156「詩」歩く
歩く
一歩一歩
大地をつかみながら
ゆっくり
歩ける喜びを身体中に響かせながら
歩く
誰のせいでもない
誰も悪くない
神さまから与えられた病
できること全てをやった
できること全てを尽くしてもらった
感謝で心はいっぱいなのに
それでも
失ったものは確かにある
歩く
一歩一歩
夜明け前のいくぶん冷んやりした空気が
時間の流れを伝える
季節のない病室にいる間に
いくつかの季節が
変わっていたことに気づく
歩く
空が明るんでくる
あたり一面にコスモスが咲いている
この目で
ちゃんとそれが見える
歩く
朝日が
足元に
昨日よりいくぶん
長くなった陰を揺らし始める
失ったものは確かにある
けれど
失ったものに代わるものも
確かにある
(長い闘病生活を頑張った友へ。
友の撮った写真と共に。)