とすると、当該行為は構成要件的結果発生の現実的危険を惹起する行為といえる。
イもっとも、YはB宅に侵入して窃盗をする故意しかなかったのであり、故意が阻却されないかが問題となるも、認識した事実と発生した事実が同一構成要件内で符合する場合には、故意が阻却されないと解する。また、故意は構成要件の中で抽象化される以上、その個数を観念できない。
本件では、Yが認識した事実はA宅に侵入して窃盗を行うものであり、発生した事実はB宅に侵入して窃盗を行うというものであるから、同一構成要件内での符合であるといえ、住居侵入及び窃盗未遂の故意は阻却されない。
(3) 以上より、Yの上記各行為に①住居侵入罪の共同正犯②窃盗未遂罪の共同正犯が成立し、両者は手段と目的の関係にあるため、牽連犯(54条1項後段)となり、Yはかかる罪責を負う。
2Xの罪責について
(1) XがYにもちかけてB宅への住居侵入及び窃盗行為をさせようとした行為に住居侵入罪及び窃盗未遂罪の共同正犯が成立するか。
アそもそも、60条が一部実行全部責任を定めた趣旨は、他の共犯者が起こした法益侵害と因果性を有する点にある。
そこで①共謀②共謀に基づく実行行為③正犯意思が認められる場合には、共同正犯が成立すると解する。
イこれを本件についてみると、確かにXとYはA宅に入って窃盗をする共謀しかしていないが、YはA宅と間違えてB宅に入っているのであり、A宅に入る共謀からかかる行為は行われているのであるから、因果性が及び、B宅に入る共謀も認められる。(①充足)そして、かかる共謀に基づくYの実行行為が行われている。(②充足)さらに、Xは利益を折半しようとしていて、さらにA宅の侵入経路などもYに教えYの犯意を形成したといえ自己の犯罪とする意思も持っているから、正犯意思が認められる。(③充足)
ウよって、Xの上記行為は同罪の実行行為といえ、Yと同様に故意も認められる。なお、Xは親族のA宅に侵入し窃盗する意図を有していたのであり、親族相盗例(244条)が適用されるとの誤信があり故意が阻却されるとも思えるが、これは一身的処罰阻却事由を定めたものであり故意の認識対象ではないため故意は阻却されないと考えられる。
(2)よってXの上記行為に住居侵入罪と窃盗未遂罪が成立し、牽連犯となり、かかる罪責を負う。
第2設問2について(以下、刑事訴訟法は法名省略)
1まず、Yの身体及び車を捜索したことは適法か。令状なくこれらの行為を行っているから令状主義(199条、憲法33条)に反し違法とならないか。
(1) そもそも上記行為は令状なくして行われているものの、Yを適法に逮捕して「逮捕する場合」(220条1項)に行われているものだから、同項により許容されるとも思える。
(2) では、上記行為は「逮捕の現場」(同2号)で行われたといえるか。
アそもそも、220条1項が無令状で捜索差し押さえを許容する趣旨は、逮捕の現場には通常証拠物が存在する蓋然性があり、また被疑者等により証拠物が隠滅される危険性が高いため、これを防止して証拠物を保全する緊急の必要性が高い点にある。
そこで、逮捕の現場は、被疑者の事実的支配が及ぶ範囲を指すと解する。また、上記趣旨から、被疑者の管理権が及ぶ範囲についても逮捕の現場に当たると解する。
イ本件についてみると、Yの身体は被疑者の事実的支配が及ぶ場所であり、車も、Y宅の前の駐車場にあり、Yがまさに乗り込もうとしていたのであるからYの物だと推認でき、事実的支配下にあるといえ、逮捕の現場に当たる。
ウよってかかる場所での捜索は適法である。
2次に、Y宅に入りパソコンを差し押さえる行為は適法か。
(1) そもそもY宅が「逮捕の現場」に当たるか問題になるが、Yの管理権が及ぶ範囲であり、「逮捕の現場」にあたり、適法である。
(2) 次に、かかる場所でのパソコンの差し押さえについて、パソコンは差し押さえ対象物に当たり差し押さえができるか。
アこの点、前述した220条1項の趣旨から、被疑事実と関連した物のみ同項によって差押さえできると解する。
イ本件では、パソコンの中身についてメールを確認して、本件と関連のあるメールがあったことから、パソコンと被疑事実との関連が判明したといえ、差し押さえ対象物に当たると考えられる。
(3) そうであっても、かかるパソコンの中身を確認することはYのプライバシーの利益を侵害するもので強制の処分にあたり違法にならないかが問題になるが、「必要な処分」(222条1項前段、111条1項)として許容されないか。
