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「俺、異世界の通貨になりました。」第四話。
第四話:銅貨の決意
店内はまばゆい光に包まれた。
主人公の中心から発せられたその光は、少年の手の中で優しく脈打ちながら、店内の隅々にまで広がっていた。
「な、なんだこれは!」
恰幅のいい店主が目を覆いながら叫ぶ。
少年も思わず目を細めながら、主人公を握りしめる手をさらに強くした。だが、不思議とその光は熱くも冷たくもなく、ただ安心感と温かさを与えるだけだった。
(なんてこった。俺、光ってるじゃないか……!でもこれ、どうやって止めればいいんだ!?)
主人公自身も戸惑いを隠せない。初めて自分の「力」を発揮した瞬間だったが、その力の仕組みも意図もまったく理解できていない。
ただ、少年を守りたいという気持ちが膨らんだ瞬間、自然と光が放たれたのだ。
店主の執念
光が徐々に薄れていくと、店主は目を細めながら主人公を見つめた。
その目には明らかな欲望が宿っていた。
「……やっぱり、ただの銅貨じゃねえな。」
店主はニヤリと笑う。彼の手がゆっくりと少年に伸びる。
「坊主、そいつは危険だ。おじさんが預かっておいてやるよ。」
少年はその言葉に首を振り、主人公をぎゅっと握りしめた。
「いやです!これは僕が持っていなきゃ!」
「おいおい、わからねぇのか?」
店主の声が低くなる。
「あんな光を出すなんて、普通じゃねえ。どんな呪いがかかってるかわかりゃしねえんだぞ?」
少年は迷ったように主人公を見つめた。
(呪いだって?俺が?いやいや、そんなことない……はずだよな?)
主人公は心の中で慌てながらも、少年に伝えたい言葉を思い浮かべる。
(信じてくれ、俺はお前を守りたいだけなんだ!)
だが、主人公は声を発することができない。ただ少年の手の中で静かに光を収めることしかできなかった。
店主との対峙
「とにかく渡せ!」
店主が無理やり少年の手を掴もうとする。
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その瞬間、少年の胸の中で何かがはじけた。
「嫌だ!これはお母さんを助けるために役立ったものだ。僕にはこれが必要なんだ!」
少年の叫び声に、主人公の心が揺れた。
(お前……そんなふうに俺のことを思ってくれるのか。)
少年の決意を受け取ったかのように、主人公の表面がわずかに輝きを取り戻す。
「ちっ、小僧が……!」
店主は悔しそうに唸りながら、手を引っ込めた。
「いいだろう。だがな、忘れるなよ。その銅貨が災いを呼ぶ時が必ず来る。お前が泣きついてきても、助けてやるとは限らねえからな。」
少年は一言も返さず、主人公を握りしめたまま薬屋を後にした。
夕暮れの中、少年は小道を歩いていた。赤く染まる空の下、静かに息を整えながら、手の中の主人公を見つめる。
「君は本当にただの銅貨じゃないよね。でも……どうして僕を助けてくれたの?」
(それは……お前が優しいやつだからだろうな。)
主人公の答えは少年には届かない。それでも、少年がそっと微笑むのを見て、彼は少しだけ安心した。
帰り道、母親が少年を出迎えた。その顔色はすっかり良くなっており、目には感謝の色が浮かんでいる。
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「ありがとう、リオ。薬が効いたわ。」
「ううん、お母さんが元気になってくれて嬉しいよ。」
少年――リオは照れくさそうに笑いながら答えた。そしてそっとポケットに手を入れ、主人公を握りしめた。
(リオか……。いい名前じゃないか。)
主人公は心の中で呟いた。
〜次回予告〜
銅貨としての主人公に隠された力が少しずつ明らかに!?リオとの絆が深まる中、新たな事件の兆しが――!
「・・・続く」