見出し画像

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(3)

6月22日、いよいよ捕獲の日がやって来ました。私が仕事から戻るのは夕方6時以降になってしまいます。少しでも早い時間がいいと思いました。職場に連絡して事情を話すと店長が快く早退するのを承諾してくれました。
私が働いているのはドラッグストア、ぎりぎりの人数で仕事をこなしていますので一人欠けることがどれだけ周りのスタッフに負担をかけるか充分に理解しています。それでも、周りのスタッフたちも快諾してくれました。小さな生き物への優しい気持ちが伝わりありがたい思いになりました。

夕方、亀井さんは捕獲器を持ってきました。最初お母さん猫から捕獲しようとしました。ミケ子さんは以前捕獲器にかかったものの赤ちゃんがいるということでそのまま放されたそうです。その後なかなか捕獲できなかったのだそうです。「とても頭がいい子で…。」と亀井さんはおっしゃっていました。


私はこの一週間子猫がうまく捕獲出来るように、日曜日に預かった子猫の捕獲用ケージにフードを置き、子猫にケージを慣れさせていました。
ケージにお皿に入れたご飯を置くと2匹の子猫が入って食べ始めました。扉には紐が結んであり、離れた所から閉められるようになっています。しずかにそっと紐を引き扉を閉めると、そのままうちの中に入れ、用意してあったキャリーに子猫を移しました。2匹の子猫を捕獲するまで、ものの10分もかからなかったように思います。子猫は捕獲されたのも気づかずケージのなかでご飯を食べ続けていました。
「今子猫は捕獲されたのに気づかなかったでしょ。これが捕獲の理想の形ですよ。」と亀井さん。

しばらくして3匹目もケージに入り捕まりました。問題は最後の一匹。この子はなかなか難しかったです。ミケ子さんと一緒に遠くから様子を伺っていてケージに近寄ろうともしません。
長期戦になりそうだね、と話した直後、バタンという音。子猫がミケ子さん用の大きな捕獲器に入っていました。子猫は怪我をしている様子でもなくホッとしました。子猫が成猫用の捕獲器にかかる時に怪我をしてしまうことがあるそうです。
子猫は無事4匹捕獲できました。

問題はミケ子さんです。
「このまま捕獲出来なかったら一生後悔する。」
自分の意志を確かめるように静かな声で亀井さんが言いました。生活の全てを小さな生き物のために費やしてきた日々だったでしょう。どんなに頑張っても、否、頑張れば頑張っただけ、上手くいかず後悔の数も多かったに違いありません。

5時から始めた捕獲もすでに8時半を回っていました。デッキの上に2台の捕獲器を置いてその日は撤収になりました。
翌日4:30頃、トイレに起きた家族に起こされました。
「ミケが捕獲器にいるみたいだ。」

大急ぎでデッキのところにいくと箱座りになってるミケ子さんが捕獲器の中にいました。ポンちゃんは側で心配そうにうろうろしていました。
捕獲出来たら布で捕獲器を包んでおいてと言われてましたのでそっと捕獲器を包みました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?