ア捜査比例の原則より「必要な処分」とは捜索差し押さえのために必要であり、社会通念上相当なものを指すと解する。
イ本件では、パソコンの中身を見ないと被疑事実との関連性がわからないから中身を見ることは捜索のために必要であり、またパソコンのような電子機器は通常他の共犯者と連絡を取るために使われるものであるから、かかる機器に証拠物が存在する蓋然性はある。もっとも、すでにYは逮捕されており証拠物を隠滅される危険性がないから、かかる方法は社会通念上相当とは言えず、違法である。
公法系(53.57点)
大戦犯科目。答案構成時点で25分経っていた。憲法問題を29条か22条1項でずっと迷っていたためである。ここを間違えたらヤバイとおもって変な汗をずっと書いていた。参考判例?と思われる令和4年1月25日の判例?は22条1項で検討していたためここはセーフか。しかし、設問2について参考判例は裁量の逸脱濫用という処理はしていなかった。もっともわたしも裁量逸脱の検討の中で協議をしていないことなどを検討したため点数は入っていると信じたい。しかしこれはそもそも設問1で検討すべきことだったか。そしたら結局点数は入っていない(問題文に設問1と重複する内容は採点しないとある)といえるため、やばい。また、設問1(1)は思いつかず自分で判例をつくるという大暴挙をしたため、0点だと思う。しかし、ここはみんなも出来が悪いと期待して総じて公法系は小ダメージぐらいで済んでくれないか。(はかない願望)あと本件条例16条を対称にするのは間違っているとは思ったがもう既に時間がなかったためまあここは止むを得ない。採点してくれる方が優しく拡張解釈してくれるのを待つ。
第1設問1(2)について(以下、憲法は法名省略)
(1) 本件条例16条は、Aの本件事業をする自由を制約するものとして、22条1項に反し違憲とならないか。
アそもそも上記自由が保障されているか問題になるも、職業遂行の自由も保障して初めて職業選択の自由の保障が万全なものになるから、同項は職業遂行の自由も保障していると考えられる。
イそして、本件条例16条により、Aは本件事業を行えなくなっているから上記自由に対する制約も認められる。
ウもっとも、上記自由に対する製箔は公共の福祉により正当化されるか。
(3) そもそも、上記自由は個人の持つ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有するから、重要な自由である。
そして上記規定により、本件事業を一切行えなくなるから、規制態様は強度である。また、上記規定の目的は、住民の生活環境を保全するところにあるから、消極目的規制といえ、裁判所が積極的に介入するべきである。
もっとも、本件自由は社会的相互関連性が大きく、公権力による規制が一定程度必要である。
(4) そこで、目的が重要であり、目的と手段の間に実質的関連性が認められるかで判断する。
(5) ア本件条例の目的は、前述したとおり住民の住環境の保護にあり、福祉主義(25条)のもかなうものであり、重要である。
イ次に手段についてみると、本件条例の16条の規定により、住民の住環境、例えば水質に影響を及ぼすおそれのある事業に対しては規制対象事業とされ、その事業を行うことができなくなるのであり、俺によって水質が保全され、住民の住環境が保護されるといえるから適合性がある。
そして必要性についてみると、まず住民に対して事業の申請者は説明会を行わなければならないが、前述のとおり住民の住環境を保護するためには、住民の意見を聞いてそれにあった施策をする必要があるため、事業者にとってそれほど不利益とは言えない。また、事業者と行政側で協議を行うため、そこで自分の意見を伝えて認定が行われるため事業者側の意見も取り入れられるといえる。さらに、町長は、認定の前に、審議会に意見を聞いたうえで規制対象事業かどうかを決めるため、判断の公正が第三者の審議により一定程度担保されているといえるから、かかる点からも事業者にとって不利益ともいえない。
(6) よって手段と目的の間に実質的関連性が認められ、本件条例16条は合憲である。
第2設問2(1)について(以下、行政事件訴訟法は法名省略)
1本件条例が法令違反となるかどうかは、法令の趣旨、目的に照らして、本件条例の規定が法律の委任の範囲内をこえるか否かで決すべきと解する。
