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61「詩」波打ち際

よせる波かえっていく波
波打ち際で記憶が洗われている

「永遠とはね」
子どもの頃教会の神父さまが
聖書のお勉強で仰った
「1匹のハエがいるとします
毎日毎日地球をひと舐めします
舐められた地球は少しずつ減っていく
そして最後にはなにも無くなる
無くなった後の時間
それが永遠です」

波にひと舐めされ
記憶のどこかが欠けていくのだろうか 
波打ち際に打ち上げられる記憶もあるのに
金属製の記憶が錆びて
夏休みの宿題のように
フェンスに絡まっている
楽しかった一瞬の記憶が砂つぶになる
なにが楽しかったなんて思い出せないのに
飛び跳ねたくなるような気持ちだけが
砂つぶになっていく

記憶は洗われるたびに
錆びついたフェンスが
懐かしい原子だった時代に帰っていく
これからどんな形になるのか
考えもしなかった時代に

性質だけの塊として
ただそこにある時代が
親しみをこめて手招きしている

夏休みももう終わりだろう
子どもたちが
この夏初めて知った新しい気持ちを
花束のように束ねて
いわし雲めがけ
おもいきり放った

※横浜高島屋で開催された草月展に
出展された恩師いちかわれいこう先生の作品を拝見して書いてみました。

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