「あいつと私」1961年日活
先日、1969年「三島由紀夫vs東大全共闘」の1969年の日本の文化的断絶についてお話をしたら、友人のマシマさんに勧められて、1961年石原裕次郎主演の日活映画「あいつと私」を観ました。
いやぁ、非常に後味のよい、爽快な青春映画といいましょうか、とても面白かったので、是非オススメです!!
日本映画全盛期の、日活映画!
思えば、1960年代、70年代好きと自負しながら、60年代初期の映画は、黒澤監督の大作や純文学芸術映画か、やくざ映画、クレイジーキャッツ等のコメディしか観ていなかったので、非常に反省。。。
しかも、石原裕次郎さんといえば、ボクにとって、どちらかと言えば「太陽にほえろ」「西部警察」以降の、刑事ドラマの「石原軍団」のイメージが強く、決して嫌いではないのですが、「2枚目」「イケメン」「カッコつけ」な、誤った石原裕次郎イメージが出来上がっておりました。。。
しかも、この映画は、1961年、高度経済成長期初めの日本がイケイケの時代。しかも、石原裕次郎演じる主人公は、「裕福な大学生」という設定なのですから、ボクとしては、マッッチョイズムを前面に押し出したストーリーなのではないか、と、大いに警戒しながら、観始めたわけですが・・・
いやぁ、日本映画も、こういう潮流もあったのですね!!
本当にステキな映画でした!!
1.日本映画にありがちな、「影」「悲壮感」が無い!
「あいつはあいつオレはオレ!」という、谷川俊太郎さん作詞による軽妙な歌で始まるオープニングテーマ曲。
浮世離れした美容師(スタイリスト?)の親から何不自由なく買ってもらえて、カッコイイオープンカーや、ベンツを乗り回す、裕福な大学生という石原裕次郎の設定。
総天然色カラーで描かれる、女子大学生のファッション。
まずはスタイリッシュでファッショナブルで明るい設定をちりばめて、人目を惹きながら、観る人の高揚感を誘う!
そして、「恋愛」「男女」を描きながらも、マッチョイムズ、ヒーローイズム、逆にフェミニズムにも偏らず、古くささを感じさせない。
小西康陽さんのPIZZICATOFIVEにもつながる系譜ではないかと思うわけです。
2.軽快なセリフ回しで、登場人物の感情や気持ちが明快に言語化されている。
日本文化、芸術映画にありがちな、「表情から察して」とか、「無言の間」とか、果ては、「監督の思い入れによる象徴的なシーンで、観客に裏を読ませる」みたいな、回りくどさが無い!
石原裕次郎演じる主人公と、芦川いづみ演じるヒロインが、ケンカしてその後・・・(ネタバレ回避)・・・なことがあった翌朝、
「あなたのような失礼な人と友達でいいか考えてみたのよ!その結果、今度だけは何事も無かったことにして、友達でいることにしたわ!!」
「光栄です!」
というセリフで、一気に和解!
もちろん、そのセリフに無理はなく、観客はその爽快な関係性に納得させられてしまう!
そして、そこまで軽妙なセリフのやり取りをしておきながら、最後の最後、ラストシーンだけは、石原裕次郎が、芦川いづみの口をふさぎ、セリフを言わせない!!
印象深いラストに、心を持っていかれちゃいます!!!
3.漏れなく詰め込んでいる
時代背景、人物設定に漏れが無い!!
浮世離れした裕福な大学生、石原裕次郎に対して、芦川いづみの家庭は、旧態然とした、三世代大家族。
しかし、観客は、その家族の中に、娘を心配する母親の心境に感情移入しながら、娘を信頼する父親の態度に安心感も覚える。機転が利く吉永小百合演ずる妹の名演も見どころ!!
時代背景に対するエクスキューズも漏れが無い。
1960年に始まった安保闘争を、巧妙にストーリーに絡ませながらも、悲壮感や説教臭さを漂わせるこは全く無い。
東北旅行の最中に出会う労働者とのアクシデントで、日本社会の現実をさりげなく盛り込むところも秀逸。
4.芦川いづみが、無茶苦茶かわいい!!
和製オードリー!!オードリーファンなボクも納得!!
いやぁ、芦川いづみさんステキ!!
強気な人物設定、主人公は石原裕次郎ながら、ナレーションは芦川いづみ演じるヒロインの一人称で語られる。
石坂洋次郎さんの原作は読んでいませんが、勝手な想像ながら、もしボクが原作を先に読んでも、そのイメージをそのまま映画化したのではないかと思います。(→カポーティの「ティファニーで朝食を」の原作と映画のオードリーのイメージがぴったりだったことによる)
クライマックスシーン!
雨は降るでしょう!!嵐は来るでしょう!!
芦川いづみさんが濡れるでしょう!!
そうでしょうとも!!監督!!
よくわかっておりますなぁ!!
それでいい!!それで十分です!!!!
(すいません、文章が高揚してしまいました・・・)
対する、石原裕次郎さんって、よく見ると完璧な二枚目でもないんですね!!
うーん、それが名優たる所以なのか!?
そして、現代のセクシャリズムの表現って、あまりに直接的で、あまりにも生々しいものになってしまった気がするのは、ボクの偏った理想像なのでしょうか??
ということで、今日はこの辺でおやすみなさい!!