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「俺、異世界の通貨になりました。」第十ニ話。
第12話:潜む罠
グリーンヒルズの町が視界に入ったとき、リオたち三人の間にほっとした空気が流れた。町は活気に満ち、行き交う人々の声や荷車の音が賑やかに響いていた。高い木々に囲まれたその町は、自然と共存しているような雰囲気を持ち、商人たちのカラフルなテントが広場を彩っていた。
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『これがグリーンヒルズか…。悪くない場所だな。だけど、こんなに賑やかだと追っ手が紛れ込むにはもってこいだ。気を抜くなよ、リオ。』
リオはポケットに手を入れて銅貨を握りしめた。その感触に少し安心しながら、アリスとカイに目を向ける。「ここがグリーンヒルズなんだね。なんだかワクワクする!」
「油断しないことね。追っ手がここにいないとは限らないわ。」アリスは辺りを見回しながら慎重に答えた。
「まあまあ、そんなに警戒するなって。こんなに人が多ければ、さすがに目立たないだろう。」カイは余裕の笑みを浮かべながら、周囲の商人たちを興味深そうに眺めていた。
『いや、カイ。その油断が命取りだ。俺たちが狙われている以上、安全な場所なんてどこにもないんだぞ。』
三人は広場を歩きながら情報を集めることにした。グリーンヒルズは旅人や商人が多く集まるため、噂話や有用な情報が飛び交う場所でもあった。
「宿はどこがいいかな?」リオが地図を見ながら呟くと、アリスが即座に答えた。「まずは情報を集めましょう。宿より先に、黒いフードの男たちについて何か手がかりが欲しいわ。」
「おい、あの店を見てみろよ。」カイが指差した先には、小さな道具屋があった。外には怪しげな薬や魔法の巻物が並んでいる。「ああいうところに妙な噂話が転がってそうだ。」
『妙な噂どころか、罠が仕掛けられている可能性もある。慎重になれよ…。』
三人が道具屋に近づくと、薄暗い店内から中年の店主が顔を出した。鋭い目をしたその男は、リオたちを一瞥するとにやりと笑った。「おやおや、珍しいお客様だ。旅の途中かな?」
「ええ、ちょっと情報を探してるんです。」アリスが冷静に答えた。「黒いフードの男たちを見かけたことはありませんか?」
店主は少し考え込むような素振りを見せたあと、小声で答えた。「あんたたち、そんな物騒な話をするもんじゃないよ。けど…そうだな、最近、夜になると町外れの倉庫で妙な人影を見かけるって噂はある。」
「町外れの倉庫?」リオが聞き返すと、店主は口元に不気味な笑みを浮かべた。「ああ。近寄らないほうが身のためだ。」
『こいつ、嘘をついているな。目が泳いでる…。何か裏があるぞ。リオ、ここは慎重に行け。』
リオたちは一旦店を出て、広場の端で顔を突き合わせた。「どうする?倉庫に行ってみる?」リオが尋ねると、カイは腕を組んで考え込んだ。
「行くしかないだろうな。もし追っ手がそこにいるなら、先手を打てるかもしれない。」
「でも、罠の可能性もあるわ。」アリスは険しい表情で答えた。「慎重に進むべきよ。」
リオはポケットの中で銅貨を握りしめた。その冷たい金属の感触が、彼に覚悟を促すように思えた。
『リオ、俺もお前に力を貸す。罠だろうが何だろうが、俺たちは進むしかない。』
そして、日が沈み始める頃、リオたちは町外れの倉庫へと足を運んだ。古びた木製の建物は静まり返り、不気味な雰囲気を漂わせていた。周囲に人影はなく、風が窓を揺らす音だけが聞こえる。
「ここか…。」カイが低く呟いた。「中に入るぞ。」
アリスが魔法の準備をしながら頷き、リオも緊張した面持ちで続いた。扉を開けた瞬間、薄暗い倉庫の奥から複数の人影が現れた。黒いフードの男たちだった。
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「待ち伏せか!」カイが即座に構えたナイフを抜く。アリスも魔法を放つ準備を整え、リオはその後ろで震えながら銅貨を握りしめた。
『来たな…!リオ、覚悟を決めろ。お前が勇気を出すときだ。』
そのとき、リオの手の中で銅貨が輝きを増した。黒いフードの男たちが驚きの声を上げ、一瞬動きを止めたのをリオは見逃さなかった。「いまだ!攻撃して!」
アリスが強力な火球を放ち、カイが素早い動きで敵の一人を無力化する。その間、銅貨の光は敵の注意を引きつけ、彼らの動きを鈍らせた。
『よし、これで少しは時間を稼げる。あとはお前たち次第だ!』
戦いの後、リオたちは倉庫に隠されていた黒いフードの男たちの文書を発見した。その内容には、さらなる陰謀の気配が記されていた。
〜次回予告〜
黒いフードの男たちの真の目的が徐々に明らかに…。しかし、その陰謀はリオたちをさらなる危険へと導く――。次回、「陰謀の影」をお楽しみに!