見出し画像

坂元裕二脚本「Woman」を今さら見た

文学系学部生なら、一度は坂元裕二作品を脚本のお手本として見てみなさいと言われたことがあると思う。私の場合は、授業では「東京ラブストーリー」を見た。そして3回生の時に「花束みたいな恋をした」が公開されて、その後に「怪物」が公開されて、そのどちらも驚愕しながら見たのを覚えている。

皆さんは坂元裕二作品の中にお気に入りはありますか?
私はなんといっても「最高の離婚」。小学生の時に見て、今思うと大人のジョークなんかは理解できないところも多かったんだろうけれど、もう本当に面白くて、録画して何度も見た。特に、当時の真木よう子さんがとても好きになって、髪型を真似するほどだった。あの時は坂元裕二さんの存在も知らなかったけど、振り返れば私が最初に著者の作品に出会った瞬間だった。

そのあとは学部生になってサブスクに入るようになると、「それでも生きていく」「カルテット」「大豆田とわこ子と三人の元夫」を見た。今wiki pediaを見てみると、著者の作品は本当にたくさんある。

そして、満を持しての「Woman」。満島ひかりさんの大きな目と少し神経質そうな細い鼻筋から放たれる多彩な表情には「それでも生きていく」で感動した記憶が鮮明だ。そんな彼女の主演作だから期待は高まっていた。

主人公の小春はシングルマザーで、単数であり孤立していて、経済的にも独立している。個であり、孤だ。けれども話が進むにつれて、母親や妹、仕事仲間、息子の友達の母親などと関わっていく。彼女を中心にしたゆるやかな連帯が出来始めたところで、娘の絵日記のモノローグとともに物語は幕をとじる。

母子を中心としたゆるやかな連帯が丁寧に描かれているにも関わらず、それでも小春が一人で抱えている思い、早逝した夫が一人で抱えていた思い、小春の母が一人で抱えていた思いが際立つのはなぜだろう。
私には本作品があくまで孤・個を注視しようとしているからだと思えてならない。

それぞれの思いや思考は個別にあって、それをそのまま知ることはたとえ家族でも不可能であること。そうだとしても、個が重なり合うところで人は連帯できるということを考えたい。他人の孤を想像するときにだけ生まれるやさしい連帯を信じたい。 

だからこその「Woman」なんではないだろうか。

この作品にはたくさんの女性が出てくる。その多くが母親である女性だ。なのにタイトルは「Woman」である。全話を見終わった後には、なぜ「Women」ではなく「Woman」なのか、と考えていた。

その仮説として、登場する女性一人ひとりの生活についての話をしているから、個別という意味での単数系。あるいは、どうしたって独りだからという意味での「Woman」。

孤立しても孤独でも、生きていこうという意志を持ち続ける熱さがとても心に残った。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集