4回生になって思うこと
ついに、大学生活最後の年になってしまった。
1回生の時は病気だった母のことで頭がいっぱいで、2回生の時に母が亡くなって大学どころではなくなってしまって、初めの2年間はかなり休みがちだった。制作も思うようにできなかったし、毎日情緒が不安定で、休学や退学を何度も考えた。
そんな時期を乗り越えてようやく元気になった3回生はコロナの影響でリモート授業ばかりだった。それはそれで、おうち時間を充実させたりおやつを食べながら授業を受けたりと楽しんでいたのだけど、大学生活としてみると不完全燃焼感がずっとあった。
私は中高と不登校気味で、みんなと同じことができない自分のズレにずっと悩まされてきた。特別なんて嫌だし変わってるなんて思われたくなくて、いつも普通とは何かを考えてそうあろうと努めてきた。だけどそもそも学校に通えないし、毎日めまぐるしく情緒が揺れる。突然消えてしまいたくなる。そんな繊細で傷つきやすい自分の弱さを自分が一番受け入れられなかった。
だけど芸大に入って、作品をつくるうちに生きることが楽しくなってきた。今まで言葉にできなかった思いが作品を通してなら伝えられる、甘えだと責めていた周りとのズレが個性になる、芸術は私にとってまさしく新たな言語だった。
そんな素敵な環境にいるにもかかわらず、私はまた中々学校に通えなかった。noteでも何度も書いているけれど、母が病気になって余命を宣告されてから、どうしても生活の中心は母になった。私自身の心配よりも母の心配の方が大きくて、大学にいる間も 夜ごはん何なら食べやすいかな とか、明日病院だから付き添ってあげなきゃな とか、夜取り乱していたけど今は大丈夫になったかな とか、そんなことで頭がいっぱいだった。
いついなくなるか分からないなんて、本当は皆そうなのだけどそれを実際に宣告されると心が追い詰められる。ぶつけてしまった些細な一言がお別れの言葉になるかもしれないし、私の行動一つで母をよりしんどくさせてしまうかもしれないと思うと気が抜けなかった。だけど私はそれほど強くないし大人じゃないから、何度も母に弱音をこぼしてしまったのだけれど。
母が亡くなってからはまた違う辛さがあった。どんな時でも不安でいつか誰かに殺されるんじゃないか、また大切な誰かがいなくなるんじゃないかという恐れと隣り合わせだった。もう母はいなくなったのだという変わりようのない事実をなかなか受け止められない自分に腹が立ったりもした。
そんなこんなで、私の大学生活2年間はさんざんだった。きっと先生たちにも不真面目な訳あり生徒だと思われていたと思う。
そうして4回生になった今年から、私は大きく変われたと思う。最後の一年ということで、とにかく悔いのない時間を過ごしたかった。こんなにも救われた芸大という場所を目一杯楽しんで、初めの2年間を取り戻せるくらい自分と制作と向き合いたいと思った。
ひょっとしたらもう遅いのかもしれないし、実際1回生の頃からずっと頑張ってきた子達には叶わないとも思う。だけど、最後の一年だけでも頑張りを残せたら、それは今後の私の大きな支えになるとも思った。
21歳の誕生日に、自分の夢を明確に書き出してみた。今まで叶わないことが怖くて夢を語るなんて出来なかったけど、今では語ることができたらきっと叶えられるのだと信じている。
そんな私の4回生で叶えたい夢は3つ。
初めての個展を開くこと、自分のアトリエと呼べる場所を作ること、卒業制作で悔いのないものを作ること。
この3つを叶えるために4回生になると同時に動き始め、ついに今週初めての個展を開くことができた。
個展を開く前は、お客さんが来てくれなかったらどうしようとか作品ができなかったらどうしようみたいな緊張と不安でいっぱいだったけど、まずはやってみないことには失敗にすらならないじゃんと、思い切って企画書を持ってギャラリーを訪れた。そうして開催が決まってからはひたすら作品と向き合い続けた。
結果的に、今回の個展の内容すべてに満足いった訳ではなくてもっとこうすればよかったと思う部分はいくつもある。特にメインとなる針金の作品は、自分の思うものを作りきれなかったという後悔が残ってしまった。
だけど、それでも気持ちは達成感でいっぱいですっきりとしている。これは始まりに過ぎないと思っているから、また今後の課題として捉えて活かそうという気持ちだ。
こうしてひとつ夢を叶えてみて思うのが、悔いのないものを残さなければいけないというプレッシャーが今まで挑戦の足枷になっていたのだということ。これが私の作りたいものだ、と自信を持って見せられるものしか怖くて出せなかったから。だけど、そんなこと出来るわけがない。日々新しいものに触れ、刺激を受け、アップデートしていくのだから、"最高"は日々更新されて当然だろうと思う。そう気づいてから、夢に挑戦できるようになった。
夢を叶えるのに遅いも早いもないし、今がどんなに酷くても理想の自分には今日からだって近づける。
それがこの4年間で学んだこと。
何にもできない自分だった頃、夢を実現していく人や憧れの人を 自分とは違う と思うことで自分を保っていた。この人は挑戦できる人なんだ、もともと才能に恵まれていて努力できる人なんだ、だからそもそも私なんかとは持っているものが違うのだし仕方ない、そんな風に思っていた。だけど、実際に勇気をだして憧れの人たちに何人も会ってみて気づいた。
挑戦できる側の人とできない側の人がいるんじゃなくて、怖くても未熟でもそれを受け入れて挑戦しようという勇気を持てるかどうかの違いなのだ。憧れの人だって皆、同じような悩みや恐れは抱えている。だけどそういう人たちは皆、そんな誰しもが抱えるものと徹底的に向き合っている。どうしたら不安をなくしていけるか、この悩みを解決するにはどうするのがいいか、こういう時はどんな人と関わるべきか、そんな風に細かな作戦や計画を地道に練っている。
自分の夢を見つけ、そこと今の自分との乖離を冷静に分析して、それを実現するための小さなステップを着実に踏んだ人こそが、いわゆる成功者なのだと今は思う。
私はまだ、夢を叶え切れてもいないし、憧れの自分にもなれていない。だけどそこに近づくための努力はできるようになったと思う。自分がこうして自分のために大学に通って、制作をして、人生を楽しめていることが心から嬉しい。
夢を叶えることは簡単じゃないし、理想には挫折と後悔がつきものだ。だけど自分の夢や理想を叶えるために真剣になれた人にしか得られない人生はきっとある。そしてそれは誰でもいつでも手にすることができるのだと思う。
もうすぐ前期がおわり、4回生も残すところあと半分になる。個展が終わったら集大成である卒業制作に向けて、また気持ちを切り替えていきたいな。