[前編]Orange DAO採択スタートアップからみるWeb3トレンド動向
Web3への関心が高まる中でのOrange DAOの役割
こんにちは、Moshです。
今回は、先日参加したOrange DAOが開催するDemo Dayの詳細とともに、現地で取り上げられた注目のスタートアップや提出プロダクトから読み取れるWeb3の今後のトレンドについて全2回の記事に分けてお届けしていきます。
*本当は開催日である1ヶ月前に投稿予定でしたがかなり遅れての投稿となってしまいました、、、
このDemo Dayでは将来のWeb 3ユニコーンとなりうるスタートアップが取り上げられるため、個人的にもかなり期待を寄せて観ております。
Orange DAOとは
Orange DAOは、ベンチャーアクセラレータのY Combinator(YC)の卒業生のみで構成された業界最大規模の投資組織(DAO)のことです。
これまでにYC を卒業したベンチャーの創業者・ファウンダーからなる1,500人以上がメンバーとなっており、中にはQuickNodeのCo-founderやPrivyの代表もメンターとして携わっております。
*主要なチームメンバー(投資家)はこちらから→リンク
DAO構造と資金調達の仕組み
Orange DAOは有限責任会社(LLC)として運営されています。
通常、SECの規制により投資DAOは最大100名までのメンバーしか持てませんが(米国の例)、Orange DAOはケイマン諸島の財団法人として運営され、DAOと投資ファンドを別々の法人として管理することで、この制約を回避し、1,300人以上のYC卒業生をメンバーとして受け入れることが可能になっています。
DAOと投資ファンドの関係
Orange DAO は、2021年にベンチャー・パートナーとして設立したOrange fundを通じて、Web3系のベンチャー企業への投資や、YCへの応募のサポート、メンター活動などの活動も行っています。
Orange DAOのファンドは、ジェネラルパートナー(GP)によって運営され、DAOメンバーは投資案件の提案や精査をサポートします。メンバーが行う投票はDAOの財務戦略やファンドの投資活動を決定するために使われ、収益は再びDAOのトレジャリーに戻され、将来的な投資に活用されます。
資金調達と投資実績
Orange DAOは、Algorand FoundationとNearというレイヤー1ブロックチェーンを開発している2社から合計8,000万ドルの資金を調達し、その資金を使ってWeb3スタートアップに投資しています。
また、DAOのメンバー自身もファンドにリミテッド・パートナー(LP)として参加し、投資をサポートしています。
投資先ポートフォリオには「Goldfinch」「Liquifi」「EthSign」「DeCrypt」などの名だたるスタートアップが入っており、現在までに総計200回以上もの投資実行をしております。
参照:Crunchbase
国内でもOrange DAOは注目を集めており、日本DAO協会や文部科学省の報告書でも取り上げられるなど、DAO事例としてのモデルケースとなっています。
Orange DAO fellowship / Demo Dayについて
Orange DAOフェローシップは、Orange DAOによって組織・運営されている、次のWeb3ユニコーンの立ち上げを支援するために設計された10〜12週間の集中プログラムのことです。
このプログラムへの参加者はSAFEから上限なしの10万ドルの投資も受けられます。
参加者は最初の5〜6週間で現地のオリエンテーションから始まり、ネットワーキングや専属のメンターにアドバイスをいただきながらPMFを策定して行きます。
残りの期間で、資金調達に向けた準備(ビジネス計画、ピッチ資料作成etc)を行い、最後のデモデーで投資家へのプレゼンを実施します。
その後は卒業し、OrangeDAOに加入して今後の起業家としての活動を続けていくことになります。
また、プログラム卒業者全体でおよそ1500万ドル以上もの資金を投資家から調達しております。
プログラム期間中には、Web3業界を牽引している豪華なゲストを招待してスピーカーセッションも設けております。
Base、SOLANA、AAVEなど名だたる企業名が並んでおりますね
Orange DAO提出プロダクトから見るWeb3トレンドの推移
提出プロダクトの推移
Orange DAOが提供している独自のデータベースによると、過去一年間でプログラムへの提出プロダクトに大きな変化が見られます。
上のデータは、過去に行われたfellowshipプログラム(2023年冬と2024年冬)で提出されたプロダクトのカテゴリーの推移を表しています。
比較すると、AI、ZK(ゼロ知識証明)、AA(アカウント抽象化)の分野で顕著な成長が見られ、逆にNFT、アイデンティティ、ソーシャル分野では人気が減少していることが分かります。
特にAIの分野では+204%の伸びを記録し、ZK技術も大きく注目を集めています。
さらに2024年夏と同年の夏に行われたプロジェクトへの提出プロジェクトを比較すると、Game、RWAなどといった分野も伸びているのがわかります。
NFT単体よりは実体のある価値に紐付いたRWAなどの分野が好調なようです。
国際的なプロジェクトの増加
Orange DAOの2024年冬のプログラムでは、これまでで最も国際的なメンバーが集まっており、世界中から多くの応募がありました。
特にアメリカ、インド、イギリス、ドイツ、UAEが主要な提出国となっています。
DemoDay 2024夏の提出プロダクト16選
今年の夏に行われたOrange DAOフェローシッププログラムでは前年の倍にあたる2200件以上もの応募があり、最終的には16名が選出されました。
合格率は1%にも満たないため、非常に高い競争率であることがわかります。
ここからは10月3日に行われたオンラインのDemo Dayで紹介された、見事選考を勝ち抜いた15社のスタートアップを取り上げていきます。
NoRamp
NoRampは、オンランプ決済ソリューションを提供するスタートアップ。
