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二年半ぶりにドイツで推しに会ってきた話③

コンサート初日。

前もって発表されたコンサートの予定時間は午後6時から夜11時までの五時間。私が買ったチケットは初日も二日目もスタンディングだった。もっと詳しく書くと、初日は普通の「Standing」チケット。ステージからは若干距離がある。二日目は「FOS (Front of stage)」チケット、つまりはアリーナだったのでうまく行けば間近で推しを見れるチャンスがあった。

少なく見積もっても10時間は立ちっぱなしということになるので、アラサーの体力的にもたないことは自明だろう。己の限界を知っているので初日はゆったり会場入りすることにした。入場が開始されるのは午後4時からだったので、一時間くらい前にドームに到着することを目標にしてフランクフルトの街をぶらぶらした。

とは言っても、やはり会場の様子が気になる。街を歩きながらもついついSNSをチェックしてしまう。どうやら韓国の観光プロモーションががっつりイベントに絡んでいるらしく、ドームの外では「K-pop Festival」が開催されているようだった。K-popのダンスコンテストや韓国料理のブースなどが用意されていて、一日中何かしらの催し事があったのだ。日本に住んでいるとすぐに渡韓できるが、ヨーロッパのファンはそうもいかないのでコンサート以外にこのような盛大な文化イベントが開催されるのも納得だった。

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コンサート開始まで残り6時間。

「そろそろ会場に向かうか」と思ったところで、何やらTwitterのタイムラインが荒れていることに気づく。恐る恐る内容を確認してみると、本日のタイムテーブルが運営から発表されたばかりのようだった。そしてファンが怒り狂った理由は、これだった。

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なんと計5時間のタイムテーブルの内の2時間は前座で占められていることが当日に判明した。そして気になるママムの公演時間はわずか20分ということが分かった。確かに推しのパフォーマンスが一時間ほど見れると思って来たのに蓋を開けてみたら3分の1あるかないか位だと当日に知らされたら、激おこぷんぷんモードになるファンがいてもおかしくはない。でも、私はママムがやっと有観客で、しかも4万5000人という大舞台でパフォーマンスするということ自体が奇跡だと思っていたので怒りはこみあげてこなかった。

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電車がドームに一駅近づくたびに、キャッキャッしながら車両に入ってくる人の数が増えていき、私もつられて心が躍る。駅から降りてドームまでの距離は約1km。想像していただきたい。約1kmに渡って文字通り世界中から集まったK-popファンで埋め尽くされた沿道を。カップルで来る人。友達グループで来る人。家族連れも見かけたし、ペンラを握りしめながらひとりで足早に歩く人も見かけた。もうここからライブは始まっているのだ。私は嬉しくってスキップをかましながら前へ前へ進んだ。

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しかし、歩けど歩けどドームに辿り着かない。そう、みんなとりあえず前の人について行ってるだけで、誰も本当の入り口までの行き方を知らなかったのだ。ドームの外はバリケートでぐるっと囲まれていて中の様子は確認できるが肝心の入り口が見つからない。もどかしい。このままではまずいと思い、Google大先生を開き地図で現在地を確認する。

...めっちゃ逆方向やないか。スキップから短距離の姿勢に切り替えて元来た道を全力疾走する。無事着いた頃にはアラサーの体力はかなり削られた。ドキドキしながら荷物検査とチケットのスキャンをクリアしてようやく会場入りを果たす。

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一面の人、人、人。ああ、本当にこの場所で、こんなにたくさんの人と一緒にライブに参加できるんだ。涙腺は年齢を重ねるごとに弱まっていくので、この時点で突っ伏して泣きそうだった。が、強靭なメンタルで人の波をかきわけて、スタンディング席めがけてまっしぐらに進む。ゲートに近づくにつれ、熱狂の音が聞こえててくる。呼応するかのように、私の鼓動も大きくなる。

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ゲートを抜けると別世界が広がっていた。ライブ直前の、人々の興奮と熱気が空気に漂う、あの特別な空間。最後に現場入りしたのが、2019年のキンテックスで開催されたKBS歌謡祭だった。あれから約二年半。思い焦がれた場所についに辿り着いた。ドームは360度見渡す限りの人で溢れ、目頭が熱くなった。

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コンサート開始まで残り3時間。

中央ステージの横に設置された巨大スクリーンに今日参加予定のアーティストのMVが映される度に、会場から地鳴りに近い歓声が起きる。私が入ってちょうどすぐにママムのHIPの映像が流れた。メンバーのアップショットが映るたびに湧く会場。そしてムンビョルのスーパーラップタイムが始まると一際黄色い歓声が上がった。ムンビョルが世界中の女を虜にしていることがまたしても証明された。

時計が18時を過ぎたところで、中央ステージに新たな動きが。プレショーがスタートした。イカゲームを彷彿させるマスクとスーツ姿のダンサーたちが現れると、あのお馴染みの不気味なサントラが流れた。ステージ遠くからでも分かるバッキバキのダンス。見惚れてしまう。Doja catといった洋楽ヒット曲からBTSのPermission to Danceまで披露されて会場は大合唱。ダンサーは確か8人くらいいたと思うが、男女比はほぼ半々で様々な国籍のメンバーから構成されているのが分かり、これもヨーロッパならではの前座だなと楽しかった。

と、ここまではよかったのだが、その後に延々と続く釜山への誘致目的のスピーチや数々の広告映像、フランクフルト大使館関連の挨拶などにはすぐに飽きてしまった。観光の宣伝もいいけど、あの時会場にいた誰もが「私たちは早く推しに会いたい...!」と思っていたはずだ。韓服ファッションショーが終了し、束の間の静寂のあと、画面いっぱいに映し出される文字。

Make some noise!

コンサート開始まで残りわずか。

(続く)

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