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泊まれる演劇 感想
本noteは「泊まれる演劇~Moonlight Academy~」のネタバレを大いに含みます。ご了承ください。
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プロローグ
ドアの向こうから突然鳴り響くけたたましい警告音。
緊急地震速報や空襲警報みたいな、人間の生存本能を強制的に煽る、極めて不愉快な音。
この音は、確か、聞き覚えがある。
分厚いドアを隔ててもなお直接脳内に杭打ってくるサイレンに、参加者みな息が止まったように硬直する。
数秒前まで朗々と授業をしていたまんが先輩が血相を変えて
「これって…3階に"怪物"が出たときのサイレンだよね!?」と叫んだ。
そうだ、そうだった。サイレンの音は階ごとに分けられてるんだった。
今聞こえるのは3階用のサイレン。
私たちが授業を受けている教室は学校の最上階。
そうだ、自分たちがいるのは3階だった。
心臓の鼓動ががどく、どく、と急激に加速する。
突如差し迫った脅威に参加者は皆動揺を隠せなくなる。
この扉の外に、"怪物"が……?
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泊まれる演劇
みなさんは、「イマ―シブシアター」という単語を聞いたことがあるだろうか。まさに私が先日参加してきたイベントのことで、「泊まれる演劇」と銘打って興行していた。
「演劇」というと、鑑賞者は座席に座り、演者がステージの上で決められたパフォーマンスをするのが一般的なスタイルだろう。しかし、イマ―シブシアターは違う。私たちは舞台を歩き、探し、偶発的に物語を目撃する。演者は時に観劇者に紛れ、境界線を溶かしながら、私たちをそっと物語の終着点に導く。
「泊まれる演劇(イマ―シブシアターとう単語は「体験型演劇作品」のことを指すらしいので、必ずしも宿泊は伴わないらしい)」と銘打っているからには、演劇の中で宿泊もできる。
イメージとしては、水曜日のダウンタウンの名探偵津田になれるって感じですね!
今回は私があの夜経験した、儚くて美しい、不思議な体験についてお話していきます。
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このnoteは布教兼文章力UPのための自己研鑽自己満noteです。
あわよくば一緒に泊まれる演劇シリーズに参加してくれる人が欲しいなという気持ちで頑張って書きます。
結構長いので、興味が無かったらブラウザバックしてください。
私があの日、目撃したもの
hotel she osaka の入口を開けると、変な仮装をした人たちが「「ようこそ~~~!」」と陽気に待ち構えていた。
髪がオレンジ色のギャルに、制服を着た女の子と、その他諸々。なんだか文化祭みたいだな、と思いながら誘導されるままソファに座った。
「アンテナ」と名乗る女性がはつらつと「この度はMoonlit Academy 創立100周年セレモニーにようこそ!」と言う。
あ、そうだった。今日はそういう"テイ"だった。と思い出す。
私たちは魔法学校の創立セレモニーの参加者という設定なんだった。
アンテナさんはその後事務的に注意事項を説明し、この後「寮分け検査」があることを参加者に告げた。寮分けを行うカウンターを訪ねると、水泳ゴーグルをぴっちりかけた女の子がおもむろに「全力でギャルポーズをお願いします!★」と言い出した。
ここで恥ずかしがっていては先に進めない、と両手をピンと伸ばし、渾身のギャルピースを披露すると、「じゃあ貴方は、赤月(レッドムーン)寮です!!!」と告げられた。な、なにが起こったんだ……。
自室で軽く腹ごしらえをし、指定の時間にロビーに向かうと「まんが」と名乗る青年に「これもうもらった~?」と授業の時間割表を手渡された。男性にしては少し長い髪をひとつにまとめ、大きなダブルクリップで留めた、眉毛のない青年。
これまた奇天烈なキャラだなあと感心していると
「何の授業受けるか決まった?」と尋ねられた。
若干圧倒されながら「国語とか…」と答えると
「ええ、国語!?ゼッタイやめた方がいいよ!だってあの、β先生だよ!」と大仰に叫んでいた。
そんなこんなでキャラと雑談をしたり、ぼっち参戦の人少なくて寂しくなったりしていると、ついにセレモニーの開始がアナウンスされた。
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つつがなく執り行われたセレモニーの終わりかけ、制服を着た3人の男女が現れた。その内の女生徒「ライカ」によると、「UFOキャッチャー研究部の部員を募集している」らしい。ライカちゃん、めっちゃくっちゃ可愛いなあ~…とうっとりしているも束の間、透き通るように美しい少女の声が聞こえた。位置的に私の真後ろあたり。
え、参加者の人喋ってる?今演劇中だからダメじゃね?てか滑舌と声良すぎね?
振り返ってみると、参加者として一緒に座っていた女の子が、起立し始めた。
あれ、この人、キャストさん???
