調和の樹【欅】を冠したアイドルグループの遺した名曲4選
欅坂46
もう、過去のものなのか。
私の中では永遠に流れ続ける彼女たちの叫び。
あの頃、確かに彼女達は存在した。
でも、彼女達はもう居ない。何処にも。あの頃の彼女達は何処にも。
「櫻坂46」として生まれ変わって歩みを進める、その彼女達が「欅坂46」で訴えたかったものは何なのか?
衝撃のデビュー作「サイレントマジョリティー」
笑わないアイドルグループが誕生した。世の中の認識は、当時はそんなものだったと思う。
アイドルとは、笑顔で踊って歌う女の子。そんな常識を彼女達はあっさり覆した。革命である。そして歌うのは反戦歌。世間への反抗だ。
サイレントマジョリティーとは、「物言わぬ大衆」
この「サイレントマジョリティー」という言葉は、過去にアメリカのニクソン大統領の演説で用いられた「グレート・サイレント・マジョリティ」に由来すると思われる。この演説の後、リチャード・ニクソン氏の支持率は上がり、圧勝して第37代アメリカ合衆国大統領の座につくことになる。
どこかの国の大統領が
言っていた(曲解して)
声を上げない者たちは
賛成していると…
「NO!」を突き付けることの大切さ。本当に「YES」でいいのか。
誰にでも自由に自分の意見を言うべきだと。
誰かの後
ついて行けば
傷つかないけど
その群れが総意だと
ひとまとめにされる
最近これを酷く実感したことがある。
「NO!」という必要はあったのか。
群れに紛れて傷つかなけば良かった?
今となっては答えも出ないが、私はこの「サイレントマジョリティー」と言う曲に救われた。
私は私らしく生きる自由がある。
2016年4月、世に放たれた「欅坂46のデビュー曲」を、私は信じて生きている。傷ついても、傷つけられても。私は「支配」されたくない。
響く「不協和音」
順調に知名度を上げて行った彼女達が、次に盛大に世間を驚愕させたのが、4thシングル「不協和音」だろう。私の中では、この曲は「サイレントマジョリティー」に続くストーリーを紡げる楽曲だ。
「不協和音」の歌詞が訴えるのは、「自らの意志を貫く」、ということと思う。【調和(協和音)】対【不調和(不協和音)】の図式である。
調和もいい。でもそれは偽りの平和だ。
確実にこの世に流れるのは「不協和音」なのである。
偽りの「調和」はいつか崩壊する。
不協和音を 僕は恐れたりしない
嫌われたって 僕には僕の正義があるんだ
殴ればいいさ
一度妥協したら死んだも同然
支配したいなら
僕を倒してから行けよ!
調和ばかりがまかり通る世界は違和感だらけ。
そう、嫌われたっていい、好んで支配されることは望まないなと思う。
「僕は嫌だ」
それをはっきり意思表示するべき、「サイレントマジョリティー」でひたすら彼女達が訴えた「物言わぬ大衆」への反抗である。
殴りたければ殴ればいい。
厄介者「黒い羊」
この曲にも「サイレントマジョリティー」に続くストーリーを紡ぐことができる。
「サイレンとマジョリティー(物言わぬ大衆)」とは、「白い羊」なのである。
自らの真実を捨て白い羊のふりをする者よ
黒い羊を見つけ指を差して笑うのか?
それなら僕はいつだって
それでも僕はいつだって
ここで悪目立ちしてよう
真実を知って、知らないふりなんてできない。
私は「白い羊」のふりはできないな・・・。
「白い羊」のふりをして、「偽りの調和」の集合体に紛れ込むことは不可能だな・・・。何も「物も言わず」に?
最後に望んだ調和「誰がその鐘を鳴らすのか?」
欅坂46のラストシングル(配信シングル)
「誰がこの鐘を鳴らすのか?」
彼女達が訴えてきた「自らの意志、自らの意見」
それを一度心に仕舞う冷静さを最後に歌う。
瞳を閉じて 聴いてごらんよ
自分の言いたいことを
声高に言い合ってるだけだ
際限のない自己主張は
ただのノイズでしかない
一度だけでいいから
一斉に口をつぐんで
みんなで黙ってみよう
「鐘」とはなんだろう?
象徴されるのは、「平和」や「調和」などが一番に思い浮かぶ。
そしてタイトルにもある、「誰がその鐘を鳴らすのか?」
鐘を鳴らしてもいいのか?
誰が鳴らすのか?自分では?
自らは鳴らされるのを待つ「傍観者」=「サイレントマジョリティー(物言わぬ大衆)」でいいのか?
世に流れるのは不協和音ばかり。
でもその澄んだ「鐘の音」で、調和を望めるなら、誰が鳴らしてくれるのか?自分が鳴らすことはできるか?
荒んだ心が叫ぶ。本当に望んでいるのは、ただ自分の言いたい事を声高に言い合うことではない。
一度一斉に口をつぐんで、心を通わせることができたら・・・。
「欅」が象徴するもの
欅(ケヤキ)
意味は「崇高・華麗・調和」
そう、「調和」を意味する。
彼女達が本当に望んだのは?
私が本当に望むのは?
わかり合いたい・・・。
きっと人と人とがわかり合える世界、その世界の片隅にある巨大な鐘を鳴らすことができるのは、この世には誰もいない。
いるとしたら「神様」と言う、抽象的なものかもしれない。
だから、争いなんて望まないんだよ・・・。
その綱を奪い合ってたら
今と何も変わらないじゃないか
「欅」の名を冠することが必然だった。
血みどろになりながら、涙を流しながら、きっと彼女達「欅坂46」は、調和で美しい世界を願っていたのではないか。
もちろん、メンバー1人1人のストーリーは、それぞれ違う。
卒業したメンバー、脱退したメンバー、そして新たに加わったメンバー。
それぞれの持つストーリーは言葉にできないほどだ。
ただ「欅坂46」は、そんなことをずっと願ったグループだったのだろう・・・と思わずにはいられない。