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【映画鑑賞メモ】安部公房の映画を見に行った in渋谷 後半

こちらの記事の続きです。

この記事では、
4.燃え尽きた地図
5.壁あつき部屋
の感想について書きます。

4.燃え尽きた地図

改めて映像作品を見て…この作品は筋を追うような見方をしていてはいけないなということを再認識。
主人公が興信所の職員で失踪した男の後を追う…というところから物語が始まるにもかかわらず、依頼者の女性/聞き込み先の喫茶店の店員/依頼者の弟を名乗る人物/失踪した男の同僚 が、全く聞かれたことに答えない。
どいつもこいつも自分の言いたいことだけを言う姿勢を変えないため話がまったく噛み合わず、"いったい自分は何を見せられているんだ?"という気分になる。

それで主人公は真面目に調査をしているかと思えば、調査をはぐらかされた挙げ句ヤクザの抗争に巻き込まれてみたり、と思ったら依頼者の弟の葬式に出ることになったり、失踪者の部下が勧めたヌードモデルの女優を訪ねてみたりで脱線ばかりしているようにも見えてくる。
どちらかというと、その一つ一つの会話の妙を刹那的に楽しむことを繰り返すという見方のほうがこの作品を楽しむことができる。

他に気になった点… 原作では終盤に依頼者の女性を思いっきりくすぐるというシーンがあったはずで、それがどのように描かれるのかは興味津々だったが、映画では割愛されていた。一方、映画では主人公が電話ボックスで依頼者の女性を呼び出しておきながらその場を離れて依頼者の女性がやってくるのを彼女に気取られないように覗くというシーンがあったが、これは原作で見た記憶がない。
このへんの描写もあらすじを追う姿勢で見ていると
"失踪者を追うことに絶望した主人公は、依頼者を電話で呼び出し、これをすっぽかした"みたいな言い方になってしまい、何を言っているかわからないものになってしまう。なんとも不条理な話の運びである。

もう一点言っておきたいこと。
キャストが自分の知っている世代と比べ10年以上上であり、特に俳優としての勝新太郎の演技を見たのが初めてで、それが大変面白かったと言える。自分の勝新太郎のイメージはコカインか何かで逮捕されたと思ったらいつの間にか亡くなっていた人というイメージしかなかったのだが、若き日の彼は顔立ちの整った男前と言ってよく、初見ながら好感がもてた。興信所の職員役が似合っていたかは謎。
また、失踪者の部下として渥美清が出演しており、これまた大変面白かった。彼については"寅さん"以外の印象が0だったため、普通のサラリーマン役で出てきていることも面白かったし、主人公(勝新太郎)に電話で自殺を仄めかす長台詞も面白かった。
こと俳優達が織りなす謎の会話のやりとりを楽しむという点においては、新たな発見が多々あり、大満足であった。


5.壁あつき部屋

巣鴨拘置所に服役中のBC級戦犯の手記「壁あつき部屋」を基に映画化されたものとのこと。なので、先程の"燃え尽きた地図"とは異なり、物語の筋を追うという見方をしていても問題はないタイプの作品。

…なのだけど、その分かなり普通の内容だった。
戦時中にやっていたことを拡大解釈されたり、上官命令でやった悪事を上官がバックレたためにBC級戦犯扱いされた人たちがその不条理を我慢しながら出所後の生活という希望を求め日々服役していたというような内容である。
その中の一人(上官がバックレた人)の母が亡くなったために一時帰宅を許され、元上官を殺そうとも思っていたが最終的には軽蔑と共に彼を赦し、次の日の正午までにまた刑務所に戻ってくるといった筋はあった。

こちらの作品では全く知っている役者さんが居なかった。
少し調べてみたが、彼らが映画に出ている時期(=メディアに出ている時期)と自分が生まれてからの期間が全然重複していないようだった。

以上で感想終わりです。
古い作品ばかりで色々感覚がおかしくなる部分もあったが、基本的にとても楽しい時間を過ごせました。
他にも何点か未視聴の作品があることがわかったので、それはまた別の手段で視聴したい。





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