【リレー脚本】夏祭りシリーズvol.3「そして煙草の匂いは残り続ける。」
著:ぼぶ→大島
【リレー脚本】夏祭りシリーズvol.0の続き。
今年も、この季節がやってきた。
痛くて、辛くて、苦しくて、
でも結局嬉しくなってしまうから。
だから俺は此処へ来る。
青春は、いつでも、終われず、踏み出せない。
〇登場人物
・男
・女
・春川
後編(大島)
●二人が祭りを楽しんでいて、舞台上ではBGMが流れている。
BGM:JITTERIN JINN 「夏祭り」
『君がいた夏は遠い夢の中
空に消えてった打ち上げ花火』
2人は、たこやき、かき氷、金魚すくい、射的、ヨーヨー釣りで遊び、とても楽しそう。
祭りを一通り回った後に、屋台から少し外れた路地で小休憩。
男「いやぁ~久々にこんなはしゃいだかも。」
女「私もです。」
男「てか、あの射的絶対インチキだよな。」
女「確かに。ピクリとも動かなかったですもんね。」
男「悔しいなぁ~。」
女「あ、そうだ。私綿あめ買うの忘れてました。」
男「まだ食べるの?」
女「今日はいいんですよ。」
男「じゃあ俺が買ってこようか。」
女「大丈夫ですよ。すぐ近くに見かけたんでちょろっと今買ってきちゃいます。」
男「そうか。気をつけろよ。」
●女、綿あめを買いに行く。
春川、イリ
男「……」
春川「随分と楽しそうじゃない~。」
男「……」
春川「勘違いしちゃうよ?彼女。」
男「人のデートをのぞき見するなんて、いい趣味してないな。」
春川「私とのデートをほっぽり出しといてその返しは無いんじゃないの~」
男「デートの約束なんてしてないだろ。」
春川「してないね~。」
男「誰とデートしようと俺の勝手だろ?」
春川「うん!すご~く勝手!私が言うのも何なんだけどな!」
男「自覚あるのかよ。」
春川「もちろん!」
男「だから厄介なんだよな。」
春川「ロンピいる?」
●春川、煙草を吸い出す
男「いらない。それに自分で持ってるから。」
春川「やっぱりまだ持ってるんだ~。」
男「歩き煙草はいい加減やめろよ。」
春川「誰にもぶつからないから、だいじょうブイ!」
男「それでもやめろ。」
春川「やめません!」
男「ったく。」
春川「やっぱロンピってさ、ゆったりした時間を楽しむためのタバコだと思うんだよね~。」
男「急に語りだすな。」
春川「ぶーぶー。」
男「分かったから。」
春川「ところでさ~話がクルっと変わるんだけど~。」
男「なんだよ。」
春川「あの子って、おかしいよね。」
男「まぁな。」
春川「即答だね。いなくなった彼氏を五年も待ってるなんてさ。」
男「俺が言えたことじゃないんだけどね。」
春川「その通りですね~全く。」
男「でもいい子だよ。」
春川「……」
男「気遣いも出来るし、優しいし、一途だし。きっと煙草なんて吸わないだろうな。まさに理想の女の子だ。」
春川「確かに理想かもね~。」
男「なんで嬉しそうなんだよ。」
春川「なんでも~。」
男「わっかんねーなー。」
春川「例えばの話していい?」
男「なんだよ。いきなり。」
春川「いいから。例えばね、この先に見える神社に恋の神様がいたとして~」
男「なにそれ。」
春川「最後まで聞いてよ!」
男「分かった。分かった。」
春川「それでね、夏祭りにトラウマを抱えた二人が偶然出会って、その二人がこれからその神様にお願いをしに行くってなったら二人はいったい何を願うと思う?」
男「それはー…相手の願いが叶いますように…とか?」
春川「ほほほ~」
男「なんだよ。恥ずかしいな。」
春川「いや、きっとあの子も同じ事を願うんじゃないかな~と思ってさ~。」
男「なんだよ、それ。」
春川「それからさ!」
男「今度は何?」
春川「神様の使いみたいな人達がね!二人の為に舞ったり踊ったり応援してくれるんだよ。ガンガンガンって!そしたら二人もそれに応えようと一歩ずつ登って行くんだよ!あの階段をさ!」
男「え?何の話?」
春川「ただの~例え話だよ~」
男「例え話ね…」
春川「いいと思う。うん!凄くいい!」
男「だから何がだよ。」
春川「私の例え話どうだった?」
男「え?どうだったって。」
春川「どうだった?」
男「………うーん。よく分からなかったけど…」
春川「うんうん。」
男「一歩くらいは進める気はしたかな。」
春川「そっか~。でも無理だと思うよ。」
男「え?」
春川「無理でしょ~。」
男「無理ってなんだよ。」
春川「その辺は自分が一番分かっていると思うけどな~。」
男「なんだよそれ。」
春川「あ、帰ってきたよ~彼女さん。今度はちゃんとエスコートするんだぞ!全く、一人で綿あめ買に行かせるなんて言語道断だからね!」
男「お、おいっ」
●どこかへ立ち去る春川。
●女、綿あめ持って入り。
女「遅くなってすいませんでした!」
男「あ、なんかこっちもごめんね。一人で買いに行かせちゃって。」
女「大丈夫ですよ!」
男「そっか。よかった。」
女「あ、そうだ!」
男「ん?」
女「さっき並んでる時に思いついたんですけど、どうせなら一緒に神社でお参りしませんか?」
男「あー…いいね。俺も丁度行きたいって思ってたんだよ。」
●神社に向かって歩き出す二人。
春川「独りで夏祭りに来たら、偶然自分と同じ境遇の女の子に出会って、二人でお祭りを回ることになる。そして意気投合。素敵じゃない!凄く運命的!これから恋に発展しない方がおかしいくらいのシチュエーションだと思う!でも…」
女「また、来年も一緒に来たいですね。」
春川「あなたは来年もここへ来る。」
男「そうだな。」
女「少し前に進めそうです。」
春川「忘れられずに、ここへ来る。」
男「そうだな。」
●男、女 ハケ。春川は引き続き板付き
●男 登場、歩きながらタバコを咥え、火をつけようとする。神社の祭りに気づき眺める。
男「もうそんな時期か…」
春川「煙草。」
男「え?」
●声のする方を振り向くと、そこには春川がいる。
春川「その煙草、一本頂戴よ。」
男「……君も…独り?」
――そして煙草の匂いは残り続ける――
END
ぜひ、他の脚本と読み比べてみてください!!
山田:夏祭りシリーズvol.1「歩む」
松田:夏祭りシリーズvol.2「神SUMMER」
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