朝が来る前に
珍しく風邪で寝込んだ夜
がらんどうの心に咳をひとつ
玩具もゲームも古いものばかり
棄てられないから放ってある
月明かりが薄く差した夜
閉め切った部屋に心ひとつ
憂いはただただ、嵩むばかり
優しい人にはなれやしない
不意に痛む胸、今じゃもう慣れっこさ
そっと手を添える、君は此処に居る
朝が来る前に消えてしまいたいんだ
そう言って今迄幾つの夜を越えただろう
目蓋の裏側に込み上げた何かが
零れそうなくらい、強く叫んでいる
引き出しに深く仕舞った手紙
散らばった言葉、約束ひとつ
文具も雑誌も古いものばかり
棄てられないから放ってある
珍しく風邪で寝込んだ夜
忙しない日々に、溜息ひとつ
零れた心が、失せぬように
拾って集めて僕は歌う
何時まで歌うだろう、誰に歌うだろう
俯いたあの日の、君に歌うよ
朝が来る前に迎えに行くから
その時、君は僕の事を僕と分かるだろうか
大事だったことは大事だったままで
何度生まれ変わっても、ちゃんと覚えてるから
忘れたっていいよ、忘れはしないから
あの日の痛みひとつすら、ずっと愛おしいまま
心の裏側に、目を凝らして欲しい
君を信じた君が、いま腕を伸ばすよ
熱が引く朝に薄日が差す
開いた目蓋に詩をひとつ
ずっと側にいたよ、側にいるよ
棄てなくていいから、どうか失くさないで
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