思考停止しかけた頭がぐるぐる動き始めたのも束の間、少女はライカに手を引かれ、私たちの目前に導かれた。
この瞬間、私の中にあった明確な「境界線」がふっと消え去った気がした。そうであった。私たちは観賞者ではない。セレモニーのゲストなのだ。
セレモニーが完全に終わると、模擬授業が3つ受講できることが告げられた。私たち赤月寮は最初が必修授業なのでロビーに残った。
必修授業は、校長先生の真面目な講義。学校創設の歴史を第一次世界大戦から振り返り、「ぶるうむ」という魔法について学んだ。ロビーには私たちゲストと共に先ほどの男女三人もいて、私の隣には「星」という青年が座っていた。細かい部分は割愛するが、彼の高慢な性格が原因で講義中校長に厳しく諫められるシーンがあった。
ぼすっ、と彼が力なくソファに座ると、私の座っている部分も1センチほど沈んだ。校長は何もなかったように授業を進めるが、私の隣から星が悔しそうに鼻をすする音や、憤りに肩を震わせる様子がひしひしと伝わってくるから、話に全く集中できない。すごい、ほんとにすごい……。
星くんに若干の心残りを感じながら、残り2つの授業を履修する。
3時限目にまんが先輩の授業を受けている途中で、冒頭のシーンに出くわす。
教師陣に導かれて全生徒・ゲストがロビーに召集された。
3時限目にロビーで必修を受けていたライカたちによると、琥珀(3人の内の1人の少女)が夢遊歌(呪いの歌)を聴いたせいで眠りから覚めなくなってしまったという。新月寮に寮分けされたゲストは一連のくだりを目撃したらしく、どこか神妙な面持ちであった。いいなあ、私も見たかった…。
過去一ブチぎれた表情の校長先生から「全員、自室に戻って朝まで出てこないように!」ときつく制されたが、教師陣の姿が見えなくなったも束の間、ライカが「みんなで琥珀を助けよう」と呼びかけた。
本当にこれで演劇終わりだったらどうしようと焦っていた私たちはライカの要望を快諾した。
その後、先生たちにばれないように各部屋の探索をするように告げられた。ホテルには全部で40~50室くらい部屋があり、その内10室ほどが生徒、教師の自室として探索が許可された(ちなみに私の部屋は、「冷凍庫で死んだ教師の亡霊がいる」部屋の隣だった)。
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ここからが泊まれる演劇の醍醐味。ゲストはそれぞれの部屋で物語に遭遇し、情報を得、それぞれの方法で"怪物"の正体を暴いていく。
そこには私だけが目撃した物語もあったろうし、惜しくも見逃した物語もある。全てを目撃することは絶対に不可能なのである。
無事全ての情報収集が終わると、遂に衝撃の事実が明かされた。
なんと"怪物"の正体は、冒頭のセレモニーで私の後ろに座っていた少女だったのだ。彼女の悲しい過去と張り裂けそうな胸の内が明かされ、最後の展開には涙するゲストも何人か見受けられた。私も半分くらい泣いた。
以上が大体のストーリーです。3時間半の超大作なのでめちゃめちゃ割愛してますが。
ここまで書いて、泊まれる演劇のもう一つの楽しみをお気づきになったでしょうか。そう、終演後にゲスト同士の体験共有ができることです。
"怪物"である少女「吹」の一件が落着したのち、「セレモニーの再開」ということで、ゲスト同士の体験共有タイムが設けられました。
(「物語は終わりです」と言わないところがまた、良い!)
私はぼっち参戦だったのですが、赤月寮に同じくぼっち参戦の女性がおり、運よく仲よくなれまして、その方と興奮も冷めやらぬままお互いの体験を語り合いました。本当は新月寮の方とも話したかったのですが、勇気が出ず…!
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おわりに
個人的な泊まれる演劇の良さは、同じ物語に対してひとりひとり全く違う見方ができるところだと思います。見る角度や、どこまで見るのかという深さ、そもそも見る見ないの選択までできる。あの時、必修授業で星がひどく消沈している姿は恐らく私にしか感じ取れなかっただろうし、吹ちゃんの深い悲しみと憤りはあのバルコニーにいた数人にしか共感できなかったでしょう。
一般的な演劇では余程のマニアでない限り、同じ部分に共感し、同じ部分に泣き、普遍的な物語解釈に収斂していくことが多いのではないでしょうか。しかし泊まれる演劇は、自らが選択した人物や境遇を追求し、それにより結末の解釈やどこに深く共感するかといった部分が参加者によって全く異なってきます。ここが面白い。
これは「鑑賞体験」という概念を一から覆すような衝撃で、味わった人間にしかわからない感覚だと思います。(ちなみに、どのシーンを選んでも大体皆に理解できるような脚本づくりがされているので安心してほしいです)
だから、他の方のレポを拝見して知った「星くんコインランドリー慟哭タイム」を見られなかったのが悔やまれて仕方ない…!どなたか遭遇した方、事細かに当時の状況を教えてください…!
だめだ。完全に酔っぱらって要領を得なくなってきた。
ここらへんで終わりにしたいと思います。
だれか一緒に行ってください。よろしくお願いいたします。
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