見出し画像

「俺、異世界の通貨になりました。」第十八話。

第18話「迫る危機と決意の一歩」

黒いフードたちとの衝突の余韻が、セリファの聖堂の静寂に染み込むように広がっていた。崩れた瓦礫と漂う緊張の空気の中、リオたちは何とかその場を切り抜けたものの、敵の執拗な追撃に怯まず先を急いでいた。

「アリス、大丈夫か?」リオが隣で息を切らせるアリスを気遣った。

「ええ、ありがとう。でも、あの黒いフードたち……ただの強盗なんかじゃない。本当に、私を狙っていたみたいね。」アリスは自らを責めるように視線を落とした。

「おいおい、そんな顔すんなよ。俺たち仲間だろ?」カイが背中を叩きながら笑ったが、その目は真剣だった。「あいつらが何を企んでるか知らねえけど、俺たちがお前を守る。それでいいだろ?」

『そうだ、俺だって同じ気持ちだ。アリスを守るために、ここにいるんだ。』主人公は心の中で思ったが、言葉を選びながらリオの手の中で輝きを見せた。

アリスは微かに微笑みながらも、どこか不安げだった。「でも、私だけじゃない……彼らの目的は、私と……この子にある。」

「え? 僕?」リオが驚いた表情を見せる。

「違う、リオ。私が言っているのはその手の中の……その銅貨のこと。」アリスはリオの手元を指差した。

「この銅貨が……?」リオが手の中の主人公を見つめると、主人公は微かに輝きながら答えた。

『確かに、あいつらは俺を必要としてるみたいだった。だけど、それは俺の真の力を知っているわけじゃない。ただ、俺が結界を解けるって知ってるだけなんだ。』

「でも、どうしてそんなことがわかったんだ?」リオが不思議そうに尋ねると、アリスは少し思案してから答えた。

「おそらく、彼らは古代の記録を何かしらの形で手に入れたのよ。その中で、リュシエルの宝石を守る封印を解くための手段として、この通貨が必要だと書かれていたのかも。でも……」

「でも?」リオが促すと、アリスは鋭い目で続けた。「彼らは、この銅貨の本当の力には気付いていないわ。」

『確かに、俺の力がどんなものかなんて、あいつらには知られるわけがない。だからこそ、俺たちはこの状況を逆手に取れる。』

カイが拳を握りしめた。「つまり、奴らよりも先に動いてやればいいってことだな! 次の宝石の場所がわかれば、そっちに向かって――」

アリスは静かに首を振った。「それが簡単なら、苦労しないわ。次の宝石の封印の場所はまだ手がかりがない。何か、古代エルフたちが残した記録を探す必要があるわ。」

リオは考え込むように手の中の主人公を見つめた。「でも、その記録を見つけるには、どうすればいいんだ?何か方法があるはずだよな?」

その時、主人公が心の中で強く思った。『俺の力が結界を解く鍵になるなら、記録だって俺に反応するかもしれない。リオ、俺に試させてくれ。』

主人公の輝きがリオの手の中で強くなった。それを見たアリスが目を見開く。「この子が……何かを示そうとしてる?」

「何をするつもりだ、相棒?」リオが戸惑いつつも手を開くと、主人公はわずかに浮かび上がり、その光が周囲を包み込んだ。そして、崩れた瓦礫の中から1冊の古びた本が光に応じるように浮かび上がる。

「これって……!」アリスが目を見張る。

本の表紙には古代エルフの文字が刻まれていた。それを見て、アリスは確信した。「この本には、次の宝石の場所に関する情報が記されているはず!」

「よし、これで先に進めるな!」カイが力強く言うと、リオもうなずいた。「この本が手がかりになるなら、僕たちは必ず次の場所に辿り着ける。」

『やったぞ! これで次のステップに進める。』主人公は心の中で小さくガッツポーズをした。

しかし、同時に一抹の不安がよぎる。黒いフードたちが再び現れることは間違いない。次の戦いでは、さらに過酷な試練が待ち受けているのだろう――。

いいなと思ったら応援しよう!