うどん、のち、コーヒー。
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※サロン参加につき、コーヒーエッセイ第2弾。
>第1弾:恋愛は、コーヒーの薫り。
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うどん県(香川県)にも、とうとう、セブン-イレブンが進出した。
ちょうど出産のため里帰りしていた私は、ようやく故郷がセブン-イレブンに認められたという嬉しさ半分、見馴れたコンビニがセブン-イレブンに変わっていた寂しさ半分、といったところ。
さて。
出産予定日はどんどん近付くが、一向に陣痛の気配なし。
我が子が誕生する瞬間に立ち会おうと、張り切って滞在していた夫も、次第に「俺はいつまでここにいればいいんだ……」と焦りを募らせていた。
そんななか、お医者様より告げられた、
「朝夕、30分歩くこと。」
私の実家に滞在して、すっかり暇をもて余していた夫を連れ出し、2人でお散歩するのが日課になった。
どうせ歩くならと向かったのが、ちょうど良い距離にある、うどん屋。
付近のサラリーマンが集まる平日も、うどん巡りの観光客が押し寄せる週末も、ランチタイムは長蛇の列。
開店直後を狙うことで、待ち時間を無くし、毎日、同じ時間帯に歩く習慣をつくった。
お気に入りのうどん屋で1杯、時にはもう1軒ハシゴする。
炎天下を歩いた後は、やっぱり「ひやかけ」といきたいが、出汁が美味しいセルフの店では、自分で麺を温めて「あつかけ」を食べたいし、天ぷらの有名な店では、揚げたての天ぷらが外せない。
「この暑いなか、ぬくいもん(温かいもの)食べて……」と思いつつ、定番の味に満足し店を出る。
その足で夫が必ず向かうのは、この町に馴染みかけたセブン-イレブンだった。
冷凍ケースに立ち寄り、アイスでも買うのかと思ったら、取り出すのは氷の詰まったカップ。
それだけを手にレジを済ませ、専用のマシンでコーヒーを淹れ始めるのだ。
まさに、大手コンビニが、店頭で淹れるコーヒーにしのぎを削り始めた頃。
100円から購入できる手軽さと、値段の割に、挽きたて・淹れたてを提供する品質の良さ。
コーヒー好きの夫は、早々にチェックしており、うどん屋の近くにセブン-イレブンができたのをこれ幸いと、お散歩コースに加えたわけだ。
一方私は、妊娠中でカフェインを控えていたこともあって、コンビニカフェはまだ利用したことがなかったし、ましてや、コーヒーの味を覚えたのは上京後である。
うどんの後にコーヒーを味わうなど、まったく考えたことが無かった。
再び炎天下。
淹れたてのアイスコーヒーを手に、帰路につく。
お酒とちがい、カフェインは妊娠中も少量なら良しとしていたので、私も分けてもらった。
散歩とうどんで火照った体を、爽やかな苦みが抜けていく。
カップを渡されたときに感じる、ガラッとした氷の感触と、手を濡らす大粒の水滴。
褐色の液体に沈み、氷に光を錯乱される、真夏の太陽。
そのどれもが、愛おしい。
たしかに、うどん屋からのコンビニカフェは、アリだと思った。
次々にランチ客が押し寄せるうどん屋は、コーヒーを味わうような落ち着く場所ではないし、うどんとコーヒーを同時に味わうのは、やはり合わない気がする。
かといって、喫茶店に入るほどでもない。
移動中に、イリコ出汁の芳ばしさが舌を離れ、コシのあるうどんがいい具合にお腹に収まる。
うどん屋からのコンビニカフェは、そんな絶妙な距離感を持っていた。
代わる代わるアイスコーヒーを飲みながら、おしゃべりもはずむ。
180円のコーヒーで、帰り道はとびきり贅沢なものになった。
あれから時は流れ、無事に出産を終えた私は、関東での生活に戻る。
里帰り出産で思い出すのは、うどん屋まで通った炎天下の散歩と、その後のアイスコーヒー。
今度は3人で、歩けるかなぁ。
うどん、のち、コーヒー、を目指して。
~おまけ:作品に関連するうどん屋~
実際に通ったうどん屋をご紹介します。
がっつりうどん屋巡りというより、歩いて気軽に行ける店です。
本場で「うどん、のち、コーヒー。」を試したい方は是非!
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