コートカード
The Court Cards
人物カードとも呼ばれるコートカードですが、デーカンと小アルカナの頁でも触れたように、これらのカードが持つ「属性」を一つ一つ紐解いていくと、そこにはまるで実際の「人間」のような複雑な性質が姿を現します。
4つのコートカードのうち、【Knights】【Queens】【Princes】のカード12枚は、それぞれが10度ずつ30度セグメントの性質を持ち合わせます。つまり、これらのカードは小アルカナ3枚のカードと非常に深く関連しているということです。
それぞれのスート(Wands ∙ Cups ∙ Swords ∙ Disks)が属するサインの第1・第2デーカンを持ち、さらには「影の部分」を請け負う要素として、前のサインの第3デーカンを拾います。例えば、【Queen of Cups】は Cups が属する蟹座の第1デーカン( 2 of Cups)と第2デーカン( 3 of Cups)そして、蟹座のひとつ前のサインである双子座の第3デーカン(10 of Swords)の要素を内に秘めていることになります。
こうして見てみると、コートカードは特定のサイン(星座)を「完全に」支配することを許されてはいません。むしろ複数のサインやエレメントに跨ることによって、彼らは世界と世界を「繋ぐ」役割を任されているかのようです。
コートカードが「落ち着く場所」は、クロウリーによれば自然界の質(3つのグナ)のバランスをとるように選ばれ、配置されているのだそうです。この自然界の「質」とは、前述した3要素・12星座の「質」とはまた異なるもので、私たちが生きるこの物質世界の「構成要素」のことであり、万物の「性質」のことを示しています。
ラジャス・タマス・サットヴァと呼ばれるこれら3つのグナ(質)は、【Knights】【Queens】【Princes】の12枚のカードの上で表現されます。そして彼らが持ち合わせる全ての「要素」を請け負い、Malukuth での「具現化・物質化」を担う存在・受け皿こそが【Princesses】− Prakriti なのだと考えます。このことは、それぞれの【Princesses】の下(90度)に【Knights】【Queens】【Princes】が含まれる配置からも窺い知ることができるかと思います。
根本的には活動的な( Cardinal| 🜂 Fiery|Rajastic|🜍 Sulphur 硫黄)性質を持つ【Knights】は、柔軟宮(Mutable:射手座・魚座・双子座・乙女座)の最初の20度(8・9)を割り当てられ、不動宮(Fixed:獅子座・蠍座・水瓶座・牡牛座)の最後の10度(7)を拾います。
根本的には固定的な( Fixed|🜄 Watery 🜃 Earthy|Tamasic|🜔 Salt 塩)性質を持つ【Queens】は、活動宮(Cardinal:牡羊座・蟹座・天秤座・山羊座)の最初の20度(2・3)を割り当てられ、柔軟宮(Mutable:射手座・魚座・双子座・乙女座)の最後の10度(10)を拾います。
根本的には柔軟的な( Mutable|🜁 Airy|Sattvic|☿ Mercury 水銀)性質を持つ【Princes】は、不動宮(Fixed:獅子座・蠍座・水瓶座・牡牛座)の最初の20度(5・6)を割り当てられ、活動宮(Cardinal:牡羊座・蟹座・天秤座・山羊座)の最後の10度(4)を拾います。
そして【Princesses】は、【Aces】と共にケルビム(Fixed signs:獅子座・蠍座・水瓶座・牡牛座)の上に位置し、黄道帯の4分の1、つまり北極を中心とした天界の4分の1の「領域」を支配します。
このことは【Knights】【Queens】【Princes】(それぞれ黄道十二宮の30度に及ぶ)が1年の「時間」を支配するのに対して、【Princesses】は「空間」を支配する役割を担っていることを意味します。例えば 【Princess of Disks】はケルビム(聖なる獣)の 🜃 地の星座である牡牛座を中心とする90区分上(牡羊座・牡牛座・双子座が占める空間)に位置し、その場所において 魔術師の4つの力 のひとつである TACERE 「沈黙すること・具現の力」を割り当てられていることになります。
4人のケルビムは「天の柱」を守る者たちです。
