夢の推しは現実でも夢だった② 〜コンサートお昼の部編〜
非常にスムーズな”前のめり”だった。余裕を以って、コンサートD-DAYの一日前に今回の旅のお供であるリアルチングの檸檬ちゃん(生粋のシズ二でムムではない)と私はまずは京都入りした。ブライアン・イーノを堪能した後に鴨川を散歩し、夜は大阪の本場仕込みのお好み焼きで締めるという完璧な京阪満喫コースだった。
コンサート会場近くの新築ホテルは非常に快適で、テレビとスマホを簡単に繋げるという実にオタクに優しい仕様だったので、隣同士の部屋を取った私たちは各々推しの映像を見て想いを募らせていた。
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コンサート開始一時間前に会場に着くようにホテルを出る。暑い。溶けそうだった。「推しのコンサートを見る」という目的がなければその場で回れ右するような気温だった。湿気大国ジャパンの洗礼を感じながらも、足取りは軽かった。立派な大阪城を横目に、駆け足で会場に向かった。
会場に入るとすでに長蛇の列ができていて、何事かとびっくりした。しかし、まずはフォロワーさんにムンビョルのキノアルバムを配布するというミッションがあったので約束した会場内の場所に向かった。
授賞式以外でのママムのイベントで日本に参加するのは初めてで、フォロワーさんにお会いするというのも初めてだったので口から心臓が出るんじゃないか心配だった。極度の人見知りなので、挙動不審にならないか気が気じゃなかった。
しかし、そんな心配は他所に出会ったムムさんはみんな天使だった。お菓子や素敵なソンムルまでいただいた上に、「初めてフォローしたのがりおさんです」というお言葉までいただき、嬉しさで目ん玉飛び出るかと思った。
正直ツイッターはあまり見られているという気がしない(が故に好き勝手叫んでいる)のだが、本当に見てくれてる人がいるんだと実感が湧いてきて、嬉しさと恥ずかしさでやっぱり一個くらいは内臓が飛び出た気がする。
無事にお昼の部のキノアルバム配布を終了し、私も列にジョインする。この場にいる人全員がムンビョルさんないしママムが好きで集まってきたんだと思うと、それは奇跡以外の何物でもなかった。
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NHKホール内に入場し、スローガンを受け取ってから座席に着席する。本当にムンビョルさんのコンサートが間もなく始まるんだと脳がようやく理解し始め、安堵で思わず笑顔になる。しかし、もう間も無く開演というこのタイミングで予想外の懸案事項が発生する。隣で観覧する予定の檸檬ちゃんが現れない…!
深紅のシートが印象的な立派すぎる大阪のNHKホールに電波はオプソだった。外の世界と遮断されるのは寧ろホール内ではありがたいが、電波がないため連絡が取れず、もしかして檸檬ちゃん道に迷ってるのかなと不安で大爆発しそうな時だった。紫モリが似合う檸檬ちゃんはこちらに急ぎ足でやってきた。良かった〜!
「チケット、ホテルに忘れちゃって一回戻ってた。危なかった〜」と檸檬ちゃんが言い、聞いてるだけでも全身から冷や汗が噴き出るのが分かった。何のためにあれだけ早くから”前のめり”したのか分からないくらいギリギリで焦ったが、それも今では良い思い出である。
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幕が上がる。
一曲目は『Intro: Synopsis』だ。会場にムンビョルとダンサーが登場した瞬間、自然と拍手が湧き上がる。漆黒の髪に、デニム生地のジャケットを羽織って颯爽と踊る、眩しすぎるステージの照明に照らされたムンビョルは何もかもが完璧で、気づいた時にはもう涙で前を見るのが困難だった。
前日、「私はコンサートでは意外と泣かないタイプの人間なんよ」と自信満々に檸檬ちゃんに話していたのに、人間の目からこんなに短時間で塩分出るのかってくらい泣いた。パッと横見たらなぜか檸檬ちゃんもウルウルしてて、何でやねんって余計に涙が止まらなかった。
『Intro: Synopsis』は文字通り3rdミニアルバム『Sequence』の導入の役割を果たしているので、アルバムに収録されているバージョンは1:39と短い。しかし、コンサートで披露されたのはこちらのロングバージョンで、1:31~からバイオリンの旋律が始まり、ムンビョルがダンサーたちを操るような振り付けを披露する。静かなホールに響き渡るバイオリンとキレッキレなムンビョルには神々しさすら感じ、信者はやっぱり黙って泣くしかできなかった。
一曲目が終わり、ムンビョルとダンサーに私と檸檬ちゃんは爆竹拍手を送った。完璧な幕開けの余韻に浸る間も無く、次の曲のイントロ一音で私の死が確定する。『ILJIDO』だった。(良かったらこの記事も読んでね)
何回聴いたか分からない、何度私を救ってくれたか分からない、最も生で聴くことを切望していた大好きな一曲だった。この曲の魅力は(全部だが)何といっても、サビの「배부른 고민일지도 (お腹がいっぱいになる悩みなのかも)」の部分で空腹を表すかのようににお腹をさする超絶キュートな振り付けだと思うが、それが生で見れたのでもう我が生涯一片の悔いなし。
