アンディ・ウォーホールがいた時代
この3月、テート・モダンでアンディ・ウォーホール展が始まった途端に、ロンドンはロックダウンになったのだった。閉鎖される前日、私はひとめウォーホール展を見ておきたくて、テート・モダンのあるサウスバンクに向かった。普段は賑わっているサウスバンク界隈は、パブやカフェを閉めるための準備や掃除が始まっていて、人通りもまばらだった。かたやテート・モダンの中は、私のように駆け込み鑑賞したい人々で賑わっていた。
展示内容はとても充実していた。初期の広告用イラストレーションから年代を追って代表的な作品を展示している中で、これまでよく目にしていた平面作品ーーキャンベルスープの缶やマリリン・モンローなどのイメージをプリントしたシルクスクリーンの数々ーーに加え、映像や立体作品、インスタレーション作品に触れることもできた。
例えば、これらはSilver Cloudsと名付けられた浮かぶオブジェ。ゆっくりと降りてくるオブジェを鑑賞者がトスすれば、再び中空に浮かんでゆく。
ウォーホールの制作場'The Factory'のイメージを再現するかのように、アルミホイルでコーティングされた部屋もあった。
こちらは映像作品と音響でクラブのように誂えられた空間。時代の空気を伝えてくれる...ような気がするが、実際は1960年代後半だからもっともっとローテクだったろう。
最晩年(と言ってもウォーホールは58歳没だから早すぎる死だと言える)の作品である「最後の晩餐」。ダヴィンチの有名な作品を60点複製し、巨大な壁画に仕立てている。ウォーホールはこの作品の最初の展覧会の直後に手術のために入院し、手術の成功にもかかわらず亡くなった。
’A shy gay man who became the hub of New York’s social scene’という公式サイトの一文が端的に表しているように、ウォーホールというアーティストの面白さは、その生い立ちや人となりと、仕事の上での成功と名声、印象的な発言、数々のスキャンダルといった要素が渾然一体となり、彼自身が時代を体現する唯一無二のアイコンとなったことだろう。いわゆる彼の「アート作品」は、彼が遺したもののごく一部にすぎないのではないかと思う。
彼のシンボルであった白髪のカツラも展示されていた。ウォーホールは「自分」というキャラクターに成り切って演じる、コスプレイヤーの草分けであったのかもしれない。
公式サイトによると、テート・モダンは7月27日から再開するとのこと。鑑賞は事前のチケット予約制となるそうです。月猫もまた、久しぶりに訪れることができる日を楽しみにしています。
(開催期間:2020年3月〜現在休止中 会場:TATE MODERN)
※撮影/月夜と猫(イギリスの美術館では基本的に作品撮影が許可されています/ 無断転載はお断りします)
🎵読んでいただいてありがとうございました。よろしければまた次回もどうぞ。