第5橋 橋のもつ雰囲気がどことなく東欧っぽい 旭橋と幣舞橋 前編・旭橋 (北海道旭川市)|吉田友和「橋に恋して♡ニッポンめぐり旅」
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橋のもつ雰囲気がどことなく東欧っぽい
前回が沖縄だったが、今回はドーンと一気に北海道へ飛ぶ。南の島から北の大地へ。暢気な観光客的には、どちらも異国情緒が味わえて捨てがたい。
北海道の橋といえば、すぐに思いつくのは二つの橋だ。「旭橋」と「弊舞橋」である。補足しておくと旭橋は旭川、弊舞橋は釧路にある。弊舞橋は「ぬさまいばし」と読む。
さて、どちらを取り上げようかと悩んだが、どちらか一方に絞りきれなかったので、欲ばって前後編に分けて両方紹介することにした。まずは、旭橋から。
ちなみに、二つの橋は「北海道三大名橋」にも数えられる。残りのひとつは札幌の「豊平橋」だが、そちらは渡った記憶がない(市内中心部に近いから、タクシーやレンタカーで知らないうちに通っている可能性はあるが)。
三大名橋のうち、選定当時の橋の形を残しているのは旭橋だけだ。この地に初めて橋が架けられたのが明治25年。その後、4回架け替えられ、現在の姿になったのが昭和7年。
市の南北を結ぶ重要な交通路にあり、かつては市内電車も橋の上を走っていたという。そういえば、車が通れる橋を紹介するのも本連載では初めてかもしれない。観光地化した橋ではなく、街の風景に溶け込んだインフラとしての橋。
とはいえ、旭川を代表するランドマークであることは間違いない。市内で土産物屋に立ち寄ると、この旭橋をモチーフにした土産物が目につく。Tシャツやトートバッグの絵柄に採用されていたりして、見るからに「旭橋推し」なのだ。
考え方によっては、土産物に採用されやすい造形をしているようにも思える。綺麗に湾曲したアーチ状の鉄橋は、そのシルエットがとても絵になるからだ。造形美、とでも言えば良いだろうか。
この目にした第一印象は、「なんだかヨーロッパの橋みたいだなぁ」というものだった。それも、東欧の古い街の歴史地区なんかに架けられていそうな橋に近い。ブダペストの鎖橋を渡ったときの記憶が脳裏によぎった。外観は全然違うのだけれど、なんというか橋の雰囲気が似通って見えたのだ。
周囲の風景も東欧の古都とは別モノである。橋が架けられている石狩川の遠く上流方向には、大雪山系の山並みが望める。街中とはいえ視界が開け、空間に余裕を感じさせる、北海道らしいダイナミックな風景だ。
石狩川の名前の由来はアイヌ語でイシカラ(isikar)といって、「非常に曲がりくねった川という意味」が語源なのだと橋の袂に説明書きが出ていた。字を判読できないほど朽ちすぎた現地の案内板には、橋の全長が225.43メートル、橋幅が18.3メートルと記載もあったのでついでに書いておく。
旭川には石狩川を筆頭に、大小130もの川が流れている。橋も多く、その総数は750を越えるという。「川と橋のまち」などと呼ばれているほどで、橋好きにはたまらない街といえそうだ。
橋の全貌を写真に納めようと、川沿いの小道を歩いていると、犬を散歩させている人や、ランニングをしている人とすれ違った。市民にとってはありふれた日常の中で見慣れた、親しみ深い存在なのだろう。一方で、遠方から訪れた旅人にも強い旅情を感じさせる。そういう橋は案外貴重だ
いつものようにじっくり時間をかけて橋を歩いて往復した後は、毎度のごとくご当地グルメを探索する。といっても、旭川なら狙いはもう定まっている。ラーメンである。
旭川ラーメンの特徴は中細のちぢれ麺に、醤油系のスープ。札幌だと味噌ラーメン、函館は塩ラーメンなので、この点は上手く差別化されているなぁといつも思う。旭川に限らず、北海道のラーメン店では、熱を逃さないために表面がラードで覆われていたりする。寒冷地ならではの工夫である。
お目当ての店が、行ってみたらあいにく休業だったので、今回は近くにあった山頭火へ。東京にもある有名チェーンだが、旭川の本店で食べるとより美味しい気がした。それはまあ、「本店マジック」なのかもしれないけれど。
(後編へつづく)
次回 第5橋 旭橋と幣舞橋 後編・幣舞橋は2022年6月13日(月)の公開を予定しています。
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