上手宰さんの詩集
上手宰さんの「香る日」を読みました。
定年後書き溜めた作品を65歳の時にお作りになった詩集だそうです。
宝石のような美しい世界が結晶になった作品でした。そうだね、そうだね、と頷きながら上手さんの世界の隣に立っている気がしました。
歳をとるということは悪くないです。
鏡を覗けば皺とシミだらけのお婆さんになった私。よくもこんな顔を人前にさらしているもんだと呆れたりします。
中身はちっとも変わってないのにと着ぐるみを着ているような気持ちになります。
確かにちょっとした作業で若い時より疲れたり、身体も硬くなるし、いいことがないなと思っていたのですが、どうしてどうして歳を取るのも悪くない。
生きてきた分、経験の引き出しが増えています。
その分気持ちの引き出しも増えて、少しのことでは腹を立てなくなりました。もともとおっとりした性格なので滅多に腹は立てないのですが。
今ドラッグストアで働いているのでレジ仕事もあります。過去に3回お客様にキレた話しを息子にしました。
「お母さんがキレることなんてあるんだ。
お母さんをキレさせる人がいるってどんだけ…。その人に会ってみたい。」と息子がとても驚いた様子でしたが、私だって人間です。
それでも、若い時よりさらに腹をたてなくなりました。相手がどんな思いなのか察する引き出しが増えたからだ思っています。
涙もろくなったのは涙腺が弱くなったからではないです。その人の気持ちに寄り添って感じる引き出しが増えたからです。たくさんの引き出しを持つことで優しさもまた増えたように思います。
歳をとるのも悪くない。
上手さんの描く静で美しい世界もまた、たくさんの引き出しを持ってこそ表現できたように感じました。
すべてことには時がある。私はこの聖書の言葉によく支えられてきました。
この詩集も、上手さんが定年を迎えて人生の違うステージに足を踏み入れた時期に生まれるべくして生まれた作品だと思いました。
歳を取るのも悪くない。
すべてのことには時がある。
私にもまだまだ出来ることがあるのかもしれません。いや、今だから出来ることがある。コツコツと精一杯生きていこう。
一冊の詩集が私を応援してくれています。