『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ』 刊行記念インタビュー|坂田ミギー
Q 新刊『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ』は、旅ブックスMAGAZINEでの連載「ひとりだから人生に効く ソロ旅のススメ」が基になっていますが、テーマとして“ソロ旅をおすすめすること”を選んだ理由を教えてください。
自分自身がソロ旅をして救われたり、いいことがたくさん起きたりしたからです。前作の『旅がなければ死んでいた』(2019年/KKベストセラーズ)を出して以降、一人で旅したいけど勇気が出ないとか、女性だからちょっと行きづらいということを言われる機会が多かったので、“そんなことないよ、簡単にできるよ”と伝えられたり、ヒントになったりする話ができればいいなと思って、連載のテーマに決めました。
Q 読者の方に伝えたいという想いがあるからか、坂田さんの文章は語りかけているような読みやすさ、親しみやすさを感じます。執筆の際に心がけていることはありますか。
あまり説教臭くならないようにしようっていうのは心掛けています。読者の方からメッセージをもらうことがあるのですが、自分より若い人が多いので、つい色々言いたくなっちゃうんですね。でも、自分が年配の人から何か言われるときは、「これはアドバイスというより説教だな」と思うことが多かったりもしたので、自分の書いた文章を読んで受け手がどういう風に思ってくれるか、余白が出るように意識して書いていました。
Q 書籍にチラシが挟み込まれている「かわいい我には旅をさせよ ごはんプロジェクト」* について伺っていきます。まずは、寄付先のキベラスラム・マゴソスクールとの出会いについて教えてください。
キベラスラムとの出会いは、30歳過ぎに出かけた世界一周の旅のときです。最初はキベラスラムに行く予定ではなくて、人類発祥の地といわれているケニア北西部のトゥルカナ湖に行く予定でした。古人類の骨や遺物が見つかっている場所で、そこを目的にケニアに来たのに、そこまでの道中の治安が非常に悪いと現地の人に止められて。ツアーもないし、自分で車をチャーターして行こうと思ったんですけど、車で走っていると強盗に襲われて、しっちゃかめっちゃかになるっていう話を聞いて、今は行かないほうがいいなと断念しました。
やることがなくなっちゃったのでナイロビの街に行こうと思ったら、その途中で偶然巨大スラムを見かけたんです。いろんな国でスラム街が都会のすぐそばにあるのは知っていましたが、そういえば行ったことがないなと。それから、キベラスラムの人たちがやっているツアーに参加したり、現地の人に案内してもらったりしているうちに、ナイロビ在住33年になる早川千晶さんという方に出会いました。キベラスラムのなかでも、特に生活環境が厳しい極度の貧困児童や孤児のための学校「マゴソスクール」を運営している方で、スクールの中も案内してもらったんです。そのうち、千晶さんがいないときでも遊びに行くようになり、友達がだんだん増えていきました。
*『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ』の感想・レビューを投稿1件につき、ケニアにあるアフリカ最大規模のスラム街キベラスラムの子どもたちへ給食10食分が寄付されるプロジェクト。
Q キベラスラムの人たちとの出会いから、ごはんプロジェクトへつながった経緯はどのようなものでしたか。
マゴソスクールのみんなもそうだし、キベラスラムでわたしの友達になってくれた人たちもそうなんですけど、みんな尊敬できる素敵な人だったので、彼らに関わり続けるためにできることが何かないかなと思ったことが始まりです。わたしが遊びに行って写真を撮るだけだとなんにもならないので、お互いにとって良いようになる仕組みはないかなと考えて支援プロジェクトをスタートしました。
今回は、読者のみなさまに本の感想を書いてもらうと、マゴソスクールに給食10食分が届く。わたしは感想が読めて嬉しいし、彼らも給食が届いて嬉しい。感想を書いてくれた人たちにとってはマゴソスクールとか、キベラスラムとかアフリカの子どもたちの状況を気にかけるきっかけにもなると思うので。あとは御社としてもちょっと本が売れるかもしれないですよね(笑)。かわいそうだから何か施しをせねばっていう気持ちではなくて、尊敬している相手だからこそ、何かお互いに支え合えることがあればと考えた結果ですね。
Q ごはんプロジェクトもそうですが、モバイルオフィスの実践、週末カフェ*、アパレルブランドなど、次々と新しいことに挑戦していますね。坂田さんの行動力はどこからきているのでしょうか。