提供暗号資産の知識がなくてもWeb3アプリケーションで決済を可能にするプラットフォームを開発しています。
主な機能
Fiat Checkout: ユーザーが暗号資産を持っていなくても、法定通貨でNFTを購入できるシステム
Instant Cashout: 即時現金化機能
KYC & Payout: 本人確認と支払い機能
Dashboard: 取引や分析を管理するためのダッシュボード、こちらからデモ触れます。
主な実績
180カ国以上でサービスを展開しており、Web2アプリケーションがWeb3の機能を簡単に導入できるよう支援。
競合他社が提供するクレカによる暗号通貨購入の失敗率が70%に達する中、NoRampは独自のデータ伝送レイヤーを活用し、99.98%の成功率を誇る。
135以上の通貨に対応、47つ以上のチェーンにも対応
Stripe、Plaid、Bybit、Berachainなどとも提携
6週間で50万ドルの取引量を処理、四半期毎で3100万ドル以上の取引を実現。
創業者のDanielさんは連続起業家でもあり、18歳で起業した最初のAIスタートアップはブーストラップでARR 1000万ドルを達成し、500以上のクライアントも獲得しております。
BRKT
BRKTは、ブロックチェーン技術を活用したオンラインベッティングプラットフォームを提供するスタートアップ。
投資ではなくエンタメ向けに展開しており、最低25セントからベット可能。ターゲットユーザーは主にZ世代。
2つのプロダクトを展開しています:
BRKT.gg: ブラケット形式の予測市場プラットフォーム
Hookt: モバイルユーザー向けの予測市場アプリ
BRKT.gg
ブラケット形式の予測市場を提供するプラットフォーム。
最大256人の参加者をサポートする大規模なトーナメント形式の予測が可能
スポーツ、eスポーツ、政治、ニュース、文化など幅広い分野での予測市場を提供
ブロックチェーン技術を活用した透明性の高い運営
Hookt
Hooktは、モバイルユーザー向けに特化した予測市場アプリ
直感的なスワイプ操作によるベッティング
ソーシャル機能(友人のフォロー、ベット共有など)
少額課金ユーザーがターゲット。
短期的な市場に焦点を当てた運営
月間7万人のユーザーが利用しており、ローンチからわずか3ヶ月で130万回ものベッティングが行われている。
RISE
RISEは、次世代のEthereum Layer 2ソリューションで、従来の処理速度(TPS)に依存せず、1秒あたり10億ガス(Gigagas)を処理可能な高性能ブロックチェーンを目指しています。
Gigagasとは?
Gigagasは、1秒間に処理されるガス単位の数を表すもので、TPSに代わる新たな指標として利用されています。
トランザクションの種類によって計算にかかる負荷が異なるため、TPSは一律にブロックチェーンの性能を評価するのに適していません。例えば、1,000件のETH転送と1,000件のスワップや複雑なマルチシグ承認では、処理に必要なガス量が異なります。
Gigagasはこの違いを反映し、ブロックチェーンの実際の処理能力をより正確に評価できる指標です。
RISEはこれを駆使し既存のEthereum Layer 1の100倍の処理能力を有します。
現在のEVMブロックチェーンの帯域幅
Ethereumのレイヤー2は、1秒あたり60メガガス程度が標準となっています。例えば、Baseは60メガガスを処理することで、約400件のUniswapスワップや1,200件のERC20転送が1秒間に行われます。しかし、これが現状の最高性能であり、DeFiがCeFi(中央集権型金融)と同等のボリュームをオンチェーンに取り込むためには、この帯域幅を大幅に増やす必要があります。
RISEはシードラウンドで計$3.2Mを調達しており、パートナーにはEther.fiやP2 ベンチャーズ、またVitalik Buterin(イーサリアム共同創設者)やStani Kulechov(Aave創設者)などの著名人からも支援を受けています。
Resolv
Resolvは暗号資産の盗難防止および回収をサポートするサービスです。
暗号資産を取り扱う上で切っても切り離せないのがセキュリティリスクです。
当社によれば、WEB3業界全体で過去3年間で約90億ドル相当の暗号資産が盗まれております。
すでに800人以上のユーザーが当サービスを利用しており、$30Mもの資産が保護されています。
サービス概要
Resolvは、従来のERC-20トークンをより安全な同等品と交換できるプラットフォームを構築しています。 ユーザーはプラットフォーム上に保護を受けたい分のトークン(暗号資産)を預け入れ、それに応じた「保護されたトークン(pTokens)」を受け取ります。
これらの新しく発行されたpTokensは、盗難時に回収することができます。 また、盗難されたという正当性を検証するために、Resolverと呼ばれる無作為に選ばれた人が検証します。
*公式が提供しているフローチャートでより詳細な仕組みをご確認いただけます。
終わりに
前半記事いかがでしたでしょうか、個人的にもOrange DAOとは一体なんだろうという疑問を解決するついでにアウトプットとして記事を書いてみました。
優秀なスタートアップ関係者を集めて投資し、将来的に彼らが成長して次は投資家・メンター側として携わっていくのがとても好循環でネットワーク効果が生まれていると勝手に考えております。詰まるところDAOの成功例でもあるのかなと素人目線で思っている次第です、、!
完全に余談ですが、最近でいくとPraxisという世界初の「ネット国家」プロジェクト(自称)が大型の資金調達をしていたり、Coinbase 元CTOで「Network State」で有名なBalaji氏が開講したNetwork Schoolも大変興味深いです。
これらも最終的に投資家や熱い方々が集まるコミュニティに発展して行くのであれば、 Orange DAOに似た動きも期待できそうです。
かなり簡単にまとめましたが、少しでも内容に興味を持っていただけたら大変幸いです。
後半の記事では残りの提出プロダクトについてまとめていく予定です!