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腸内環境が昆虫の記憶能力に影響を与える!?判明した腸内細菌の新たな働き

腸内環境は我々の健康に大きな影響を与えている」という知見を様々な文献でよく目にするようになってきた。そのため、「良い腸内環境 = 健康の増進」と考えてしまいがちである。

しかしながら最近、ミツバチの腸内細菌がミツバチ自身の脳 (記憶能力) に影響を与えているのではないかという報告がNature communication誌に掲載された。

今回はこの腸内細菌が宿主の記憶能力を向上させることを報告した論文について紹介する。[1]

腸内細菌が記憶力を増強する

ミツバチの記憶と相関関係にあった乳酸菌 (Lactobacillus Firm-5)

筆者たちはまず、ミツバチの記憶能力と関係ありそうな腸内細菌の調査を行った。具体的には捕獲してきたミツバチたちに記憶力テストを行い、成績のよかったミツバチの腸内細菌の調査した。すると、乳酸菌の1種であるLactobacillus Firm-5の量がミツバチの記憶力テストの結果と相関関係にあることが判明したのだ。

乳酸菌 (Lactobacillus Firm-5)の添加による記憶力の増強

続いて、筆者たちはLactobacillus Firm-5を人為的にミツバチに与えたら記憶能力はどのようになるのかを調査した。具体的にはLactobacillus Firm-5をミツバチの餌に混ぜ込んで、ミツバチの腸内環境に強引にLactobacillus Firm-5の存在量を増やしたのだ。その結果、人為的に増やしたミツバチは何もしていないミツバチと比べて統計的に有意に記憶力テストの成績が向上することが判明した。

乳酸菌 (Lactobacillus Firm-5)は腸から血管を介して脳の記憶力へと影響を与える

最後に筆者たちはLactobacillus Firm-5がどのようにミツバチの記憶能力に影響を与えるのか調べるためにLactobacillus Firm-5のどのような代謝を行なっているのかの調査を行った。その結果、Lactobacillus Firm-5はフルクトースやセルロースと呼ばれる糖を用いて、脳に良い影響を与えることがすでに報告されているグリセロリン脂質と呼ばれる物質を作る代謝経路が活発に働いていたり、グリセロリン脂質を血中に活発に放出をする受容体の発現量も上昇させることが判明した。このことからLactobacillus Firm-5はグリセロリン脂質と呼ばれる物質を用いることで腸から血管を介して脳の記憶力へと影響を与えるのではないかということがわかってきた。

腸から血管を介して脳へと影響を与える

まとめ

今回は昆虫の腸内細菌が昆虫自身の記憶能力にも影響を与えることを紹介した。今回は昆虫の事例だが、このような事例は我々のような哺乳類でも判明してきているようだ。

現在はまだ、腸内細菌・腸内環境をコントロールすることで宿主の健康状態を向上させることなどしか行われていないが、今後は腸内細菌・腸内環境をコントロールすることで我々の脳の機能を向上させるような応用事例なども登場するかもしれない。

腸内環境をコントロールして記憶力を上昇させる

参考文献

[1] Li, L. et al. Gut microbiome drives individual memory variation in bumblebees. Nat. Commun. 12, 6588 (2021).

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