ルームシェア
今日はかなりひさしぶりに、ツイートには収まらない文章が書きたくなった。お題はルームシェアについて。
来月から恋人と一緒にルームシェアをすることになった。それに至るまでには色々と長い道のりがあって、実現に至るまで数ヶ月かかってしまった。
まず初めに、私は恋人と一緒に住むことを"同棲"ではなく"ルームシェア"と言いたい。
何故なら、わたしたちが同じ場所で暮らすことを選んだのは恋愛感情が募りに募ったからでも結婚を前提としているからでもなく、お互いの進む道をより明確により膨らみのあるものにしたかったから、そして単純に暮らしを快適に過ごす上でお互いの存在が支えになると思ったからだ。
彼とは確かに恋人で、一緒にいてすごく楽しい。病める時も健やかなる時も彼の存在は私にとって変わらずあたたかいものだし、この先も一緒に過ごしているイメージが何となく浮かぶほどには隣にいることにしっくりきている。そして、明確な線引きはないけれど友だちとはまた違った愛情や絆も感じている。
だけど、同棲と捉えられることにはどこか違和感を抱いていた。彼は恋人である以前に、同じ芸術の道を志す同士であり同じ類の孤独や焦燥感を抱えながらも励まし合い切磋琢磨できる大切なパートナーだから。そして、高校時代から築き上げてきた友情も大きい。今回のことはそういう信頼関係があるからこそ決断したことで、だから同棲というよりも"アトリエをシェアする"という感覚があった。
一緒に暮らしたいねと話してから、お互いに自分の保護者にその旨を伝えた。そして、お互いの保護者を交えて話し合いもした。彼の親はとても理解のある方だけど、それでも初めは男女の関係としての心配や、世間体、結婚を含めた今後について尋ねられた。
もちろん親として、その辺りのことが気になる気持ちは私にも分かる。当然なのかもしれない。だけどすごく悲しかった。私と彼とは、そんな薄っぺらく歪んだ関係ではないのに、性愛のみで繋がっている関係ではないのに、そしてそんなことで偏見の目に晒されないかと心配されていることがただただ悲しかった。
大きくなるにつれて、男の子と一緒にいると恋人かもしくは今後そういう関係になりたいと思っている間柄だろうと推測されてしまう。亡き母にも男の人は怖いものだからちゃんと警戒しなさいと言われたし、今回のことでも貴方の身体にもしものことがあったら、なんて言われてしまった。
確かに過去に男性から嫌な思いをさせられたこともあるし、そういった危険を孕んだ人が世の中には他にもいるだろう。そんなリスクなんて気にしたくないからと最初から警戒しないのは無理があると思う。だけど、男性だからといって全ての人がそういう訳ではないし、性愛に関わらずとも人として対等な関係を築ける相手だっている。彼とは恋人である以前にそうしてひとりの人間同士として対等に関係を築いてきた。長く関わる中で、彼の人としての魅力や誠実さ、自分の持つ加害性に対する自覚とそれに伴う想像力や自制心を持っているところ、私に対する細やかで惜しみない愛情を与えてくれるところ、さまざまな側面から彼という人間を知ってきたつもりだ。そしてそれは彼も同じだと思う。
彼との関係性を示す適切な言葉が私には浮かばない。恋人だけど、親友でもあるし、共に育った兄弟のようでもあるし、だけどそれだけでもない。ただ言えることは、私は彼という人間のことを心から信頼し好いているのだということ。だけど言葉にするって難しい。と同時に、きっと本当は関係性に明確な名前をつける方が難しいよなぁとも思う。
(少し話は逸れるけど、今まで彼の話をする時に"恋人"と呼んでいたのだけど、何となく違和感を抱いていた。そんな時大好きなうえまつさんがパートナーのことを"同居人"と表記されているのを見て、それが今までで一番しっくりきた。それならオープンな場でも言いやすいし、余計な詮索もされずに済むだろう。だから私も一緒に住み始めたらそう呼ぼうと決めている。)
結局、彼の親も私たちの気持ちや考えを隅々まで理解してくれて、一緒に住むことに決まった。そして最近ここだと思える家を見つけられて、ようやく来月には入居する予定だ。
引っ越したら、私はそこをアトリエにしようと思っている。絵の具や沢山の布、キャンバス、紙などを用意していつでも制作に没頭できる環境を作りたい。そして本棚を置いて、お気に入りの本で埋め尽くしたい。私のための、私だけのスペース。そんなことを考えると堪らなくワクワクする。そしてきっと彼も彼の理想のアトリエを作るのだと思う。一つ屋根の下ふたつのアトリエを構える、と考えるとなんだか嬉しい。
それぞれ部屋にこもって作業したり、リビングで一緒に休憩したり、お互いの世界での出来事を共有しあったり、そうして彼となら個々の時間を大切にしつつ暮らしを共にしていけるだろうなと思える。一見ネガティブな表現に思えるけど、一緒にいて害がない人、邪魔だと思わない人というのはすごく貴重な存在だと思う。私も彼にとってそうであるといいな。
この決断に至るまでいろんな事があったし、やめた方がいいんじゃないかなってお互い悩んだこともあったけど、その中で彼という人について今まで以上に知れたし、自分の将来的なビジョンや価値観について深掘りすることもできたし、結果的にすごく良い時間だった。これから先も色々あるだろうけど、その都度ふたりで話し合って解決していけるだろうなという信頼感を持てているからきっと大丈夫なのだと思う。
ルームシェア、今から楽しみだな。