「好き」と「得意」は違います。
好きと得意の違い。
好きなことを仕事にとか、得意なことを仕事にとか。要するに自分がポジティブな気持ちになれるものなら何でも…と思いきやそうではない。
「好き」と「得意」には明確な差があるんです。「好きだけど不得意」とか、「嫌いだけど得意」だということもいくらでもあるんです。気づかないだけで。
というわけで、分かりやすい私の実例をご紹介しましょう。
私の実例:競技ダンス
私は大学時代、競技ダンスというものをやっておりました。いわゆる学連に所属していました。知らないだと?ググれ。
細かいことは抜きにして、学生の競技ダンスは8種目に分けて競われるんですね。さらにその中でも4種目ずつに大別できます。2年生頃からはその4種目を専門に練習していきます。
私が専門とした4種目は、いわゆる社交ダンスでイメージされるような男女が組んだまま2人で動く系の種目ですね。ワルツ、タンゴ、スローフォックストロット、クイックステップの4種目があります。
名前は覚えなくていいですが、この4種目、性格的にはさらに2つに大別できます。
ワルツ・スローフォックストロット→優雅かつ波のように緩やかで美しくゆっくり動く系の種目。
タンゴ・クイックステップ→タンゴは情熱がこもったキレのある動き。パッと動いてパッと止まる。クイックステップは飛んだり跳ねたり走ったりと最もスピーディーで明るく軽快な種目。
要するに、繊細でなめらかな動きが求められるのが前者、キレやスピード感が求められるのが後者というわけですね。
で、好きと得意の話なんですけど。
私は前者が好きだったのに、得意になったのは後者でした。
まあこれは教える先生などの特色も出るんですが。私は3年生の前半ごろまでスローフォックストロットが得意だったのですが、4年で卒業するころにはタンゴ・クイックステップ(後者)しかできない人間みたいになっていました。
もともとなめらかで落ち着いた動きが売りの踊り方だったのですが、ワルツ・スローフォックストロットでは落ち着きすぎて全く目立たない踊りになってしまっていました。逆にタンゴ・クイックステップは動きが激しい分姿勢などが崩れやすいので、その中で落ち着いて動ける長所が逆に生きていたんです。
難しいですね。自分の性格と同じような人が集まる場所(種目)に行くと、ありふれた人として埋もれてしまう。自分の性格と異なる場所(種目)に行ったら、自分らしい場所だとは思えないけど結果的に個性が際立って評価される。
だからやってみないと正解がわからない。難しい。だから人は選択を間違える。
正直2年生のころは、タンゴ・クイックステップには憧れなかった。繊細さとなめらかさのある先輩のワルツ・スローフォックストロットに憧れていた。でも練習していくと、どんどんタンゴばかり成長していく自分に気づいた。クイックステップなんて練習してないのに他の種目よりクオリティ高い疑惑が出たり。
これで分かっただろ。
好きな種目が成長するとは限らないと。望まない得意種目が出来てしまったり。そのうち好きじゃなかった得意種目が好きになってきちゃったり。「得意」が先にあって、それが「好き」を誘発した例。
「好き」なだけでは「得意」を持ってくるのはなかなか難しいかも。でも「得意」は元からあるから、それに気づくと「好き」になっちゃうかも。逆に「好き」だったことでも、「得意」じゃないと気づいた時に嫌いになっていくこともあるかも。だから難しい。だから人は選択を間違える。進路を間違える。人生を間違える。
「得意」に気づくには
じゃあどうやったら得意なことというか、向いていることに気づけるのかと。
これは、案外他人の方がよく分かっていたり。
得意なことって、意識しなくてもできちゃいますからね、できていることに気づかないんです。才能に気づかないともいえるか。
例えば私は高校のころ、クラス紹介や部活紹介といった文章を何度か書いていて、先生等に好評価をもらったりしていた。父親は私がSEになった時、「新聞記者になるもんだと思っていた。文章を書くとかそういう仕事の方がいいんじゃないか」という趣旨のことを言っていた。
うるさい俺はITが「好き」だと思ったんだ、と言い返したいところだが、現実私はnoteに投稿している、多少なりとも文章執筆にポジティブな気持ちがあったからだろう。
他人がそういうからには多分「得意」なんだろうという気持ちだったかもしれない。
人に「得意」だと言われても、自分は意識していないからそうは思えない。でも、自分で意識している「得意」は大した得意ではないのかもしれない。
「私は気を利かせるのが得意です!いつも周りの人を観察するようにしてますから」
これは「得意」ではない。周りの人を意識して観察しないとできないからだ。
本当に「得意」な人は、
「私、すごい気が利くって言われるんですよね。何も考えずにボーっとしてるんですけど……」
といった感じになるのでは。考えなくてもできちゃってるから。
だから、「得意」に気づくには。
何も考えてないのになぜか褒められてしまうポイントを探す。
それがあなたの「得意」であり、才能であり、向いていることですね。
……この理論でいうと、就活で自己分析してアピールする長所は長所ではないかも?やっぱり、意識して「得意」にしようとしてる部分を探してしまいますからね。無意識かつ自然体で、素でできる「得意」に自己分析でたどり着くのはなかなか難しいよ。
だから人は選択を間違える。進路を間違える。そして自己PRを間違える。
たぶん、本物の「得意」に気づけている人は、難なく就活面接を突破していくのではないでしょうか。作って飾った自己PRでなく、無理してない体の芯からにじみ出る自己PRができますからね。
無理やり調味料ふっかけて作った味より、素材の味が染み込んだダシの味のほうが深くておいしい、といった所でしょうか。
ご清読ありがとうございました。