野良猫さんが子猫を連れてやって来た(2)
私の住む町で保護活動をしていらっしゃる亀井さんについてお話しします。少し前まで私の住む小さな町ではまだ野良猫が物のような扱いを受ける状況にありました。亀井さんはその状況を目にしてこれではだめだと町役場に足繁く通い現状を訴えたそうです。でも遅々として改善されなかったようです。そこで、自分で動くしかないと保護活動を始めたようです。
見返りを考えず、私利私欲なく、生活を犠牲にして小さな命を守る姿を目にすると応援したい気持ちで胸がいっぱいになります。まだまだ保護活動が理解されない昔からの風習が残る小さな町です。たったひとり野良猫を幸せな形で無くすことだけを考えてきた。おそらく想像を絶する悲惨な状況も目の当たりにしてきたはずです。
私は近所の地域猫さんたちのおかげで、たまたま亀井さんと知り合いになっていました。松下さんの講演中、とにかく1秒でも早くなんとかしなければと焦っていました。歩き始めた子猫が道に出て事故にあったり、カラスに襲われたりしないか、心配でたまらない気持ちでした。
子猫が4匹います、と亀井さんにメールを送ると、すぐに返事が返ってきました。
今日ならこれから見にいけます、とのことでしたが、片道2時間以上かかる鶴見の会場にいましたので、帰りが夜8時近くになってしまいます。
翌日の午前中見にいらしてくださることになりました。
翌日お約束の10:00ぴったりにチャイムが鳴り、亀井さんがいらしてくださいました。ミケ子さんや子猫を驚かさないようにそっとリビングから見てもらいました。
試しにキャットフードをお皿に入れて差し出してみると子猫が仲良く並んで食べ始めました。気がつくと産後の世話でミケ子さんは以前より細くなっていました。お腹が空いてないはずはないです。それでも自分では食べずに子猫が食べるのを嬉しそうに見守っていました。
傍にポンちゃんもいて、子猫たちとミケ子さんの様子を見ていました。なんて微笑ましい光景なんでしょう。
普通にキャットフードを食べられるまでに育っています。すぐにでも譲渡可能だと思います。と亀井さん。
出来れば子猫4匹と、ミケ子さんを捕獲し、去勢手術済みのポンちゃんも捕獲して欲しい。しばらくミケ子さんと子猫が一緒にいておっぱいをあげられるようにして欲しいと私はお願いしてみました。
出来たらそうしたいです、と亀井さんも仰ってくださいました。
私の仕事の都合で捕獲するのは、その週の土曜日夕方になりました。
私が仕事に出かけた後、亀井さんは子猫の捕獲用にケージと子猫とお母さんのためのキャットフードを家に届けてくださいました。キャットフードは2キロで5000円以上するプレミアムフードでした。企業からの寄付もあるのだとおっしゃっていたのを思い出しました。
保護猫だからといって安価で粗悪なフードを与えるのではなく、小さな身体を作る時期に素材に拘ったフードを与えるというのも亀井さんのポリシーなんだと思いました。
翌日から天気予報でこの地域は記録的な大雨になるかもしれないとのことでした。雨にどう備えようか、小さな子猫をどう守ろうか頭の痛い問題でした。
そうだ!と思いついたのが息子が小学生の頃運動会で使ったレジャーシートでした。
洗濯物干しにかけて雨除けにしました。これが思いの外この親子を守ってくれました。使ったことのないメキシコ製のコンロの中に夜は4匹揃って寝ましたので、それでも雨から守られました。
雨が止みやれやれ。
子猫は庭の中を走り回って遊ぶようになっていました。
朝、窓の外を見ると、子猫の1匹が朝顔のネットに登っているのが目に入りました。子どもを育てた感でしょうか?一瞬危ないと思い、すぐに庭に出ようとしました。するとミケ子さんが激しく鳴いて私のほうに来ました。
見ると子猫の首にネットが絡み、恐さから動くのでどんどん巻きついていく状態。裸足で庭に出て、巻きついたネットを解きました。幸い発見が早かったのでどこも怪我をしていませんでした。子猫を抱っこすると落ち着き始めました。良かった。
思い出すと身震いがします。ほんとに紙一重で助かった命でした。本当に良かった。あの時私が外を見ていなかったら、ミケ子さんの声を聞いていなかったら、と今でも思い出すとぞっとします。
朝顔のネットは登れないように高い位置で縛り付けました。
子猫は毎日たくさん食べ、見守るミケ子さんも並んでたくさん食べるようになり、いよいよ捕獲の日になりました。