そして、ライブだからこそ「감정의 역치가 자라나 감흥이 없지 (感情の閾値が育って好奇心もないでしょ) / 멈출 수가 없는 사치 가끔은 떨리네 다리가 (止められない贅沢 ときどき足が震える)」の部分を高音のハモリパートではなく、(多分)音源より更に低めに歌っていたのを聴けたので、その場で一回蒸発した。
ただ、少し悔いていることがあるとすれば、堰を切ったかのように止めどなく溢れ続ける涙のせいで後半のムンビョルがほとんど霞んでしまったことだ。夜の部は泣かないでこの姿を目に焼き付けようと誓った。
記憶が正しければ、この次は挨拶とフォトタイムだ。「今日のために遠くから足を運んできてくれてありがとう」という旨の挨拶をしていたが、「いや遠くから来てくれたのはあなたの方ですやん、ありがとう」と、一向に涙が乾かない。
日本公演は海外公演と違って撮影は禁止されているけど、中々会えなかった日本ムムのために今回特別にフォトタイムを設けてくれたのだろうかと想像を馳せて、どこまでも優しい推しを心で抱きしめた。
三曲目、畳みかけるかのようにやってくる『MOON MOVIE』。曲が始まった時に(確か)「Yeah yeah〜」って言ってる爆イケムンビョルさんが存在した。
立ちたい。立って一緒に踊り狂って、サビの「MOVIE〜!」の後に「SHOOT!」って限界かけ声をやりたかった。が、生憎自分の周りも前のブロックも全員綺麗に着席していたので、全力でムボンを振り回して「楽しませていただいてるぜ!」の意思表示を試みた。
あのベルベットサテンを纏ったムンビョルの18禁映像クリップが流れたあとは、ステージ右横にベンチが用意されていた(はず)。まさかの2曲続けてのバラードで、『Love & Hate (구차해)』と『For Me』というこれまた涙腺が弱いオタクにトドメを刺しにくるような選曲だった。
デニムのジャケットはどこかに消えていて、マイケルジャクソンのビリージーンみたいにキラキラしたスパンコール入り?の衣装を纏っているムンビョルさんが物理的にも心象的にも眩しかった。
名曲バラードを披露したあとは、お待ちかねのトークタイムだった。コンサートの数日前にママムJAPAN公式から「愛」に関するお便りを募集してい他ので、どんな話が聞けるか楽しみにしていた。
どうやらムンビョルは自然なリアクションをしたいからという理由でリハーサルでも事前に選ばれたお便りの内容を把握していないらしかった。ますます期待が高まる。一つ目に選ばれたお便りの内容は、恋愛相談だった。かなりうろ覚えにはなるが、「友達だと思っていた人を好きになっちゃったので告白したが返事がまだきていない、どうすればいいですか?」という趣旨だった。
ムンビョルはこれに対して、「私だったら友情を続けたい場合は告白はしない。でもすでに勇気を出して告白したんですよね?だったら少し待ってあげるといいと思います」という様なアドバイスを送っていた。相談者の告白した勇気は褒めてあげて、かつ相手を尊重する様に促す。完璧か。
以前、ラジオ番組で似たような相談を受けていてその時もムンビョルは「自分は友情を優先するので告白はしない」という回答をしていた。一貫性のある推しがますます好きになった瞬間だった。最後に、「痛みが伴うのも愛ですよね」は韓国語で話していたが「これ以上、どうすればいいでしょう?」は、確かに日本語で言っていた。その破壊力たるや。私は再び蒸発した。
次の『ddu ddu ddu』では開いた傘を持ちながら歌っていて可愛さで倒れるかと思った。後半のサビ前にムンビョルの長く美しい高音がホールに響き渡って、その後に切なげに「Baby don't cry for me」って歌うからせっかく恋愛相談室のおかげで泣き止んできたのにまた滂沱の涙を流していた。惜しみない拍手を送った。ライブだったけど、雰囲気的に「ブラボー!」って叫びたかった。
次に流れたクリップ映像では、映画監督に扮したムンビョルがホールに入ってきてお辞儀をするシーンがあるのだが、それが今私がいるNHKホールと見事にリンクしていて、鳥肌が立った。
今度は青いスカジャンを羽織ってムンビョルがステージに降臨した。そんな格好良い衣装で何を歌うんだいと思っていたら、それに相応しい隠れた名曲こと『Chemistry』だった。
かなり好きな曲で韓国でのコンサートでも披露していたのに、なぜかこのタイミングで来るとは思わなくてとにかく「最高!ありがとう」と合掌していたらあっという間に終わってしまった。
どうして人間の記憶とはこんなに儚いのか。自分の目がカメラで脳がドライブレコーダーであって欲しいとは願わずにはいられなかった。
間髪入れずに始まる『Lunatic』。そう、人を狂わすあの最高に盛り上がる『Lunatic』。場内からは自然と手拍子が始まり、私も思いっきり掌をバンバン叩いてノリに乗りまくった。音楽番組での映像も何回も見たし音源も繰り返し聴いてきた。
