ただ明るい街並や賑やかな通りよりも、どこかに影の世界とつながる扉が隠れているような、なにが飛び出してくるのかわからない気配の薄暗い通路を歩きたくなるときはありませんか。
私は港町神戸に立ち寄る機会があると、「三宮高架商店街」と「元町高架通商店街」に決まって足を運びます。JRの鉄道高架の下に延々と続く、ウナギの寝床とハモの寝床を交互に継ぎ足したような、狭く長い通路から成る商店街です。
地元の神戸っ子にはまとめて「高架下」と呼ばれるこれら二つの商店街は、「いくたロード」や「トアロード」といった大通りと直角に交差する箇所以外、日光が差しこむ場所はほとんどありません。すべてが線路の下の世界ですので、幅二メートルほどの通路の両側に連なる店の大半は、昼も夜も電灯の丸い明かりのなかにあります。
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2023年5月23日(火)発売
『寂しさから290円儲ける方法』ドリアン助川/著