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【番外編】日本のフッ化物(フッ素)配合歯磨剤の推奨が待望の世界的基準に!むし歯予防への影響は?
2023年1月に、日本のむし歯事情に関わる大変重要なニュースが飛び込んできました。歯科にかかわる4つの学会が、新たなフッ化物(フッ素)配合歯磨剤の推奨される利用方法を発表したのです。この推奨の変化は、私たちのむし歯予防事情にどのような影響があるのでしょうか?本記事では緊急企画として、このフッ化物配合歯磨剤の使用方法が更新されたことによるむし歯予防への影響をまとめてみました。
執筆:気まぐれ歯科情報ななめ読み@Moody_Dent_Info
チェック:2名以上のトンデモ歯゛スターズメンバー
(見出し画像:akina先生@nakixa)
何が変わったのか?
まず、新旧のフッ化物配合歯磨剤の推奨を比べてみましょう。
〇以前のフッ化物配合歯磨剤の推奨
![](https://assets.st-note.com/img/1673438818266-ylBV8OMa5W.jpg?width=1200)
〇新しいフッ化物配合歯磨剤の推奨
![](https://assets.st-note.com/img/1673438924101-eBNcTzaSsF.jpg?width=1200)
大きな変更点は下記3点です。
歯が生えてから2歳までは500ppm(泡状歯磨剤ならば1000ppm)とされていたものが、1000ppmとなった。
3~5歳は500ppm(泡状歯磨剤ならば1000ppm)とされていたものが、1000ppmとなった
6~14歳の区分は削除され、6歳以上は成人・高齢者と同様に1500ppmとし、使用量は歯ブラシ全体(1.5~2cm程度)となった。
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世界歯科医師連盟やWHOなどの国際的な組織では、以前から年齢に関わらず1000ppm以上のフッ化物配合歯磨剤の使用を推奨しており、日本の推奨とは異なる状態が続いていました。フッ化物配合歯磨剤のリスクとして、子供の時期では歯のフッ素症に注意する必要があります。これは、歯冠(歯の頭の部分)が形成される時期にフッ化物を過剰に摂取することで歯の見た目に変化が生じてしまう状態のことを言います。特に永久歯の大半の歯冠が完成する6歳前後までは、この歯のフッ素症に注意が必要とされており、フッ化物を過剰に飲み込んでしまう急性中毒のリスクも考慮して、フッ化物配合歯磨剤の使用に関しての推奨が決められています。フッ化物の毒性については、こちらもご参照ください。
日本では以前、15歳からの1500ppmのフッ化物配合歯磨剤の使用が推奨されていましたが、これはちょうど第三大臼歯(親知らず)の歯冠が完成する時期であり、歯のフッ素症による見た目への影響は小さいと考えられる状況でした。十分に安全性を考慮した推奨であったとも言えますが、一方で高い濃度のフッ化物配合歯磨剤によるむし歯予防効果の恩恵を受ける機会を逃してしまうというデメリットもあり、今回フッ化物配合歯磨剤の推奨される使用方法が更新されたことにより、むし歯が増えやすい子供の時期から1500ppmのフッ化物配合歯磨剤によるメリットを最大限生かせるようになったと言えるでしょう。
どのような効果が期待されるのか?
では、子供の時期のフッ化物配合歯磨剤の推奨が1000ppmから1500ppmになったことで、どのような効果が期待されるのでしょうか。WHOの報告によれば、フッ化物配合歯磨剤のフッ化物濃度が500ppm上がるとむし歯予防効果は6%上昇するとされています。また、コクランライブラリーと呼ばれる信頼性の高い結果から作成されたデータによれば、フッ化物配合歯磨剤の濃度が1000ppmの場合のむし歯予防効果は23.0%だったのに対し、1500ppmでは29.6%だったことが示されています。
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一方、平成28年に実施された歯の状態に関する国の調査(歯科疾患実態調査)では、歯が乳歯から永久歯に生え変わる時期であることに注意が必要ですが、むし歯(図ではう歯)は6歳から9歳にかけて増加する傾向があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1673439625064-wCPsPKeCyz.jpg?width=1200)
特に6歳前後の時期は第一大臼歯(6歳臼歯)が生えてくる時期であり、この歯は生えた直後がむし歯になりやすい状況になっています。この点を考慮すると、第一大臼歯が生えてくる時期に1500ppmのフッ化物配合歯磨剤を使用するメリットは大きいと考えられます。
したがって、今回のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法の更新は、むし歯が増加しやすい子供の時期に、1500ppmのフッ化物配合歯磨剤という非常に頼もしいむし歯予防手段を使うことが推奨されるようになったという点で非常に重要で大きな変化が起きたといえます。しかしながら、子供の時期においては、歯のフッ素症というデメリットが生じるリスクを最小限にするためにも、推奨されている使用量にとどめることも大事なことです。また、むし歯はフッ化物以外にも砂糖の摂取や食生活など、様々な要因が関わりあって生じる疾患でもあります。その中でもむし歯を防ぐ有効な手段の1つであるフッ化物配合歯磨剤を正しく使うことは、むし歯リスクを下げるうえで大変重要なことです。
その他の重要なこと
これだけではなく、今回の推奨では
フッ化物配合歯磨剤のフッ化物濃度の表記が望ましいこと
日本では味などの点で1450ppmのフッ化物配合歯磨剤が少ないこと
高齢者の根面う蝕(歯の根にできるむし歯)対策として、5000ppmのフッ化物配合歯磨剤が有効とされているが、日本では販売されていないこと
チタンインプラントを低濃度のフッ化物配合歯磨剤が腐食させることはなく、インプラント用ジェルとしてフッ化物無配合の代わりにクロルヘキシジンが含まれている場合があるが、そのような製品のむし歯予防効果はないため、インプラント患者にもフッ化物配合歯磨剤の利用が推奨されていること
も同時に記載されています。このような推奨をもとに、今後わが国でもフッ化物配合歯磨剤の製品や使用方法が変化し、1人でも多くの人がむし歯で困らないで生活できるようになることが期待されます。
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