根元には自分が飽きっぽいっていうのがあって、おんなじことをずっと続けることが苦手なタイプなんです。新しいことができるんだったらやってみたい気持ちがあって。だからこそ、声をかけてもらったときに、面白そうだからやってみようと思える。小川町でカフェを始めたときも、カフェやりたいねっていう話が出たタイミングで、カフェをやっている人を探しているっていうお話があったので、じゃあやりますかと。そんなに深く考えてなかったんだけど、やれるチャンスが来たからやってみようみたいな。来たボールをいったん受け止めるようにしていますね。
あとは、失敗してもいいやって思っているからかもしれないですね。アパレルやりますとか、カフェやりますっていう話をしたときに、失敗したらどうするのみたいなことを言う人もいますけど、別に失敗したら失敗したで良くない?っていう。お金がちょっと減るとかそのぐらいで済むと思うので。あんまり気にしてないのかもしれないですね。
*埼玉県小川町にある複合施設NESTo内にある、築100年の石蔵をリノベーションした週末だけ出現するカフェ「Brown Rice Café Weekends」
Q 分かっていても、失敗してもいいという勇気はなかなか持てないという人も多いと思いますが、その考え方も旅から影響を受けたことのひとつでしょうか。
そうですね、旅が影響していると思います。元々は、失敗しちゃいけないって思っているガチガチな融通がきかないタイプの性格だったんですけど、海外、例えばインドとかに行くと、自分が意固地になって大事にしていたものが別にここではどうでもいいみたいな場面が結構あって。
日本にいるとトレンドの服を着なきゃとか、こういう髪型がいま流行っているとか、こういうメイクはダサいとか、色々あるじゃないですか、情報が。そういうのに振り回されていたんですけど、インドに行くと布の面積がほぼなくなっているくらいボロボロの服を着て、汗だくでリキシャー(人力車)を漕いでくれるおじさんに出会うんです。それがめちゃくちゃかっこいいんですよ、すごく引き締まった体で。これをかっこいいって思うなら、流行りの服とかは本質と関係ないことだなって。価値観がそこで変わりましたね。
失敗してもいいって思うのは、それで失うものがお金ぐらいしかないから。生きるのに必要な分さえ持っていればいいというのは、キベラスラムや遊牧民の人から学んだことかもしれないですね。自分は、雨風をしのげる家に住んでいるし、ご飯も食べられるし、それで十分。何かをやって失敗するなら学びにもなるだろうし、それでいいかなと思ってます。
Q 新型コロナ感染症が流行って旅に行きづらいご時世になっていますが、ビフォーコロナとアフターコロナの旅の在り方や旅への気持ちに変化はありましたか。
病気になって初めて健康のありがたみがわかるのと一緒ですね。今まで思い立ったら週末だけでも旅に行ったりできていたのが、本当にどこにも行っちゃいけないってなると、旅って自分にとってすごく大事だったんだなと思いました。
仕事の面では、わたしがモバイルオフィスを始めたのはコロナの前で、その時はまだオンラインミーティングがあんまり受け入れてもらえませんでした。せっかく旅しながらモバイルオフィスで仕事しているのに、会社に来て打ち合わせしてくださいとか、東京のここまで来てくださいっていうのがすごく多くって、旅先から毎回「東京に戻んなきゃ」となっていたんですよ。でも、コロナの影響でリモートワークが受け入れられて、どこからでも仕事ができるようになったので、それはすごくありがたいなと。
旅への考え方も、以前は仕事があるから短期で行って帰ってくることが多かったのですが、コロナ以降は別の場所にいながら、そこから仕事もできるようになったので、1週間や2週間くらいの滞在型の旅ができるようになりました。それはいい影響だったのかなって思っています。だから、旅と仕事の面ではコロナも悪いことばかりじゃなくて、5年後10年後の世界では、ビフォーコロナより良くなっていることもあるんじゃないかなっていう気もします。
Q 最後に、これから書籍を手にとってくださる読者の皆様にメッセージをお願いします!
なかなか海外への旅は難しい時期が続いていますが、いつでも心は自由に旅ができると思うので、ぜひ本を読んでいただいて、一緒に旅をするように読書の旅を楽しんでもらえたらなと思います。
坂田ミギーさんの新刊『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ』は
2月16日(水)発売です。
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