ムンビョル3rdミニアルバム『6equence』について愛を叫ぶ
社会人になると週末って秒で過ぎる。土日が来るまでが万里の長城みたいな道のりなのに週末は3秒で過ぎ去ってしまう。あゝ無情。今年も3分の1が終わってしまったなんて理不尽すぎる。しかし時間は止まってくれないし、推しからの怒涛の供給も止まらない。
特に、去年の12月からのムンビョルさんの仕事っぷりには目を見張るものがある。毎年誕生月には特に気合を入れて活動してくれているが、影分身でもいるのかと疑いたくなるレベルだ。
まず、ムンビョルMONTHに突入した途端に2022年1月に3つ目となるソロのミニアルバムでカムバックすると発表した。もうそのニュースだけでお赤飯炊けちゃう。しかし、「ファンサの鬼」と書いてムンビョルと読む。ファンサの鬼は年が明ける前に2曲も先行リリースしたのだ。流石にメリーなクリスマスすぎてサンタさんもびっくりだ。
せめて年明けくらい推しにもゆっくりしてほしいものだけれど、一月にはアルバムが世に放たれ、音楽番組での活動が本格化。この間にムンビョルは週3で冠ラジオ番組のホストも務めているし、サッカーのバラエティ番組にも文字通り体を張って出演していた。一息を入れる間も無く3月にはソロライブが敢行され、「流石に休むよね?」と思ってたらまさかの4月に高速カムバックを発表...!チャムカンマンニョ、ムンビョルさん、というかマネジメント頼むから落ち着いて!!
激流に乗っているかの様にスーパーミラクルムンビョルタイムが続いていて、とても幸せな反面、以前の様にありがたい供給を120%楽しめていない気がする。オタクだって着いていくのに必死なのだ。
ちょっと一息着いて、改めて唯一無二のアーティストムンビョルさんから我々ムムへの"선물"(贈り物)を咀嚼したい。そんな訳で今回も数々のインタビューや音楽誌のレビューを参考にしつつ、3rdミニアルバム『6equence』を一歩踏み込んで掘り下げて、推しポイントについて語っていくんだってばよ!
今年1月にリリースされた3rdミニアルバムのタイトルは『6equence』で、英語の"Sequence"と"6(six)"が組み合わせった造語だ。シークエンスは日本ではあまり馴染みがない言葉かも知れないが映画好きはピンと来ると思う。映画での映像の最小単位が「カット」で、それらが集まり一つの「シーン」となる。そして、複数のシーンがつながったものが「シークエンス」と呼ばれる。
3rdアルバムとなる『6quence』は、6つの曲(+英語バージョン1曲)から一つのストーリーが構成されているからこのタイトルになったのだろう。『MOON MOVIE』という曲で「私の生活は私が作るもの/ Like a movie (shoot) movie (shoot)」とゴリゴリのラップをかましている位映画が好きなムンビョルさんらしいモチーフだと思う。
ムンビョル:「愛する1人との感情を、出会いから別れた後の未練まで盛り込んだアルバムです。今回のアルバムを映画のストーリーのように表現し、自ら最初からどのトラックにはどんなストーリーを入れればいいのか、テーマまですべて決めて会社に提出しました。」
(引用元:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2185672)
ムンビョルさんは今作でも作詞家としての才能を余すことなく発揮している。イントロとタイトル曲以外の全曲に名前がクレジットされていて、歌詞のインスピレーションについては下記の様に回答している。
ムンビョル:「私の実話というよりは、様々なところから一つずつソースを持ってきました。普段ドラマをたくさん見る方なので、前のリパッケージアルバムの収録曲にはJTBC『夫婦の世界』のハン・ソヒさんの役柄の立場から書いた曲もありました。今回も色々な感情を考え、愛する感情、ケンカする感情、未練など、様々な感情に集中しました。これという参考にした作品があるというよりは、妹がドラマが大好きなので、会社から帰った後、ドラマを見る妹と一緒に自然に見るようになりました。」
(引用元:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2185672)
実妹と一緒にドラマ見ながらキャラクターに頑張って感情移入をしてリリックを書いているアイドルがこの世に存在するという事実はもっと世の中に広まってほしい。可愛すギルティ。ちなみにThe Korea Timesの英文インタビューによると、ファンの間ではお馴染みの「デビュー前に付き合っていた」殿方からインスパイアされた歌詞もあると認めている。
アーティスト本人とその創作物が100%リンクしている訳ではないのは百も承知だ。しかし、所詮は下衆いファンなので「おっしゃ!推しの恋愛観分かっちゃうんじゃん!!」とこの記事を読んだ時に小さくガッツポーズしてしまった。