そんな曲が今、目の前で披露されているという事実がとにかく嬉しくて、華麗なムンビョルとダンサーの後ろでデカデカと映し出される謎のカプセル錠剤の映像なんて微塵も気にならなかった。と言うと嘘になる。あの映像は一体何だったんだろう。
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『Lunatic』でコンサートの前半が終了した。もうトークコーナーはないだろうなと思っていた矢先のことだった。舞台に可愛いソファやランプやら三脚カメラが用意されていて、何が始まるのかなと期待で胸が踊った。フカフカに見えるソファに腰を下ろしてニコッと笑った時のムンビョルが可愛くって私の細胞はいくつか爆発したと思う。
どうやら監督兼役者兼プロデューサー兼カメラマンのムンビョルがヤバめの上司と可哀想な新人という設定でその場で寸劇を始めるらしかった。目はムンビョルを見つめながらも手元に用意したメモに必死に会話劇を殴り書きしてきたので、その内容をシェアしたい。
慣れない外国語で寸劇をしかも一人でやるなんて大変でしかないのに、ムムを笑わせるために準備してくれたのが伝わってきて、愛おしさMAXだった。特に「スミマセェン…」が消え入りそうな声で、誰かあの可愛い子を保護してくださいと願わずにはいられなかった。
愉快な寸劇で爆笑したあとに待っていたのは「恋」だった。日本語で寸劇をかました後にムンビョルが用意していたのは、クリスタル・ケイの「恋に落ちたら」だった。平成の女は衝撃で身動きが取れなくなった。
一番のサビで「I love you」と歌われた後に配布されたスローガンを掲げなくてはいけなかったが、ムンビョルが懐メロで我々を平成に飛ばしたもんだから、時空の歪みででちょっと掲げるのが遅れたかもしれない。
しかも恐ろしいことに間奏でこのスーパーアイドルは「皆さんに恋に落ちました、愛してる〜」とか言っちゃうのだ。HPはすでに瀕死状態だと言うのに。お願いもう手加減して…!
見事に歌いきり、会場全員がムンビョルに恋に落ちたところで、「この曲は一番上手に歌いたかった」と言う旨の発言をしていて、「あ、一生推す」と誓った。
ラスト(と見せかけて実は全然ラストじゃないけど)フィナーレは『C.I.T.T』だった。コンサート終盤になっても表情管理がすごくて、歌って踊りながら笑顔になったり、ハムちゃんみたいになったりコロコロと表情が変わっていることに気づき、やっぱりムンビョルっていうアイドルはどえらいなと思った。
この曲が終わった後にアンコールに向けての拍手が起こった。最初は各々のリズムで手拍子が行われていたけど、ある瞬間からビシッと音が重なり、全員の拍手が揃った時は甚く感動したので、ステージ裏のムンビョルとダンサーにも届いていたらいいなと思った。
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映像が流れたあとは、『Selfish』。これもライブで聴きたかった曲の一つだったので僥倖だった。私が幻覚を見ていない限り、ここからは今回のライブTである黒の半袖シャツにジーンズの短パンという一歩間違えれば夏休みの少年みたいな格好だった。独断と偏見に基づくが、『Selfish』は振り付けが一番可愛いと思う。「fish fish~」と歌いながら魚みたいに泳ぐポーズをするムンビョルは無形文化財として次の世代にもその次の世代にも引き継いでいきたい。
そして怒涛の『G999』と『Shutdown』が押し寄せてくる。
自分のことは自分がよく分かっている。実際にイントロ1秒で頭はパァン!した。会場のムムも一緒に頭パァン!したのは伝わってきた。みんな考えてることは一緒で心底安心した。「この曲が流れて、みんなすごく大きな拍手をしてくれましたね」とムンビョルも全てを察していた。頭がパァン!したせいで記憶がほぼないというのは本当に悲劇的なことだと思う。いくらでも課金するからあのセクシーモリエソが映像化される未来を私は信じたい。
最後の挨拶では、誇張なしで胸が痛くなった。ムンビョルが語った言葉はあまりにも真っ直ぐで、突き刺さってきた。
推しとオタクの関係は本当に不思議だと思う。側から見ると一見オタクの一方通行な応援行為に見えるかもしれないが、思っているより推し側もこちらに真摯な愛を持っていて、だからこそ離れていってしまったらどうしようという不安を抱えているものなのだ。
もちろん全員に当てはまることではないが、少なくともムンビョルは私たちファンに、ムムに対してとてつもなくでかい愛を以って接してくれているし、それ故にシェアしてくれた本音だったのだと思う。
こうやって日本のコンサートが成功したことで、きっと日本のムムはいつでも待ってると証明できたと思うし、何よりムンビョルがコンサートを心から楽しんでいたことが伝わってきたのでこんなに素敵なことはないと思う。ムンビョルのファンでいれて、私は幸せだ。本当にラストの曲、英語版『Lunatic』を聴きながら涙でぐちゃぐちゃになりながらそう思った。
(読んでくれてありがとう!まだまだレポ続きます)