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鴨川

カレーうどんが食べたくなって、河原町三条の「みや古」に行った。

昭和の雰囲気漂う店内で、学校の給食を彷彿とさせるカレーうどんを黙々とすする。店のテレビには巨人対広島戦が流れている。
常連っぽいおっちゃんが、「今日巨人負けたらまだ阪神優勝する可能性あるやんな?」と店主に話しかけていた。


ファミリーマートでサッポロビールを買った。
外国人のコンビニアルバイトがむすっとした表情で雑然と袋に詰めた。

外国人労働者は日本にいっぱいいるけど、その中でコンビニアルバイトは日本語能力が必要なので、エリート外国人なのだというネットニュースを思い出した。


鴨川の周りは大規模な繁華街なため、土曜日の熱に浮かされた若者たちがぞろぞろと集う。三条の橋の脇にあるスロープから、鴨川へ降りていくと、自然と喧騒が遠のいていった。

喧騒と立ち代わりに聞こえてくるのは
「ざぁーーー」
という水流の音。

これまで都会のど真ん中にいたのに、急に秘境に立ち入ったかのような不思議な感覚に包まれる。
さっきまで人を避けて歩くことに精一杯で気づかなかったのか、この場所がやはり特別なのか、途端に晩夏の涼しい風が吹き始めた。

上流から吹く涼しい風は、意味もなく巻いた私の髪を梳いて下流に流れていく。視界の端には煌々と光る川床のお店が連なっている。酔っぱらったサラリーマンの歌唱と水流の音が交わって、混ざって、消えて行った。


鴨川には、多種多様な人が集まる。
観光する外国人、等間隔に並ぶカップル、散歩中の犬、生活道路として使う人、飲み会をする大学生。
全ての人がこの「鴨川」という空間の構成要素となっていた。

10人ほどの男女の集団で、輪になって恋愛話をしている大学生を見て、
私も京都で大学生活を送っていたら、と考える。

名古屋での大学生活もそこそこ楽しかったけど、京都の大学生はなんとなく、すごく満喫しているように見える。通勤中も大学生を見かけると、純粋に羨ましい気持ちになる。
私も京都の大学生だったら、木屋町で飲んで、終電を逃して、鴨川でオールしたりしたのかな。

神様、来世は京都の大学生に生まれ変わりたいです。


プシュ、と缶のプルタブを開けると、白い泡がじわじわと吹きこぼれた。
親指を濡らしながら開けて、啜るようにビールを飲んだ。
コンビニの冷蔵庫で冷やされた黄金色の炭酸が、口内から喉へと流れ込んでくる。

鴨川で飲むビールは格別に美味しいだろうと思ったけど、別に普通のサッポロビールだった。


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