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186「詩」影踏み

年老いた今
僅かばかりの収入のために働いている
その収入で細々と生きている

レジに立ち
理屈に合わない事で客に怒鳴られた日
泣きたい気持ちを抑えて家路につく

月明かりが色のない道に
長い自分の影を落としている
踏もうとして足を伸ばすと
伸ばした分
影が前に伸びて踏めない

影踏みの遊びを最後にしたのは
いつだったろうか
走るのが遅いわたしはいつも
いつも鬼だった

人影のない真っ直ぐに続く道の上に
長く伸びたわたしの影は
誰かに踏まれることなく
前へ前へわたしの歩調に合わせて進む
もうわたしが鬼になることもない

満天の星たちが
それを黙って見ている

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