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「俺、異世界の通貨になりました。」第九話。

第9話:決意の光

黒いフードの男たちがリオの家に迫る中、家の中は緊迫した空気に包まれていた。アリスが持ち出した錬金術の道具とリオの必死の行動で、反撃の準備が進んでいく。だが、主人公――光る銅貨は、事態を冷静に見つめていた。彼には、通貨としての能力でこの危機を乗り越える可能性が見えていたのだ。

「彼らが扉を破るまで時間がないわ。」アリスが額の汗を拭いながら言う。「でも、この薬を正しく使えば、奴らを怯ませることができる。」

リオは頷きながら、アリスが調合した瓶を手に取った。中で液体が虹色に輝き、不思議な力を感じさせる。「これで本当に奴らを止められるのか?」

「信じて。これはただの薬じゃないわ。」アリスは自信を持って答える。

その時、主人公がリオのポケットの中でわずかに輝きを放った。リオはそれに気づき、銅貨を取り出して手のひらに載せた。「お前も何か伝えたいのか?」

もちろん、主人公は声を発することはできない。だが、リオはその輝きに何かしらの意志を感じ取った。

「…分かったよ。お前も一緒に戦おう。」

扉が激しく揺れたかと思うと、ついに黒いフードの男たちが押し入ってきた。

「やはりここだな。探していたものは。」リーダー格の男が低い声で言う。その視線はアリスに向けられ、彼女はその鋭い目をまっすぐ見返した。

「私は何も持っていないわ。帰って。」アリスが毅然と言い放つが、男たちは嘲笑を浮かべるだけだった。「持っているかどうかは関係ない。お前が生きている限り、逃がすわけにはいかない。」

リオは震える手で薬瓶を握りしめながら、主人公をポケットに戻した。だが、主人公の輝きは以前よりも強まっている。「あいつらを倒さなきゃ…母さんも村も危ない。」

「今だ!」アリスが叫ぶと同時に、リオは薬瓶を床に叩きつけた。瓶が割れると同時に、部屋中に眩い光と共に白い煙が立ち込める。黒いフードの男たちは突然の閃光に目を押さえ、咳き込んだ。

「これは…なんだ!」リーダー格の男が声を荒げるが、動きが鈍っている。

「リオ、今のうちに!」アリスが叫び、リオは母親の手を取り裏口へと急いだ。だが、主人公はその状況を見ながらも、リオのポケットの中で静かに輝き続けている。

裏口から逃げ出したリオたちだったが、外にはさらに多くの黒いフードの男たちが待ち構えていた。絶体絶命かと思われたその時、主人公がポケットから飛び出し、宙に浮かび上がった。

「えっ…!?」リオが驚きの声を上げる。アリスもその光景に目を見開いた。

主人公は強い光を放ちながら、黒いフードの男たちの目を引きつけていた。その光はまるで彼らの心を掴むかのように、圧倒的な存在感を放つ。そして、その場にいた男たちの動きが一瞬止まった。

「この銅貨…一体何なんだ…!」リーダー格の男がつぶやく。

その隙に、アリスが再び手を動かし、もう一つの薬瓶を取り出して男たちに向かって投げつけた。今度は濃い青い煙が広がり、男たちはその場で動けなくなった。

「これで…ひとまずは安全ね。」アリスが肩で息をしながら言う。リオは主人公を手に取り、じっとその光を見つめた。「お前、本当に不思議なやつだな…。ありがとう。」

一方で、主人公の心の中では別の思いが渦巻いていた。

「今の光…あれは俺の力だったのか?もしそうなら、どうして相手の動きを止められたんだ…?」

彼の中に生まれた疑問は、やがて「魅了」というスキルの覚醒へと繋がっていく。だが、この時点ではまだ、それが何であるのか知る術はなかった。

〜次回予告〜
主人公の光の力に助けられたリオたち。しかし、黒いフードの男たちの目的はまだ謎に包まれている。リオとアリスは村を離れ、新たな仲間と出会う旅に出ることに――。次回、「旅立ちの決意」をお楽しみに!
            「・・・続く。」

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