2本件についてみると、採石法は岩石の採取などについて認可を行うことによって岩石の採取に伴う災害などを防止し、もって公共の福祉を図るところに目的を有するといえるが、この災害に、個々の市町村の住民の生活環境、例えば水質汚染などの問題もふくまれるといえ、また住民の生活環境の増進は公共の福祉の増進に含まれると考えられ、本件条例は採石法の目的と合致すると考えられる。さらに、採石法は知事の認可を事業開始等に当たり要求しているが、本件条例は町長の認可を要件としていてさらに住民への説明会や審議会への意見徴収を要件としている。ここの市町村の生活環境に精通している村長に認可の権限を与えた方が住環境の保護につながるうえ、住民の説明会などの要求は生活環境の保全によりつながるものといえるから、本件条例は採石法の方がもたらす効果を阻害するものでもないといえ、委任の範囲内と結論付けられ、法令違反とはならないと考えられる。よって本件条例は適法である。
第3設問2(2)について
1本件認定は行政側の判断の裁量逸脱・濫用にあたり違法(30条)とならないか。
(1)まず本件認定に関して、本件条例16条各号は「…をもたらすおそれ」などと規定し、文言的に要件裁量が認められる。さらに、各土地の水質、人口分布など種々の事情を認定に当たり考慮しなければならないから、政策的観点から判断されなければならず、性質的な裁量が認められる。
もっとも、本件認定はAの職業遂行の自由も侵害しうるものであるため、その裁量は一定程度制限されうるものである。
そこで、行政の判断が重要な事実の誤認に基づくものである場合や、また著しく合理性を欠くものである場合には裁量の逸脱濫用として違法になると解する。
(2)本件についてみると、まず本件認定はたしかにXが説明会で主張する通り、従前の事業の継続にすぎず湧水等に影響を及ぼさないとも思えるが、2020年ごろから本件採石場では出水が発生するようになっているのだから、住民の水環境にも影響を与えるようになってきたとも考えられ、さらに出席者からの意見にも十分に答えたものとはいえないため、条例の規定に答えたとはいえず、行政の判断は著しく妥当性を欠くものとは言えない。また、審議会からのデータ提出要請には、第三者が作成したデータは公開が要請されてないという法的根拠のない主張でデータの提出を拒んでいるため、行政側も判断の資料が多かったとは言えない。さらに、町長との協議も、日程に都合をつけようともせず拒んでいるため、A側からの意見を行政側が十分に取得できたとは言えず、本件認定をすることは事実の誤認に基づくものでも著しく不合理な判断によるものでもなく、裁量の逸脱濫用には当たらない。
2よって本件認定は適法である。
第4設問1(1)について
本件において参考になる判例は森林の伐採事業が公共の福祉の観点から規制された事例である。公共の福祉の観点から営業の自由の規制が認められるかという問題に関して判決を下したものであり、本事案とそこに関して共通するため先例となり、本件にも判例の射程が及ぶ。
民事系(60.89点)
感想
商法は再現を作っているときに思ったが、改めてみるとかなり難しい。なんとなく私見ではR3の予備論文設問2に近いと思った。信義則請求(最判H21.12/18)と適法な339条2項請求?しかしよく判例を終わった後見てみると全然事例が違う。Dの入社時から本件内規があったのだから、信義則上それに基づいてと解釈してもよさそうだが。結果的に最後の方変な文章になったけどまあもう直せないからよいです。あとFの使い方に悩んだ。公平の観点という形で処理したがどうなのか。また339条2項の請求は持ってる論証集に損害賠償請求の内容が書いてあって、論点であることを後からしった。どうも解任されなかったら退任時までに得られた額を請求できるらしい。それはそうか。
民法は普通にAの弁済は時効の承認でよかったと思う。ここは沈んだところであろう。民訴は反対説を抑えていなかったためでっちあげたが、これもよいと認めてくれればいいなと思う。伊藤塾のテキストにばっちり反対説の論証まで書いてあったから、抑えていた人はいただろう。直前に見とけばよかったと後悔。
第1設問1について(以下、民法は法名省略)
1まずC社としては自己の所有する土地に抵当権を設定したものとして物上保証人(145条)に当たるから、甲債権の時効消滅(166条1項)を主張し、付従性により抵当権が消滅したことで抹消登記請求をすることが考えられる。
