小鬼のはなし
小鬼は おふろ が だいすき で
こごえる さむい日
たらいに はった お湯のなかに
おこった かおで つかって かえった
小鬼は ちいさい祠(ほこら) に すんでいる
林の 道 に たっていて
夏は すずしい
冬は たくさん 雪が ふっても
祠の まわり は つもらない
ふしぎな ところ
キレのある 冷気のなかに おどる 小鬼を みかけた
くらい空に むかって うでを つきあげ
足を おおきく ふみならし
いつもの怒った顔を いっそう厳しく こわばらせて 体をゆらす
すると こんどは じめん に かお を よせ
ちいさく かがんで
足は とめない
まるで じめん が つぶやく 声を
ききとろうとする 医者かのようすで 耳をよせ
しずかに おどる
冷えきった空から あられが おちてきた
パラ パラ
パラ パラ パラ
じめん に あたる あられの 音が
いちめんに なり ひろがっていく
ひろがっていく
小鬼は ふれよ ふれよ と
いっそう はげしく 踊っていたのに
いつのまにか あられは 雪に
きづけば 小鬼 も もう いない
さっきまで 足をふみ うでを まわしていた ばしょに
音もなく 雪は おち
みるみる つもってゆく
つもってゆく
小鬼は きょうも
お湯 を はった たらい の なかで
からだを あたためている
まっかな色の おこった かおで
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