G999
戯言はこの辺にしておき、先行リリース曲の一発目として披露されたトラック2の『G999(feat. Mirani)』の推しポイントから語っていきたい。
アルバムタイトル同様『G999』もタイトルに言葉遊びと曲のメッセージが込められている。「地球という惑星の上でお互いが全てであるように感じられる神秘的な気分」を歌った曲で、韓国語での地球の発音が「ジクゥ」のため、タイトルも同じ発音の「G9」が入っている。
コラボしているMiraniさんは韓国のラッパーサバ番「SHOW ME THE MONEY(通称ショミド)」のシーズン9で活躍し一躍有名になった女性ラッパーだ。ムンビョルさんの冠ラジオ番組にゲスト出演した際にライブで歌声を披露した際に、「この人とこういうことしたら面白そう」と思ったムンビョルさんがコラボを持ちかけた。
結果、見事にシナジーが大爆発している。ラジオ番組を進行しながら同時に次のコラボ相手も見定める。プロデューサーとしての目も備えている天才としか形容できない。
『G999』はトレンドのニュートロを取り入れた曲調で90年代バイブスが漂っている時点で優勝案件だが、個人的に最大の推しポイントは2:17~2:25からムンビョルさんとMiraniさんが交互にバースを歌う部分だ。
韓国の女性アイドルラッパーの代表格と新進気鋭の女性ラッパーが交互に歌うラップは文化遺産に認定されていいと思う。また、歌詞にも注目していただきたい。
2:17~
ムンビョル
지금 내 기분은 1이 빠진 99
今の私の気持ちは1足りない99
ミラニ
네가 채워줄래 어서 빨리 59
君が埋めてくれる?早く来て
※5(お)9(く) 오구で「来て」という意味。
ムンビョル
둘만의 지구로 바꿔봐 지금
今すぐ2人だけの地球に変えてみて
ミラニ
날아가 버려 It feel so good good
飛んで行こう いい感じ
ムンビョル
너는 um.. 마치 우주와 같지
君はまるで宇宙みたい
和訳歌詞引用:かるなびCloud
https://katakanakpop.hatenablog.jp/entry/20211213/1639392620
もうfall in love真っ只中の二人じゃんね。そして、歌詞の人称代名詞に着目すると「君」という言葉が使われていて、ジェンダーニュートラルになっている。「それが何やねん」と思う方もいるかもしれないが、ムンビョルさんは徹底してジェンダーが特定できないように、つまりは解釈の余地をリスナーに与えるという革新的なことを継続してやってきているのだ。私が勝手に推量しているのではなく、ムンビョルさんは今回もこの旨をインタビューで明言している。
ムンビョル:自分は結構中性的だと思っているので、今まで女性的でも男性的でもないような楽曲をリリースするようにしてきました。音楽を通じて、二元的なジェンダー観に挑戦できる人間になりたいです。
引用元:https://m.koreatimes.co.kr/pages/article.asp?newsIdx=322490
さあ、次に紹介するのはトラック3の『Shutdown(머리에서 발끝까지)』だ。日本語訳は、「頭からつま先まで」。TXTとのコラボでも話題になった歌手のSeori(ソリ)さんをフューチャリングで迎えており、Miraniさん同様ゲストでラジオに出演してくれたソリさんをムンビョルさんが口説いたことで夢のコラボが実現した。
実は、この曲のティザーが公開されるや否やムムに震撼が走った。考察大合戦が繰り広げられるきっかけとなった実際の動画がこちらだ。
ドメスティックな空間に、ムンビョルさんとソリさんが二人っきり。でも、ムンビョルさんはスマホばっかりいじっていて、ソリさんと目を合わせない。私は考察できるほど鋭い観察眼や思考を持ち合わせていないので、初見では「スマホばっかり見て構ってくれないムンビョルさんにおこソリさんの図」とそのまんまで捉えた。
ところが、名探偵コナン君みたいな考察班がムムにはわんさかいるので、「フラッシュバックを仄めかすエフェクトがかかっている。これはムンビョルの過去の記憶だ。つまり、もうソリさんはこの世にいない...!」みたいな死後説が有力候補として上がってきたのだ。なるほどそういう解釈もあるかも、と思いつつ私はソリさんは構ってちゃん♡説を信じてリリース日まで48時間くらいを過ごした。
2021年大晦日に満を辞して世に放たれた傑作MVがこちら。
一言でまとめると、エロい。最っ高゛。しかもR&Bときた。最初の一音から最後の一音まで何もかもがカンペキなので全部推しポイントというのが本音だ。ソリさんの魅力しかないハスキーボイスで歌われるサビは一度聴いたら中毒になること間違いなし。ムンビョルさんも美しい高音を披露していると思ったら突然1:32〜から低音でスーパーラップタイムを始めるから恋が加速してしまう。