(1) そもそも甲債権は2022年4月1日に弁済期を迎え、「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年以降の2027年5月1日にCはかかる請求をしているから、認められるとも思える。
2しかし、Aとしては、Bから一部弁済を受けた2024年4月1日に時効が更新したため、かかる主張は認められないと反論すると考えられる。
(1)これに関して、時効の放棄は時効完成を知って行わないといけないため、一部弁済は時効の放棄には当たらないと解する。もっとも債務者が一部弁済した場合、相手方はもはや債務者が時効援用できないとの期待を抱くため、債務者は信義則上(1条2項)時効援用することができないと解する。
(2)よって本件でも、Bは一部弁済しているため、Aは時効援用しないとの期待を抱くから、時効援用できないとも思える。
3しかし、Cとしてはかかる効力は相対効にすぎず、Cはなお時効援用できると再反論すると考えられる。
(1)これに関して、債務者の時効を援用できる立場の物上保証人が、債務者に生じた時効障害の効果を受けないのは公平の原則に反する。また、物上保証人にも時効障害事由が及ぶと解した方が、抵当権に対する付従性を定めた396条の趣旨にも合致する。
(2)よって本件でもAへの時効障害事由がCにも及び、Cは時効援用ができないといえる。
第2設問2について(以下、民事訴訟法は法名省略)
1別訴において予備的に、本訴の訴訟物たる債権で相殺する旨の抗弁を主張することは142条に反しないか。
(1)この点について、別訴における相殺の予備的抗弁の主張は「事件」に当たらないから、同条を直接適用することはできない。
しかし、同条の趣旨は被告の応訴の煩、矛盾判決のおそれ、訴訟不経済を防止するところにあり、相殺の抗弁は判決理由中の判断でも114条2項によりその存否の判断に既判力が生じることから、矛盾判決のおそれが生じる可能性があり同条が類推適用されるとするのが不適法説からの立場である。
(2)これに対し、本訴請求の訴求債権が別訴において予備的抗弁として主張された場合には、裁判所は両請求に関連性があるとして弁論併合(152条1項)する可能性があり、かかる場合には142条の趣旨に反さず適法になると考えることもできる。また、本訴において既判力ある判断が訴求債権について生じた場合には効力を失う条件付き権利抗弁と、別訴での予備的抗弁を考えれば142条の趣旨に反さず適法になると考えられる。よってこのように考えるのが適法説からの立場である。
第3設問3について(以下、会社法は法名省略)
1Dとしては339条2項に基づきかかる請求をすることが考えられる。
(1)これに関して、「正当な理由」がある場合には同項に基づく損害賠償請求が認められないといえるが、取締役の職務に対する萎縮防止の観点から、「正当な理由」とは、単なる経営判断失敗は含まれないと解する。
本件でも、Dは抵当権をC社の保有する土地に設定することを提案して、実行されたことによりC社に損害が生じているが、かかる事項は経営判断失敗にすぎないため、「正当な理由」に含まれないといえる。
(2)よってDは上記請求ができるといえる。そして、その範囲は、取締役を務めた期間に応じた退職慰労金相当額であると解する。また、公平の観点から、同じ総会で退任するFに対する退職慰労金額と同じ基準において算出された額を請求できると考えられる。
ここで、Fは取締役会で退職慰労金の額を決定されているが、361条1項に反し違法ではないか。Fに対する退職慰労金支給が違法であったら、Fと同じ基準をとることが不合理になってしまうため問題となる。
アそもそも、同項はお手盛りを防止する趣旨であるから、退職慰労金も「報酬」にあたる。そして、合理的な支給基準が存在し、かかる基準に基づいて合理的な額の退職慰労金が支給される場合には、かかる趣旨に反さず適法であると解する。
イ本件についてみると、本件内規はDがC社に入社した時から存在しており、合理的な支給基準といえ、またその支給基準に従ってFに対して退職慰労金が支払われることが本件総会において決定したのであるから、合理的な額の退職慰労金が支給されるといえる。
(3)よって、Fに対する支給は適法であり、Dも本件内規に基づいて取締役を務めた期間に応じた退職慰労金相当額を請求できるといえる。そして、前述のとおりDがC社に入社した時から本件内規は存在したのであり、Dとしてもかかる内規に基づいて報酬が支給されることを期待していたといえ、上記請求は信義則(1条2項)からも導かれるといえる。