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口紅さえ引けば大人の女になれると思ってた。

少女はいつから女になるのって誰かに聞いた。
その人は、愛する人が出来ればいつしか女になるのって言っていた。
恋をすれば女の子は綺麗になって、愛を知れば女になると言うその人は確かに綺麗な大人の女だった。

愛されるとはどういうことって友達に聞いた。
とても大人びた綺麗な子で、歳上に愛される子だった。
キスとセックスを知れば愛されることが分かるよとその子は言った。
それを快感と感じることが女になることなのだとわたしは知った。


モテるあの子に、どうしたら選ばれるのって尋ねたら守ってあげたいと思わせることだよって言われた。
その子に寂しいと嬉しいを言われると心が揺れる。涙と笑顔が魅力的な女の子だった。


いい女とは上手に男をたてながら、操ることが出来る人だと教えられた。
上手に頼って上手に褒めて、そして裏でしっかり支えていくことができる女。
昔の女はそうだった。料理も裁縫も着付けもお花も整理整頓も、何でも完璧なおばあちゃんは今でもずっと女のわたしの憧れで、そして支えることが女のつとめだよとわたしに料理も裁縫も教えてくれた。

化粧をして口紅を引けば、鏡の向こうにはひとりの女が映る。
伸ばした髪でふわっとつくったポニーテールで、スカートを履けば女の子だと言われる。
髪も化粧も纏う服も自由自在で、その身体さえも粘土みたいにいくらだって作り変えられる。

翻弄するようで翻弄されてるみたいで、可愛いと可愛らしいのちょっとした言葉の差に敏感で。
それが女だというのなら、きっとそれはずっと解けない方程式みたいで。

いい女ってなんだと思うって誰かがわたしに尋ねる。
もしも片手にお酒を持ってたら、それは優しい嘘が上手な女だと笑いながら答える。
どんな嘘が優しいかなんて分かりもしない。
褒めて慰めて持ち上げて。頷いてどんなことも優しく肯定してあげるそんな嘘。

でももしも愛したい人を前にしたわたしがわたしに尋ねるのなら、相手が欲しいものをあげなくて、誰の言葉も間に受けず、媚びない女だというだろう。
相手が欲しいものなんてあげないで、でも相手にとって不可欠なものをあげる天邪鬼。
誰かから受け取った言葉じゃなくて自分が口にした言葉で自分がつくられると知ってる褒められ下手で。
誰にも媚びることなく、ほんのたまに出る心からの「好き」を輝かせる世渡り上手じゃない女。

そんな女がいい女で、わたしはそんな女になりたいのよってキレイゴトを真剣に教えてあげる。

あ、もう一つだけ。
ほかの誰にも見せない顔を持っておくこと。
ほかの誰にも崩さない理性を纏っておくこと。

そして、そんなキレイゴトがちゃんと崩れるその人の前できっと女になる。
でしょ?

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