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【トンデモ歯゛スターズ】オゾンのマウスウォッシュは効く?
新型コロナウイルスの影響で、日本国内でも一時期、消毒用アルコールの供給が追いつかず、入手困難な時期もありました。その頃からアルコールに代わる消毒剤に注目が集まり、様々な社会問題を起こった経緯があります。そんな中、「オゾンのマウスウォッシュが歯周病や口内炎に効く?」という話題が上がってきました。エビデンスに基づく見解では、どのように判断できるでしょうか?
本記事では「オゾンのマウスウォッシュが歯周病や口内炎に効くか?」について検証します。
執筆:akina先生 @nakixa
チェック:2名以上のトンデモ歯゛スターズメンバー
(見出し画像:akina先生@nakixa)
トンデモ歯゛スターズ的結論
オゾンのマウスウォッシュの効果及び危険性について、質の高い臨床研究は殆どない。現時点でオゾンのマウスウォッシュを使用するのは時期尚早である。
参考としたエビデンス
概要
オゾンは有毒ガスであり、単独、補助的、あるいは予防的な、治療における有用な医学的応用は知られていない。オゾンが殺菌剤として有効であるためには、人体や動物が安全に許容できる濃度よりも遥かに高い濃度でオゾンが存在している必要がある
備考:オゾンを発生する装置の規制についての記載あり。
概要
42人の歯科学生を対象に、オゾン水と蒸留水グループに分けて、実験している。一日一回のオゾン水によるうがいは、縁上、縁下のバイオフィルム形成に影響を与えない。PFZ(プラークフリーゾーン)インデックス、(歯肉溝滲出液量)GCFともにグループ間の有意差なし。オゾン水グループは味覚の評価が悪かった。
備考:無作為化、二重盲検化、クロスオーバーの臨床試験となっている。
概要
12~14歳75人を対象に、ごま油とオゾン化ごま油とクロルヘキシジンで比べている。結果はすべてのマウスウォッシュでベースラインと比較して口腔衛生指標が改善されている。オゾン化ごま油はごま油よりも有意に改善している。クロルヘキシジンはごま油よりも有意に改善している。
備考:ごま油とオゾン化ごま油は口腔衛生の大幅な改善を示したと結論の記載があるが、実験結果からするとごま油とオゾン化ごま油の肩を持つ記述のようにみえ、公平な結論とは言い難い。
トンデモ歯゛スターズ的見解
新型コロナウイルスの影響で、日本国内でも一時期、消毒用アルコールの供給が追いつかず、入手困難な時期もありました。その頃から消毒用アルコールに代わる消毒剤に注目が集まり、二酸化塩素による”空間除菌”や、次亜塩素酸水の空中噴霧など、様々な社会問題が起こりました。そんな中、オゾンも話題に上がってきており、私達への依頼として「オゾンのマウスウォッシュについて」というものが寄せられてきました。
オゾンに殺菌作用があることは昔から知られており、水道局での水処理や、器具や機材の消毒や洗浄に用いられています。とはいえ、そのような殺菌作用を人体に単純に適応させることは難しい事は言うまでもありません。医療の世界でも、オゾンの応用は研究されてきましたが、アメリカのFDAはオゾンについてこのようにコメントしています。
「オゾンは有毒ガスであり、単独、補助的、あるいは予防的、治療における有用な医学的応用は知られていない。オゾンが殺菌剤として有効であるためには、人体や動物が安全に許容できる濃度よりも遥かに高い濃度でオゾンが存在している必要がある」(2020年4月1日改定)
そんなオゾンのマウスウォッシュは、どれくらい効果がありそうなのか?あるいは危険なのか?
を検証するため、医療系論文検索サイトPubMedで検索しました。
「オゾン マウスウォッシュ」の検索結果
検索条件には、”人間に当てはめることが出来る最低条件”として、”臨床試験”以上のエビデンスレベルをフィルターに入れました。
(もう少し簡単に言うと、人間を対照として行った実験のみをピックアップしました。動物実験や、細胞実験などは含めないように検索しました。詳しく知りたい方は【おまけ】を見てください。)
ということで、19件の論文があったのですが、この19本の論文をすべて詳しく見てみると、純粋に「”人間”でのオゾンのマウスウォッシュを評価している」と言える論文は、たった2件しかありませんでした。
1つ目の研究は
42人の学生で実験したもので、結論は「一日一回のオゾン水によるうがいは、バイオフィルム(歯垢、プラーク)形成に影響を与えない。オゾン水グループは味覚の評価が悪かった。」
2つ目の研究は
12歳~14歳の75人で実験したものですが、少し変わってて、ごま油、オゾン化ごま油、クロルヘキシジン(これは非常に一般的な洗口剤です)で比べてます。読んでみると、ごま油うがいはインドの伝統的な民間療法だそうです。結果を見ると「オゾン化ごま油とクロルヘキシジンの口腔衛生改善の効果が同じくらいか、クロルヘキシジンの方が効果的」と考えられます。
長期的な仕様に対する効果や悪影響の研究はありませんでした。
まとめると、臨床研究(質はいずれも低い)が、たったの2本しかなく、「効果がある」とする論文と「効果がない」とする論文が一本ずつありましたが、効果と言っても一般的なクロルヘキシジンに少し見劣りする程度です。
一方、例えば、同じマウスウォッシュの薬であるクロルヘキシジンの臨床研究はかなり多くなされている上に、実際に臨床の現場でも多くの場面で、長年使われているので、そのメリットやデメリットがかなり分かってきています。
少なくとも、現段階においても、オゾンのマウスウオッシュをわざわざ使用する理由が見当たりません。
もし、あなたがオゾンのマウスウォッシュを勧められたら、
「まともな臨床研究論文でも持って来い!話はそれからだ!」
とでも言ってあげてください。
(嘘です。トラブルになっても責任を持てませんので、心のなかでそう唱えて、そそくさと去りましょう)
新しい商品などは、「今までにない素晴らしい効果があるんじゃないか?」と人は期待してしまうものです。商品を売る側もよく見せようと演出してくると思います。しかし、だからこそ、しっかり見極める必要があると思います。健康に関するものならなおさらです。
「効果がある」と謳うならば、その効果を証明する責任は「売り手」にあります。それを怠って、売りつけようとするのは不誠実だと思いませんか?そのような不誠実な人に資金を提供しない為にも、賢い消費行動を心掛けたいものです。
【おまけ】
マニアックな人、あるいはこの記事を再検証してくださる人向けにPubMedの検索式も掲載しておきます。
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