天は4本の柱で支えられており、それぞれの柱のたもとにこの4人のケルブたちが一人ずつ守護者としてついていました。そして、その最も安定した柱の在り処こそが 不動宮(Fixed Signs・Kerubic Signs)だったのでしょう。ケルブたちは 🜂 火・🜄 水・🜁 風・🜃 地のエレメントの最もパワフルでバランスのとれた姿をしており、それぞれに4つの知恵を有しているのだそうです。それが魔術師の4つの力 である 🜂 VELLE 「意志」🜄 AUDERE 「勇気」🜁 SCIRE 「知識」🜃 TACERE「沈黙」です。ゆえに、この空間に配置されるプリンセスたちも🜂 火・🜄 水・🜁 風・🜃 地のケルブたちのエレメントの影響を自然と受ける形となり、この4つの力をそれぞれにひとつずつ与えられているのです。
スフィンクスがそれぞれのエレメントとバランスよく共生する「完全体」いわば The Magus(魔術師)であるように、Malkuth にいるプリンセスたちもそれぞれに割り当てられたこの魔法の力を行使しようとします。しかしその力を使うためには、彼女たちは自身が【He Final】であることに目覚め、【Vau】であるプリンスたちと結合する必要があります。Vau と繋がること、つまりこの魔法の力を使うことで獲得される第5の力・IRE「行くこと」によって、 Malkuth と Kether の間には双方の世界を繋ぐ梯子が現れ、4世界の次のサイクルへと進んで「行く」ことができるのではないか、と想像するのです。
またデーカン「10から2への移行」は、10 Malukuth と 1 Kether がプリンセスたちを通して繋がっていることを私たちに思い出させてくれます。Kether にはあらゆる「可能性」を秘めた未だ見ぬものの息吹があり、方向性を持たない蠢きがあります。
発生初期の「胚」のように、種の外へと導いていく何処からともなくもたらされる「意志」の力。
そんな「動きの中の動き」とでもいうような根源的なもの・ルーツこそが The Aces であり、ある日それらは世界の始まりである「点」としてポツンと置かれます。その「点」は 1Kether から 2 Chokmah → 3 Binah へと進むにつれて他のコートカードやエレメント・スートを取り込みながらじわじわと広がりながら円(世界)となり、そして10 Malkuth に至って世界はプリンセスたちの手によって鮮やかに色付け(具現化)されていくのです。
この置かれた「点」が 🜂 火の力の根源ならば、そこは Atziluth 界となって Wands の世界が始まる。🜄 水の力の根源ならば Beri’ah 界となり Cups の世界が広がっていく。🜁 風の力の根源ならば Yetzirah 界におけるSwords の世界、そして 🜃 地の力の根源ならば Assiah 界 となって Disks の世界が始まり、それぞれが階層的に繋がってカバラの4つの世界を創り出している。
解釈がズレているかもしれませんが、現段階でのカバラの創造の4世界に関する私のイメージはこのような感じです。
そして、この4世界における最終目標というのが神聖なる名前 YHVH の顕現、つまり Yod(父)He(母)Vau(息子)He(娘)の再会、ということなのでしょう。
ひとつの世界から次の世界へと進むサイクルの更新の「鍵」を握っている者、それは間違いなくMalkuth にいる【He Final】つまりプリンセスであり、He - Malkuth が Vau - Tiphareth の太陽 ⨀ と重なる(プリンセスがプリンスと結合する)とき、 Kether の上に映し出された The Aces ⨀ の「点」はもぞもぞと蠢きだすのかもしれません(YHVHについてはトート・タロットの構造 をご参照ください)
プリンセスがある意味で The Aces ⨀ に息吹を与える存在であるならば、この関係性を前述の自然界の質(3 つのグナ)に当てはめてみると、プラクリティ(物質原理・観られる者)がプリンセスであり、プルシャ(精神原理・真我・観る者)が The Aces である、と考えることもできるのではないか、と思わずにはいられません。
【Princesses】によって小さく振動を始める The Aces ⨀ の「点」は、エレメントやスートを巻き込みながら 1 Chokmah・2 Binah・6 Tiphareth にいる【Knights】(Yod)・【Queens】(He Primal)・【Princes】(Vau) の統合(YHVH)へと向かい、それは Malkuth の【Princesses】の手によって完成される。
それは The Aces の「点」⨀ つまりクロウリーのいうところの「真の意志 –True Will」が 【Princesses】によって具現化するまで連綿と繰り返される物語、と言えるのかもしれません。