【 電子ノキロク《使命編》】04「季節の変わり目」|守護電子ルシア・ミーロ・アスキィ
< 風の音 >
ルシア「ーーーーーー寒いぃ」
アスキィ「さみー!」
ミーロ「そうですか」
アスキィ「だと思うけど~…
ミーロちゃん腰のソレ羽織れば?」
ミーロ「それが人間として妥当なのでしたら」
ルシア「あはは 寒くないのならいいとは思うよ.
それにしてもJAPANって暑さと寒さが隣同士で住んでいる世界なんだね.」
ミーロ「当方達は電子ですが、こうして翼を収納する事で契約者以外の人類にも視覚化ができるシステムが組まれています.
ですので、こちらの世界への適合、つまり有翼状態よりも気温を感じるようになっているのではないでしょうか.」
アスキィ「まさかぁ~さっき飛んでたときだってめっちゃ寒かったし.
つかなんで徒歩?
飛んでさっさと【デアイ】さがした方がよくね?」
ルシア「地に足をつけるって楽しくないかい?
こちらの世界に来てはじめての秋だし、周りの景色をじっくり眺めながら過ごそうと思って.」
アスキィ「発想が貴族なんよ.」
ミーロ「感覚的な事はわかりませんが、3次元における季節の仕様には興味があります.
電子世界での季節はあらかじめ日付が決められていましたし、あくまで1年のサイクルを認識しやすくするための視覚的要素でしたので.」
アスキィ「あーあ…オレ達この先どうなるかようわからんけどさっそくアッチが恋しいわ…
とりま家帰ったらオタクくんに服借りよ…」
和菓子店の年輩女性「おはようさん外国のお兄ちゃん.
アンタ等ほんま遠くからでもよぉわかるわ、髪派手やからね.」
ルシア「ごきげんようスズエさん、今日は寒いね.」
スズエ「せやからあわてて蒸かしたで. ひとつ130円や.」
アスキィ「うわうまそっ!おばちゃんそれなに?!」
スズエ「アッホやなぁ、“お姉ちゃん”言うたら安したったのにやで.
『月見まん』いうてな、こん時期の商店街の名物言うたらコレやからよぅおぼえとき.
中にな、クリームの黄色いやつ入れてんねん、「かすたぁど」や.」
アスキィ「まじ!?くっそ美味そう!買う買う!食う!」
ルシア「へぇ、僕もいただこうかな. ミーロもどうだい?」
ミーロ「必要ありません.人類を学ぶ上での必須事項ではありませんので.」
ルシア「そう?」
スズエ「ほい2つ.
じゃあ下ごしらえに店入るわ、おおきに.」
ルシア「またねスズエさん、愛してるよ♡」
アスキィ「『月見まん』あったけー!
まじカイロじゃん ♪ しばらく持ってよ♪
ルシア「はい、ミーロ」
ミーロ「はい、とは?」
ルシア「一口食べなよ. 美味しいと感じるなら半分こでもいいよ.」
ミーロ「いただけません.
その食品は、一部であってもルシアさんの保有する金銭によって取引がなさてたものです.
ですので、こういった取引がなされた場合【管理局】に申請をする必要があります.」
ルシア「じゃあ僕等の秘密にしよう♡ それならいいだろう?」
ミーロ「ふむ.」
ルシア「うん、美味しい!
不思議だなぁ、シュークリームともお饅頭とも違ったお菓子だね.」
アスキィ「見た目『 蒸しパン 』だよなー.
オタクくんよく食ってんの.
なんかこっちの、こういうカタチんとこの地図かいてる蒸しパン.
チーズの味するらしい.」
ルシア「地図…?随分と難解なパンがあるんだね?」
アスキィ「つかマジ【 デアイ 】いなくね?
あいつ等も寒いから引っ込んでん…じゃ……ね…」
ルシア「わぁ?」
アスキィ「いたーーーーーーーーーーー!!!?」
ミーロ「噂をすると出現するのは迷信の類かと思っていましたが.」
ルシア「どうしよう…人の目があるところで翼を解放したら僕達…」
ミーロ「 “突如消える生命体”として『月見まん』以上の知名度を誇る事になりますね.」
ルシア「それにしても…」
【 デアイ 】/沈黙・凝視
ルシア「この子、なんだか大人しくないかい?」
アスキィ「た、たしかに.
いつも目ぇ合ったらヤーさんかよ!?ってくらいぶっ込んでくるもん」
ミーロ「抱えている【デアイ】の性質に何かしらのトリガーがあるのではないでしょうか.」
アスキィ「え?なんて?ミミガー?」
ミーロ「【デアイ】の性質は“歪んだ想い”で出来ています。
ですのでおそらく、この【デアイ】は大人しいというよりも、
“ 想いの中でも特段固執している部分に触れる ”事で活発化する類いのものであると推察されます。
…と、説明すればわかりますかアスキィ.」
アスキィ「お、おう??さんきゅ???」
ルシア「じゃあ僕達は、できるだけこの子を刺激しないように別の場所へ誘導しないといけないわけだよね.
おいでって言ったら来てくれるかな?」
アスキィ「それマズくね? 最悪ルシちゃんの中入ったらオレ等どうするんよ.」
ルシア「中に? ふふ、えっち♡」
アスキィ「えっちじゃすまんけど?!」
ルシア「あれ?」
アスキィ「ん?」
ルシア「ちょっとまってアスキィ.
そのまま右手をゆっくり自分の方に持って行ってくれるかい?」
アスキィ「へっ?なんで?」
ルシア「そうそうそんな感じで.」
ミーロ「ええ、いい具合ですね.」
アスキィ「? ようわからんけどよかったわ???」
ルシア「でね、次はそのまま右手を左の方に持って行って…」
アスキィ「は?」
ルシア「そしたらそのまま歩き出してほしいんだ. 振り返っちゃだめだよ?」
アスキィ「マジでなんで?」
ミーロ「当方達もついていきますので案ずる事なく進んでください.」
アスキィ「お、おう」
ルシア「ふふ♡」
ミーロ「……………………」
ルシア「………………………………」
アスキィ「………………………………………………………………
………………………………………………………………なぁ、どんくらい歩くわけ?
つかさっきの【 デアイ 】どうするん
よ。」
〈 右手から消えた「月見まん」 〉
〈 咀嚼する【デアイ】 〉
アスキィ「お、お、
オレの月見まん!!!!!!!!!!!」
ルシア「ふふ美味しいかい?
そう.
想い残す事がないのなら何よりだよ.」
ミーロ「では殲滅を…」
アスキィ「オレの月見まんんんんんんんん!!!!!!!!!!?」
【 記録終了 】