折角なのでラップ部分からサビにかけての歌詞を知った上でMVをご覧いただきたい。この曲は暗喩だらけの歌詞も魅力だと思うので理解した方が120%楽しめるはずだ。ちなみにこの曲の作詞にもムンビョルさんの名前がクレジットされている。
1:32~
ムンビョル
저 산을 지나 다리 건너
あの山を通り過ぎて 橋を渡って
그림 같은 집을 짓고
絵画のような家を建てて
Dali, Van, Picasso처럼 너를 그릴게
ダリ、 ゴッホ、ピカソのように君を描く
한편의 명작 하나의 실루엣
ひとつの名作 ひとつのシルエット
우리의 그림은 익어가 빨갛게
私たちの絵は熟していく 赤く
1:45~
ソリ
She said
ムンビョル
나를 망쳐 놔도 돼요
私をめちゃくちゃにしたっていい
ソリ
She said
ムンビョル
오늘 밤은 um-a
今夜は um-a
ソリ
네 머리에서 발끝까지
君の頭からつま先まで
네 머리에서 발끝까지
君の頭からつま先まで
내 허리를 잡고 거기까지
私の腰を掴んであそこまで
Touch down Touch down
네 머리에서 발끝까지
君の頭からつま先まで
네 머리에서 발끝까지
君の頭からつま先まで
네 무릎에서 아침까지
君の膝から朝まで
Shutdown Shutdown
エロすぎてこちらの脳がシャットダウンしてしまう。『G999』が出会ったばかりでお互いに夢中になる様を描いているのだとしら、『Shutdown』はもっと先に進んだ二人の関係性を表現しているのだろう。
死後説はどうやら違ったみたいで、実際にその場にいなくてもあたかも相手がいるかのように錯覚するくらい深くのめり込んでいる様子を描いているらしい。めでたしめでたし。
珍しくはっきりと代名詞が"She"となっており、リリース直後は女性同士の愛を歌っているのではないかという話題になった。実際にこちらの記事では「특히 문별은 직접 작사에 참여해 여성 간 사랑을 섬세하게 그려냈다. (特にムンビョルは直接作詞に参加して女性間の愛を繊細に描き出しました)」と書かれていたため、女女ソングで間違いないと私も認識した。
しかし、もっと後に発表された記事では直接「女性同士の愛を歌った曲なのか」とムンビョルさんに質問しており、下記のように回答している。
ムンビョル:「アルバム全体で愛を表現したいと思ったので、人に会ったらそんな愛もできるのではないかと思いました。相手が女性でも男性でもそんなことは重要ではありませんでした。正直、性別を指すことは好きではないので、すべての人に全部同じ立場で聴けるようにしたかったんです。そんな面でとても幸せな作業でした。」
引用元:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2185672
つまり、ムンビョルさんのスタンスは一貫して表現しているのはジェンダーニュートラルなものという訳だ。この回答を見てから安易に白黒はっきりさせたがる自分の浅薄さを反省したが、自分の中の解釈としてはやはり『Shutdown』は最高の女女ソングだと思う。
LUNATIC
いよいよタイトル曲!『LUNATIC』はしっとりR&Bソングの後に来るアップテンポなダンスナンバーで、振り付けは韓国で韓国で去年社会現象にもなった女性ダンサーサバイバル番組、『STREET WOMAN FIGHTER』(通称『スウパ』)で超売れっ子となったダンサーのAIKIさんが担当している。
ムンビョルさんは初めて曲のデモを聴いた時にAIKIさんに振り付けを担当してもらいたいと思ったそうだが、なんと事務所側はその時点ですでにAIKIさんに依頼済みだったそうだ。『LUNATIC』の推しポイントは赤髪が似合いすぎるムンビョルさんの華麗なフットワークが楽しめるサビ部分だと思うので是非こちらもMVを鑑賞いただきたい。
『LUNATIC』のテーマについては、「執着」を表現したかったと説明している。
ムンビョル:「愛しすぎると人間は執着するようになります。そのような執着より普遍的なのは倦怠期ではないかと思いました。歌詞の内容は軽く、わかりやすいです。自己中心的な話者の気持ちを見せたいと思いました。自己中心的な女性、“あなたが私のことが好きなら、私に合わせて”という話を表現したかったんです。」
引用元:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2185672
ダンス以外にも『LUNATIC』はムンビョルさんの地声に近いキーからラップまで楽しめる魅力てんこ盛りの曲だと思う。また、曲のクライマックス部分で「어쩌겠어?(どうすればいい?)」と伸びやかに歌うムンビョルさんの歌唱力に圧倒される。不本意ながらラッパーとしてキャリアをスタートさせたが、立派にソロ歌手としての地位も確立したムンビョルさんの努力を思うとオタクの目頭は熱くなる。是非ボーカリストムンビョルさんの余裕と実力が感じられる生演奏付きの映像もご堪能あれ。
