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81「詩」雨の声

「雨のおとがきこえる
 雨がふってゐたのだ」八木重吉

合唱している
いく人もの声が雨粒になって降り注いでいる
不甲斐ない自分が嫌でたまらない
醜い塊に思えてくる そんな時
いいんだよ そのままで
雨粒の声が聞こる

「あのおとのようにそっと
  世のためにはたらいてゐよう」

世のためにはたらけただろうか
だれかの役にたてただろうか
あのおとのようにそっと
はたらいただろうか
雨粒になった声が
地面の下のいきものを生かしている間


10年前の秋
誤嚥性肺炎で入院した母に会うため3ヶ月
小田原から栃木の病院まで
週3回往復 片道5時間かかった
遠く離れてなかなか会いに行けなかった
せめてもの罪滅ぼしだった

  「すまないな わるいな ありがとう」
最後の言葉がありがとうだなんて
カッコ良すぎてズルいよ お母さん

「雨があがるように
 しづかに死んでゆこう」




関東学院大学公開講座秋学期
正津勉先生の講座 課題テーマ「終活」のために
初稿



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