見出し画像

「俺、異世界の通貨になりました。」第五話。

第五話:新たな兆し

母親の体調も良くなり、家の中には久々の安堵感が漂っていた。
リオは夕食の準備を手伝いながら、胸のポケットに入れた銅貨の主人公を気にかけていた。

(あの薬屋での出来事、結局なんだったんだろう?あの光も、あの声も、ただの夢じゃないよな。)

リオの手元を見つめながら、主人公は心の中で考え込んでいた。

(あの店主、ただの薬屋じゃない気がする……。それに、俺の力って一体何なんだ?)

〜謎の気配〜

夜、リオが寝静まった頃。
薄暗い部屋の中で主人公は静かに光を放ちながら、外の気配を探っていた。

(リオの母親も元気になったし、これでひと段落……と言いたいところだけど、なんか嫌な感じがするんだよな。)

遠くから、何かがこちらをじっと見つめているような感覚。主人公には「視覚」がないが、その代わりに独特の感覚で周囲を捉えることができた。

(誰だ?何かが俺たちを見ている……?)

一方で、リオは眠りの中で微かに笑みを浮かべていた。母親の元気な姿を見て安心したのだろう。その無邪気な表情を見て、主人公は少しだけ気持ちを和らげた。

(リオにはまだ言えないな。俺の力も不安定だし、今はこいつを守ることに集中しよう。)

〜不穏な訪問者〜

翌朝、村の広場はいつもと変わらず活気に溢れていた。リオも母親に頼まれて市場へ野菜を買いに行く途中だった。

「リオ!」
突然、同じ村の少女――エミリーが駆け寄ってきた。

「エミリー?どうしたの?」
「昨日、変な人が薬屋の店主と話してたのを見たの。黒いフードをかぶった人で、すごく怪しい感じだった!」

リオは驚き、思わずポケットに手を入れて主人公を確認した。エミリーの話を聞きながらも、主人公の表面から微かな振動が伝わってくる。

(やっぱり何かある……。薬屋で俺が光ったことと関係してるのか?)

「ありがとう、エミリー。でも僕には関係ないと思うよ。」
リオは無理やり微笑んで答えたが、その胸中は穏やかではなかった。

〜村に忍び寄る影〜

リオが家に戻ると、母親が真剣な表情で家の前に立っていた。
「リオ、さっき村に来た人たちのこと、聞いた?」

「え、何のこと?」
「黒いフードをかぶった集団が村を歩き回ってるのよ。どうも何かを探しているみたいで……。」

その瞬間、主人公は心の中で叫んだ。
(まさか、俺のことか!?)

母親の話を聞きながら、リオは不安げに主人公を握りしめた。

〜主人公の決意〜

その夜、リオは主人公をじっと見つめた。
「君、ただの銅貨じゃないんだよね?僕にはわかる。だから、ちゃんと教えてくれないかな?」

リオの問いかけに答えられないもどかしさを感じながらも、主人公は心の中で誓った。
(リオ、まだ俺の声は届かないかもしれない。でも、絶対にお前を守る。たとえ俺がただの銅貨でも……いや、ただの銅貨だからこそ、できることがあるはずだ。)

静かな夜が更ける中、村には確実に何かが近づいていた――。

〜次回予告〜
黒いフードの集団の正体は?そして、主人公に秘められた新たな力が明らかに――!
次回、「闇からの来訪者」をお楽しみに!
              「・・・続く」

いいなと思ったら応援しよう!