ちなみにソラさんは、「前回の曲(Eclipse)がコンセプチュアルで重みがあったとしたら、今回はあなたそのものを探し出したみたい」とベタ褒めしており、それに対してムンビョルさんは「どんな賞賛の言葉よりも、メンバーたちから賞賛の言葉を聞くと一番やりがいを感じる」と回答している。メンバー同士の愛が垣間見えてオタクの涙腺は決壊するのである。
Ddu Ddu Ddu
もうこの時点でお腹いっぱいだと思うが、最後にどうしてもトラック6の『내가 뭘 어쩌겠니? (ddu ddu ddu)』をご紹介したい。「내가 뭘 어쩌겠니?」は、直訳すると「私はどうすればいい?」だ。
この曲は作曲にも携わったみたいで、才能が止まるところを知らないムンビョルさんにもはや嫉妬を覚える。別れた後の未練を歌った曲で情緒たっぷりにムンビョルさんが「Baby don't cry for me」と歌う度に胸が抉られる。
ムンビョル:「私は未練についての曲が結構好きです。『Ddu ddu ddu 』の場合は、別れた後に人がよく抱く感情に焦点を合わせています。ほとんどの人が別れたことを後悔するけど、それでも時間を戻してもう一度やり直すことはしないという選択をします。」
引用元:https://m.koreatimes.co.kr/pages/article.asp?newsIdx=322490
個人的最大の推しポイントは2:57~からのバックコーラスでムンビョルさんがパワー声量を発揮している部分だ。
理由はそれだけではない。豪華なゲストを招いた曲やタイトル曲ではないサブトラックであるにも関わらずオタクをどこまでも甘やかしたいムンビョルさんは『내가 뭘 어쩌겠니? (ddu ddu ddu)』のMVも用意しちゃっているのだ。
夜の誰もいない街道にポツンと一台のアメ車、電話ボックス、一本のマイクスタンド。そして、2:57~から「夢か?」という展開が広がっているので是非歌詞と一緒に楽しんでいただきたい。
2:57~
내가 뭘 어쩌겠니?
私はどうすればいい?
사랑이 그런 거지
愛はそういうもの
마음이 마음을 버린다는 게
心が心を捨てるというのは
다 이렇니?
みんなこういうもの?
Baby Don't Cry For Me
내게 잊으라고 말하지 마
私に「忘れて」なんて言わないで
이별이 그래
別れはそう
다 그런 거니까
みんなそういうもの
비가 올 때면 ddu ddu ddu ddu ddu
雨が降ったら ddu ddu ddu ddu ddu
전화벨은 ddu ddu ddu
着信音は ddu ddu ddu
最後に
出会いから別れまでの感情の揺れ幅を音楽と映像で見事に表現したムンビョルさんの3rdミニアルバムの『6equence』、いかがでしたでしょうか。今回こそは簡潔に紹介していくぞと思っていたのに、結局8000字超えてしまった。ミアネヨ...。
まだ足りない!もっと供給を!という貪欲なあなたには朗報がある。トラック1でイントロの役割を果たしている『Intro: SYNOPSIS』のダンス動画がつい最近公開された。白い衣装×ブロンドでいつにも増して二次元感が強いダンサームンビョルさん、見て絶対に後悔しないはず!もうここまで来たらトラック5のバラードが美しい『너만 들었으면 좋겠다 (For Me)』も視聴して、完全コンプリートしていってください。
記事を作成するために、アルバムを最初から最後まで何回も聴いたので、大恋愛をした気分になっている。それでも全然飽きないし、むしろ新たな魅力を再発見できた。ムンビョルという罠にかかったが最後、抜け出せないし抜け出す気もない。
参考記事:
1. https://realsound.jp/2022/01/post-943360.html
2. https://entertain.naver.com/now/read?oid=144&aid=0000787905
3. https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2186990
4. https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2185672
5. https://sports.khan.co.kr/entertainment/sk_index.html?art_id=202201190722003&sec_id=540301&pt=nv
6. https://m.koreatimes.co.kr/pages/article.asp?newsIdx=322490
7. https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2182811