
AIって神様?
もう何年と会っていなかった、今は東京に暮らしている小学生の頃からの友人へ電話をかけた時の話です。
どういう経緯だったのか忘れてしまいましたが、たまたま彼が研究しているというAIの話になりました。彼はいつものようにヒートアップしながら長々と喋ってくれましたね。これから書くのはその概略です。彼は申します。
「人間は完璧な生き物じゃないから、色んな問題を起こす。政治家は腐敗するし、経済だって利益追求ばかりを目指すから上手く回らない。国民もバラマキが好きだから、一向に国の借金が無くならない。外交も下手だから戦争だって起こる。理想を求めて仕事を探すから見つからないし、職に就いても途中で辞める。人間はとにかく思慮が足らない。
だけど完成されたAIなら完璧な発想に基づいて、あらゆる問題に対処してくれる。仕事だって決めてくれるし、理想的な政策を作ってくれるから、政治家はそれを追認するだけで良い。AIはお金を欲しがらないから、汚職なんて起きない。外交だってAI同士で適切にやってくれるから、戦争だって起きない。資産運用なんてお手の物。投資家に損なんてさせない。経済もうまく回せる。結局、人間は欲があるから何をやっても上手くいかない。AIはお金を要求しないでしょ?だから何をやるにも腐敗なんてしない」
そう言う彼に私は尋ねました。
「じゃあ、貧富の差はどうなるの?」
彼はこう答えました。
「今のままだよ。金持ちは金持ちのまま。貧乏人は貧乏人のままさ」
私は尋ねます。
「それで人は納得出来るの?」
彼はこう答えます。
「出来る出来ないじゃないさ。それを受け入れるしかないんだ。最初は抵抗があるかもしれないけど、次第に人間はそれを悪いことだと思わなくなるさ。だって完璧なAIが決めるんだから、従うしかないでしょ。いずれは感情だって数値化出来るようになるんだから、AIが煩わしい他人とのコミュニケーションも淀みなくやってくれる。「自分探し」をしている人にだって、明確な答えを用意してくれるんだ」
そして最後に彼はこう言いました。
「だから俺たちは今、神を創っているんだぜ」
私はその言葉を聞いた瞬間、全身に脱力感を覚えました。あの不思議な感覚は今でもハッキリと覚えています。私は何故か、彼との連絡を取っていません。元々会えば論議にヒートアップして、口論になることもあります。だからと言って、私は彼のことが嫌いではありません。小学生の頃は、一緒にクラシック音楽を楽しんだ仲だし、面白いヤツだからとにかく一緒によく遊びました。
電話番号はそのままにしてあるし、何をしているのか気にもなります。そう言えば、先日偶然とある人気番組で、彼が出ているのを見つけました。その映像は録画して何度も見ました。ちょっと太ったかな?でも相変わらずの調子で、50を超えてもお互い変わらないものだと、感慨ひとしおでした。
あれから何年経ったのだろう。もう覚えていないくらい昔の話です。
最後にAI開発に携わっておられる方々にお尋ねします。
AIって本当に神様なんですか?
おしまい